その42
僕達を乗せた車がヒナコの家を去った後、ドアを開けてヒナコの母親が出て来た。台風の雲が一瞬途切れ、風もやみ、透き通るような青い空が見えた。
彼女は従姉妹の側にそっと寄り添った。
「良いの?これで?ちゃんと・・最後のお別れをさせてあげなくて」
先生は頷いた。
「御免ね。ヒナコの為に、こんな悲しい事させて」
母親が言った。
「良いのよ。愛子さん。あの子達にはこのお別れは突然で悲しいことかもしれないけど・・この終わり方が良いの。あまりにも大きな悲しみは、時に霧のように隠してしまったほうが良い・・・、いずれそれを忘れるくらいの時間が過ぎたころには霧も晴れて彼らがその真実に届くことでしょう。その時きっと彼らはこの悲しみに耐えるぐらいの強い人間になっている。私はそう信じている」
「強くなるかな?あの子達」
母親が問いかける。
「なるよ!」
先生が大きな声で言った。
「だって私の教え子だもの」
「先生が居なくなっても?」
一瞬、新穂先生の顔が曇ったが空に向かって言った。
「大丈夫。だってヒナコちゃんに会うため勇気を出して困難に立ち向かった子達だもの。私が居なくなっても、きっと大丈夫」
そう言って新穂先生は従姉妹を促してドアへと向かった。
「愛子さん、沢山の向日葵を刈って部屋を飾りましょう。ヒナちゃんの笑顔の側に。私達に今できるのはそれだけしかないから」




