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向日葵を探しに  作者: 日南田 ウヲ
37/46

その37

 

 結局のところ僕達の失踪事件と言うのは少年達が頬を真っ赤にはらして、突然終わりを告げた。それは本当に少年たちの無謀な旅の終わりにふさわしい光景と言うものだった。

(事件はここで終わり・・)

 僕はチップスを取ろうと手を皿に伸ばした。

 だからここで本来ならば小説を終わらせなければならないのだけど、そう思いながら僕はチップスを口に含んだ。

 窓から風が入り、雲が流れてゆく。舐めたチップスの塩味が僕の舌を流れて消えた。

(妹はこの事件の結末を知りたいと言っていた)

 再びチップスに手を遣って口に含むと、僕はパソコンのキーボードを叩いて再び文字を打ち込んだ。



 翌日、僕達は勝幸の家の前に集まった。集まると暫くして勝幸の父親が軽バンで現れた。

「皆、車に乗らんね」

 僕達はその言葉で車に乗り込むと後は揺られて昨日まで僕達が旅した道をなぞる様に進んだ。

 昨日別れ際に館林先生が僕達の両親に言った。

「明日もまた来ていただけますか?」

 それに勝幸の父親が頭を撫でて言った。

「先生、本当にいいんですか?うちの息子らでお嬢さんのお友達なんてさせていただいて」

 先生は笑顔で言った。

「ええ勿論ですよ。是非また明日も」

 父親が顔掻きながら言った。

「そうですか。それなら暫くこの近くの工場で仕事がありますから、息子達と夏生君やツトム君を連れてきます」

「いや、ありがとうございます」

 先生が深く頭を下げた。

 その時ヒナコが言った。

「じゃぁ、また明日も来てくれるのガッチ」

 それで勝幸が顔を真っ赤にした。勝彦が兄の腕をつく。

「兄ちゃん、両親の公認じゃな」

「何が公認じゃ?」

 勝幸の父親が二人を見る。

「なんでもないがじゃ。父ちゃん」

 事情を知る僕とツトムは内心ほくそ笑んだ。

「ではまた明日」

 そう勝幸の父親が言うとそれぞれ僕達は家族と共に車に乗りこんだ。

 その時ツトムの姿が目に映った。ツトムが祖父に連れられて行こうとするところを母親が呼び止めた。

 何事か言うとツトムを母親が手を引いて連れて行く。

 僕はそんなツトムの背中を何気なしに見ていた。

 すると側に父親がやって来て言った。

「ツトム君も大変じゃな」

 僕は頷いた。

「夏生、ツトム君の両親が離婚したのは父親が都会に出稼ぎに行ったきりこっちへ戻ってこなくなったからじゃ」

 僕は父親が突然、ツトムの両親の離婚の原因を話し出したので驚いた。

「戻らなくなった原因は知らんが、ツトム君のお母さんにはツトム君の事で相談したいことが沢山あったらしい。しかし戻らないことで夫婦の間に次第に喧嘩が多くなり、それで溝が出来てしまった。福岡に行くのは・・・ここでは仕事がないからじゃ。離婚して仕事が無ければツトム君を育てることは出来んからな」

 僕は父親の顔を見上げた。沈痛した面持ちをしている。

「夏生、家族は離ればなれになってはいかん。いつかは生死が家族を分かつこともあるじゃろう。じゃけんど、家族は決してその時まで離ればなれになってはいかん。家族は悲しみを生むもんじゃなく、いつまでもいつまでも肩を寄せ合いながら幸せを・・・喜びを生み育てていかないかんものなんじゃから」

 父親が僕を見て言った。

「きっと今夜は母親と一緒に過ごすんじゃろ」

 僕は母親に連れられてゆくツトムの背を見ていた。それはとても立派な大人の背に見えてとても頼もしく見えた。

「お前も早うツトム君の様に大人にならな駄目じゃ」

 僕は顎を引いた。

 去ってゆくツトムの背を見る。

(きっと明日もツトムは元気に僕達の前に現れる。だってツトムは既に大人で強い男だから)

 そう思って僕は父親と一緒に車に乗り込んだ。


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