その12
冒頭部分を書きだした後、僕は仕事から帰れば日記を読み、思い出した事をノートに書いて、週末の小説の草稿がし易いようにした。
休みの週末が来ると朝早く起きてキーボードを叩いた。
その日未明から激しい雨が降っていた。窓を濡らす雨の滴を気にすることなく僕は文字を画面に打ち込んでゆく。
十時頃だろうか急に窓を濡らしている滴が輝き、空が明るくなった。
(雨が上がった)
手を止めて明るくなった外を見ようと窓を開けた。
珍しく虹が見えた。虹は都会のビルに掛かる様に円を描きながら離れたビル群の中に沈み込んでいる。
(虹か・・)
僕は目を細めて虹を見つめる。
激しく降りやんだ雨が空に残した軌跡を眺めていると、急に僕は思いついたようにCDを探した。虹の軌跡に打たれた心に響く様な音楽を聴きながら小説を書きたいと思ったからだ。
何がいいだろうと思っていると、『スタンド・バイ・ミー』を見つけた。
(これ、いいかも)
僕はケースからCDを取り出すと、プレイヤーに入れて音楽が流れてくるのを待った。すると低い、ベースの音が聞こえてきた。
やがて規則正しいリズムに乗って歌詞が聞こえてきた。
虹は輝き、その上を滑る様に『スタンド・バイ・ミー』の歌詞が流れていく。僕は音楽を聴きながらパソコンの画面に向かい、キーボードをたたき始めた。
そう冒険の始まりの話の続きを書く為に。




