生ぬるいかぜが(詩 三編)
生ぬるいかぜが
生ぬるいかぜが 僕の肩をつつんだ
僕はひとつ くしゃみをした
沈んでゆけたなら どれだけマシだったろう
ただよえるのは尊いけれど
それには苦悩がともなう
ユゥラユラ
ユゥラユラ
ユゥラユラ
どこかで 笛が鳴いた
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よごれちまった十円玉に
よごれちまった十円玉に
僕は同情するよ
机のうえへセットされて ポツンとした君に
ただし君のためじゃない 僕のためさ
情けは君のためじゃない 僕のためさ
お前もよごれちまったなって
岩屋の番人みたいな目をしていうと
安心するんだ 僕は
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浴室の
浴室の雨音は どこか違う
浴室の虫の音も 違う
身体をひたす僕がいるから
きれいはなにかと問いかける
泥のにおいは きたなくて
泡のかおりを かぎたくて
静かにはねる外の音を聞いて
きれいはなにかと問いかける
この部屋から出るころには
きれいになっている身体
どうでもいい気がしてきて
ただ、思うのは……
きれいになるのは、きれいかってこと。
どこかで、笛が鳴いた。