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炎に包まれた過去


「ねぇ! 目を開けてっ! 死んじゃいやだよぉ!」


納屋の中、業火が赤く、熱く燃え盛る中で、少女は泣きじゃくっていた。

冷たい母の亡骸を揺らしながら。


「どうして? どうしてなの? 私いい子じゃなかった?

ねぇ……だまってたらわかんないよっ!」


必死に語りかけても、動くことの無い母の胸を打つ。

あふれ出す哀しみは、涙を出せど出せど尽きることは無い。


「あっつ!」


猛る焔をじかに触れ、手を引っ込めた。

ようやく彼女は逃げ場を失っていることを理解した。


「えっ……」


もくもくと立ち上る黒煙は、死神としか形容できない。

どうしたって、死の鎌からは逃れることはできないだろう。

聡い彼女は、その時から泣くことをやめた。

そして静かに、母の隣で横になる。

死の鎌が振るわれるのを待つように。


しかし、その鎌は鈍らだったようで…


「大丈夫かっ! おいっ!」


一人の男性兵士の緊迫した声が聞こえた。


「……あ……ぇ…」


煙を吸い込んだためか、声が出なかった。


「とにかくここは危険だ。」

「………ま……て……おか……さ…ん」



そういって、兵士は彼女を背負いこんだ。

遠のく母に腕を伸ばす。

届かない。

そこで、少女の記憶は途切れた。






目を覚ますと、そこは見覚えの無い板目。

おきるといつもはすこし大きめの板目と目が合う。

それが、今日はとても小さい板目がこちらを見ていた。


「ここは……?」


ゆっくりを体を起こすと、やはりそこは見たことのない障子に仕切られた部屋だった。


「目覚めた?」


そこには、認識の無い男性が一人、傍らにいた。


「あの、貴方は……」


人見知りではないにせよ、少し顔がこわばらせながら少女は尋ねた。


「僕は、君の担当医の三崎三郎(みさきさぶろう)だよ。

しばらく嫌でも顔を合わせることになると思うけど、よろしくね」


微笑むように彼は答えた彼をみて、少女は少し笑った。


「そうですか、よろしくお願いしますね」


微笑んだまま、少女は彼に握手を求めた。

刹那、彼の表情が凍りつき、目線を少女からはずす。


「あの………えっ?」


突然のことに戸惑い、目線を腕に落とす。

そして、自らの目を疑った。


ない。

腕がなかった。

そうして、彼女は全てを思い出す。

――――烈火の惨劇を。


「君が僕のところに運ばれてきたとき。

すでに右腕と左足は焼け爛れて、切除する以外なかったんだ」


そんな三郎の話は彼女には届かない。

あの日に失った物を思い出してしまったから。

故郷を、友を。

そして、母を。


「うぁ…ぁぁ……うぁあああああああああ!」


「っ! き、菊ちゃんっ! 気をしっかり持つんだ!」


母を失ったその出来事は、歳7つの少女の心に、とても深い残忍な傷を残した。


「ああああああああああああっ!」


絶叫をあげ、耳を押さえ、現実から逃れるために瞼を強く閉じる。

が、現実が消え去ることは無かった。

死神の残した傷が痛み、耳の奥では焔の弾ける音が木霊し、

母のいなくなった世界はいまだに存在する。


「菊ちゃん、落ち着くんだ!」


「なんでなんでなんでなんでっ!

どうしてどうしてどうしてどうしてっ?

どうしてなのっ! ねぇっ!」


あふれる涙に構うことなく、三郎にすがりつく。

三郎からすれば、ただの八つ当たりでしかない。

不幸な事故だったのだと、奥底ではわかっていたのかもしれなかった。

しかしどうしても、まだ幼い少女は押さえきれなかったのだ。


「ねぇっ! どうして助けたの?

どうしてまだ、私にこんな現実を見せつけるの?

教えてよっ! ねぇっ!」


取り乱し、どうしようもない虚空が襲われようとしていた。

その時、暖かな抱擁に包まれた。

一瞬、自分が何をされたのか、少女は分からなかった。


「……」


一定のリズムが少女の心臓と同調し、耳の奥にいた焔の音は、だんだんと遠のいていく。

少しずつ落ち着き始めて、ようやく彼に抱きしめられたのだと理解した。

ただ無言で、強く、少女の心が壊れ落ちぬように。


「……」


「……僕は、ただの医者だ。

君の親でも、親戚でもない。

でも……それでも……君の心の穴を埋めてあげたい」


「……」


「君の傷を……癒したい」


それが限界だった。


「うぅ………うわぁ……」


先ほどとは異なる、暖かな涙が溢れ出した。

頬を伝って流れ落ちる涙は、藍色の着物に染みを作る。

それでも彼は、少女を放さなかった。

しばらくそうしていると、少女は泣き疲れたように深い眠りについた。






「失礼する」


「ちょっ、ちょっと待ってください!」


玄関から騒がしい声が聞こえる。

それは少女が三郎との生活に馴染みはじめた頃だった。

一人の男が、勝手に家に上がり込んだ。

三郎は必死に彼を止めようとしているが、男の足取りは鈍らない。

少女の目の前に、男が姿を現す。

間接のところどころに防御装甲(プロテクター)をつけ、

黒い特殊な服を着た兵士だった。


「お前か? あの村の生存者というのは?」


見下ろすように兵士が問うた。

あの村――その言葉にずきりと胸が痛む。


「この子は7歳ですよっ!

これ以上かかわるのは、やめていただきたいっ!」


三郎は少女と男の前に立ちはだかる。


「君に聞いているのではない」


兵士はそれだけ言うと、彼を押しのけた。

そして、しゃがみ込み、少女の顔をじっと見つめる。


「お前………自分の親を失った悲しみ。

それは相当、深いものだろう」


意外なことに、兵士の口から同情の言葉とびだした。

そしてすぐに、低く響く声で訊ねてきた。


「だが、いつまでもそのままでいいのか?

深い哀しみにとらわれることが、お前に与えられた命か?」


「っ!」


言葉がつまる。

ただ、ひたすら絶望するだけの日々。

それが、母の望みか?自分のすべきことか?

答えは否だと、幼いながら即答できた。

途端、止まっていた頭の歯車が回りだしたように、自問があふれ出す。



「なぁ、いいことを教えてやろう。

これ以上何も失わなくて済む方法を」


息をのんだ。


「―――()()()を手に入れろ」


兵士の口元が、にやりと歪む。

なぜ、今まで思いつかなかったのか。

やられるだけやられて、奪われた物を取り返せずにいる。

悔しさと怒りがふつふつと湧いてくる。


「………その力を手に入れるには、どうしたらいいの?」


兵士はただ、ポツリと答える。


「兵士になれ、嬢ちゃん」 


これ以上、何も奪わせない。

これ以上、何も壊させない。

これ以上、誰も死なさない。


その言葉は、焔を消し去る、()()()闘志へと変わった。










NGシーン②


兵「お前か? あの村の生存者というのは?」

三「ちょっと待ってくだs」


〜「ちわー、ラーメン3つお待ちどうさまです〜」〜


作「あぁぁぁぁ、ラーメン屋さんの声で全然シリアスじゃないぃ↓ぃぃ↑ぃい→!」


「「www」」


三「さwww先にラーメン食べましょうかwww」


〜〜〜〜〜〜


桃「……今回出番ないんだけど……」

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