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お尻

 僕は、胸元をタオルで隠したと言ってくれた香恋を振り返った。


 !!!


 香恋は僕の反対の方を向いていた。まあそうじゃないと見えてしまうところもあるし。大変だこれは。


 椅子の上に香恋のお尻が載っていた。


 腰に比べて幅があって……お尻だ。ごめん香恋。


 僕はひっついている椅子を優しくひっぱった。少しずつ取らないと痛そうだし。


「ねえ……光ってさ」


「うん」


「今、私のお尻無言で見てるんだよね」


「……ごめん」


「悪いのは私なんだけど。でも……恥ずかしくて……いっそのことなんか言ってくれた方がマシかも」


 香恋は背中を縮こませた。お湯が香恋の身体を流れる。


「何かか……うーん。香恋って……腰は細いのに、お尻は結構ボリュームあるんだな」


 あ、間違えた。別にお尻の感想じゃなくて全然関係ない話すればよかったな。ミスった……。


「そ、そんなことないしいいいいい!」


 香恋が暴れて立ち上がった。


 あ、とれた。


「いたっ」


 結構勢いよくとれちゃったから痛いよな……。ごめん。


 見上げれば、きっと恥ずかしさとか怒りとか痛さとかいろんな意味で涙目になっている香恋がいた。


「ごめん」


「謝られてもダメ。私ストレス発散する」


「ストレス発散とは」


「私よりもっと恥ずかしい気持ちに、光になってもらうから」


「え?」


 危険すぎる事態だ。あまりに恥ずかしすぎて熱が高くなって、たぶそのせいで香恋が壊れた。


 


 それから僕は香恋に身体を洗ってもらうことになった。すごく丁寧に洗われた。さすがに見せられない部分は洗ってもらってないけど。

 

 それをなんとか乗り切り……記憶があっという間になくなりましたけど、お互い若干冷静になった僕と香恋は、湯船にいた。


「変になっちゃって、ごめん」


「僕も変なこと言ったりして、ごめん」


「……」


「……」


 そして、それから静かな時間が続いた。


 

 明日会う時には、お互い普通になっておしゃべりできるくらい立ち直っていたい。僕はそう思った。


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