幼馴染と一緒にお風呂に入ることになりそうな件
風呂場に僕と香恋はきた。我が家の風呂場なんて二人入ると狭いから、香恋と身体が触れそうだ。
「シャワー出そうとして見て」
僕は香恋に言われるまま、シャワーのレバーを回そうとしたが、
「おりゃああああ!」
回んないぞ。これで直ったって、香恋どんだけ力強いんだ一体。
「ちょっとどいて」
僕がいくらやっても回らないのをみて香恋が言った。
「おお、これ固くない?」
「こうしてほいほいほい」
きゅっ。じゃー。
あれ、あっさり出た。
僕と香恋の足元に水が広がる。
きゅっ。
香恋がレバーを戻すと、水が止まった。
「ちゃぷちゃぷしてるね」
香恋が笑った。香恋、たまに幼稚になるんだよな。まあ色々分解してる時も幼稚だが。
「いや、どうやってそんな簡単に回せるんだ?」
「ここをみて」
レバーの裏側を香恋が示す。僕はしゃがんで見てみる。
「ん?……これはなんだ? 数字が並んでて……」
「ダイヤル。四桁だよ」
「……まさか。香恋、いたずらしただろ」
「てへてへぺろっぺろ」
しゃがんでいる僕を見下ろして小さく舌を出した香恋。
今までも変な改造をして僕を驚かせたことはあった。
だけど今回は驚いたというか……この先のことが予測できてしまってやばいなこれはって感じだ。
「これ、パスワード入れないと出ないのかまさか」
「そう。さすが私の改造に対する理解が深い光だね!」
「……パスワードを教えて欲しいんだが」
香恋のせいでめんどくさい仕様のシャワーになってしまったが仕方ない。パスワードを聞いて普通に使うことにしよう。
そう思っていたのに。
「教えないよ」
「は?」
「だからお風呂入るときは、幼馴染の私を呼んでね。一緒に入るよ」
「はあ? おいおいおい! 香恋と風呂はない! ていうか……まじかよ。なんでこんなことになったんだよ!」
前に香恋と風呂に入ったのは、おそらく互いにちびっこの時。
その遠く昔の懐かしいイベントが、高校生になって、香恋のシャワー改造のせいで、再来しようとしていた。