課題をやらないと
昼休みの終わり頃。昼練を終えた僕は塚本と話しながら教室に向かっていた。
「勝てるといいな。今週末は」
「だな」
「ていうか勝たないとまずいな、色々」
「それな」
僕たちが臨むテニスの団体戦は、シングル三試合、ダブルス二試合を行なって、勝利数が多い方が勝ちというルールだ。
つまり、例えば僕と塚本のペア以外で二勝二敗となった時には、僕たちの勝敗によって、チームの勝敗が決まることになる。
だから結構怖い。そもそも勝ちたいという気持ちは持ってるつもりだけど、足を引っ張ってしまうのも怖いのだ。
五時間目は自習だった。自習と言っても課題もないので、自由時間だ。
塚本とテニスをしようと思っていたのだが、どうやらテニスコートが他の体育の授業で使われてしまっているようだ。
トレーニングをするほどの気力は昼練の後には残ってないので、僕はあんまりいつもいかない図書室に行くことにした。
どこに座ろうかなーと考えていると、香恋がいた。
「あ、光だ」
「おお、何読んでるの?」
「マンガ」
「中一かよ……」
この学校は中高一貫だ。だから中学生も中学棟から図書室にやってくるわけで、マンガは中一に大人気だ。
「別にいいじゃん。私さっきまで現代文の課題やってたし」
「あ」
「あれ? やってないの?」
「最近お風呂とテニスのことばっかり考えて忘れてた」
「あれ、出さないと放課後追加課題やらされるよ」
「それはやばい。テニスの練習できなくなる」
「今からやろう。私手伝ってあげる」
「ありがと……ロッカーから現代文の教科書とレポート用紙持ってくる」
僕はロッカールームへと急いだ。
「ねえええ! 光国語力なさすぎ!」
十五分後、香恋は僕にさけんだ。
「ごめん。何も言ってることがわからない」
「はあ……」
「でもとりあえず終わらせて出せれば、D評価だろうとE評価だろうと、提出したことにはなるよな」
「まあそうだけど……それだと成績悪くなるよ」
「大丈夫。今親いないし怒られない」
僕は自信たっぷりに問題ないことをアピール。
いやあ、うるさい親がいなくて、可愛い幼馴染が毎日お風呂に入りにくるとか神?
もう成績がおっぱいに沈んで行くようにどんどん下がっていく気しかしないな。でもいいや。
「ねえ、もしかして、最近課題適当にやって提出しがち?」
「まあな」
「……それはまずいかも」
「どうして?」
僕は香恋が少し真面目になったのを少し不思議に思って訊いた。
「だって、部活終わった後でもやり直させるってうわさだから。職員会議でとりあえず提出する人が多くて問題になったらしいよ。生徒会の夏海が言ってた」
「うわー……」
それは、まずい。
なぜかというと、部活が終わった後に課題をやらされると、帰るのが超遅くなる。
そうすると、香恋とお風呂に、入れなくなるかもしれない。




