もう一つの人影
こんにちは!
チョコレートマカロンです!
8話からは、不定期の更新となります( *¯ㅿ¯*)
更新ペースは上げていきたいと思っているので、今後ともよろしくお願いしますm(*_ _)m
※今回の後書きは、ふざけました
「がっ…はぁっ!」
勢いよく吐血し、口を抑える六城。
そのまま、血で湿った地にぐらりと倒れ込む。
「六城っ!」
{菊っ! 待てっ!まだどんな危険が潜んでるか―――――っ!}
桃太郎の静止を解さず、菊は崩れ落ちる彼に駆け寄る。
腹部から、どくどくと生暖かい液体が地に拡がってゆくのが見て取れる。
「か…はっ……
くっ…………そ……。
臓腑……器を……やっちまっ……た……」
「喋らないでっ!
えっと…そ、そうっ!
身体情報!」
彼女は尋常の冷静さを失いながら、
自らの通信機を、苦しげに呻く彼の通信機に強制接続する。
身体情報を空間画面に反映。
算出された情報が空間に投影される。
:損傷確認……終了
/主力臓腑器、右下腹部の出血
:異常箇所確認……終了
/主力臓腑器の損傷により出力不可
:対処…………承諾
/安全設定起動
/主力臓腑器の出力を停止
/副臓腑器へ出力の切り替え
致命傷じゃないだけ僥倖かもしれないが、状況を考えれば致命的だ。
延命こそ可能だが、破壊された臓腑器は[機械義手]を動かすための動力源であり、彼らの保護装置である。
臓腑器とは、もともと[機械義手]の強力な力の代償である[負荷圧力]を軽減させるために取り付けられた、
[機械義手]の一部だったもの。
しかし、体外では非常に動力の効率が悪く
結果、体内に取り込む手術を行うようになった。
肝臓のあるべき所に主力臓腑器、膵臓の所に副臓腑器が埋め込まれ、それらの臓器の代わりと、動力源の提供、[負荷圧力]の軽減を行う。
[負荷圧力]は、[壱式]から[参式]……と、発揮できる力が強力であればある程に比例して増加する。
同時に、基数の数によっても動力源は大きな出力を必要とする。
もちろん、肝臓や膵臓を動力源とすることも可能ではある。
それも[負荷圧力]で、身体が弾け飛ぶことが無ければの話だが……。
このとき六城は、全手脚を[機械義手]としているため、主力臓腑器ほどの出力が不可能な副臓腑器では、1町を歩く程度が限界だ。
「……早く逃げろ…
俺なんか……に、構うな……」
にっと、力ない笑みを浮かべる六城。
そんな彼を見て、怒りを抑えつつ潤んだ瞳で叱責する。
「……ッ! ふざけんなっ!
いくら馬鹿でも、そんなこと口にしないでよっ!」
すると今度は、六城が呻きながらもいい返した。
「―――馬鹿野郎……。
次が…くる。
どのみち、テメェの…軽い義手じゃ、俺は運べない!
早く……しろっ!」
だが、増えつつある黒い軍勢は、無情にも、弾丸を装填した音を響かせる。
暗い空の下、赤い無数の光線が彼女らの頭部を指している。
次の瞬間には、熱線と化した弾丸が飛び出すであろう銃口。
その真っ黒な穴と彼女の視線が交じる時。
走馬灯に似た何かが彼女の脳裏を駆け巡った―――――――。
「クソっ! 鬼共が!」
江戸戦闘指定地区――――弍壱八区
朽ち果てた古い家々がいまだ点在するこの場所は、
かつては栄えた港町だった。
[鬼]の襲来があるまでは……。
どこか圧迫感を感じる曇り空の下、
中距離型から放たれた弾丸が、一方的に兵士を襲う。
「隊長っ!
ここはもう放棄するしか……っ!」
朽ち果てた家の残骸の陰に隠れ、既に機能しなくなった右の義手を切り捨てる一兵。
隊長と呼ばれた男は叫ぶ。
「お前……っ!
俺らがここを放棄したら、誰が江戸を護るんだっ……!
防壁のすぐそこには人々がいるんだぞっ!」
「しかし!
隊は既にほぼ壊滅……、私と隊長以外残っていませんっ!」
「そんなこと分かってるっ!
だからって尻尾を巻いて逃げるわけにはいかないだろうがっ!」
顔面の傷から流れる血を指で拭う。
「ではどうしろと言うんですかっ!」
「っ!…………」
焦燥に駆られたのか、悲痛に叫ぶ一兵に彼は何も言えなかった。
「あぁ! チクショウォ!」
「おいっ! 早まるなっ! まだ距離が――――」
耐えきれなくなった兵士は、死線に駆け出す。
しかし、それはあまりに強大で、残酷だった。
「ぐっ……あぁっ!」
遠方で落雷が落ちたような、曇り空によく響く発砲音。
痛々しい声と共に、背後から駆け出した兵士の倒れる音が聞こえた。
「チッ………!」
怒りに任せて地面を拳で叩く。
が、痛覚がない義手は一方的に地面を抉るだけだ。
「……なんだ?」
その時、戦場は異様な雰囲気に包まれた。
よく耳をすませば、人形の歩く囁かな機械音が近づいてきている。
「……気づいていないのか?」
息を殺して、バクバクとうるさい心の臓を、胸の上から抑える。
中距離型3機。
接近戦闘は得意としない機種。
例え3機相手でも、勝機はある。
恐らく遺体の確認のために近づいてきてるのだろう…と推測した彼は、奇襲のために少なくなった[電帯刀]の替刃の残量を確認する。
「壱の八分目……。
あと斬れて3回か……」
彼は[電帯刀]の展開を待機状態にして、タイミングを図った。
動悸が激しくなり、義手が震える。
敵に聞かれないようにゆっくりと息を吐き、
聴覚を研ぎ澄ますように瞼を閉じた。
暗闇の中、恐怖の足音だけが彼の脳内に響いている。
……
そして、物陰から勢いよく、体をねじるように飛ぶ。
横から敵の背後に回り込んで、うなじを狙った。
刃を当てる瞬間に出力を最大に変更。
「―――――仲間の―――敵だっ!」
振り切り、確かな手応えを感じながら、勢いを殺すことなく次の首を狙う。
刹那、2機目の股下をくぐり抜けて背後から斬りつけた。
「あと一つ!」
そして、銃口が向けられていたことに気づく。
「……あ……」
思わず声が漏れた。
中距離型の腕と同化した円筒状の真っ黒な銃口。
死神が、自らの首を飛ばす寸前だった。
ドォンッ!という中距離型独特の銃声が、雨の降り出しそうな空に轟く。
とっさに膝をついた彼の頭上を、灼熱の弾丸が飛ぶ。
弾が地をえぐった瞬間、憎悪のままに刀を突き出した。
「――――こんなところで死ねるかよってんだ!」
人形の胸を貫き、そのまま上に切り上げる。
赫目の書かれた顔面が切り裂かれ、動きを停止した機会人形は、背から直立したまま地面に伏した。
「はぁ……はぁ……」
押し殺していた息を一気に吐き出し、新鮮な酸素を肺に取り込む。
ヨロヨロと2歩ほど歩いた後、脱力して倒れた。
「…………やった…………か」
倒れた敵を見下ろしながら、[電帯刀]の残量を確認する。
残り残量を示す矢印が目の前で消滅し、完全に使用不可となった。
「危なかった……」
ホッ、息をついて安堵し、仲間の死骸を見て、
自分が生きていることに不思議な感覚を覚えた。
哀しみとは違う喪失感が彼を襲おうとしたとき……
「本当に危なかったね〜」
「……は?」
突然、声を書けられた。
機械と人の残骸以外、何も無いはずの戦場。
在るはずのない、澄んだ男の声音だった。
「でも、最後の戦いぶり。
かっこよかったよ〜」
パチパチと手を叩き、祝い事でもあった様な陽気さを伴う男が歩みよって来る。
「……貴様…何者だ?
ここは江戸戦闘指定地区。
一般民が立ち入ることは禁止されていることを知らんのか?」
立ち上がって、睨みつけるように男を見る。
古いくさい笠を深くかぶっているために、顔を垣間見ることができない。
「いや待ってくれよ、別に僕は一般民じゃない」
男は手のひらを上に向けて、おどけたように首を傾げる。
「じゃあ、兵士か?
だとしたら、なぜ参戦しなかった?
職務放棄となれば、お前は裁きにかけられることになるぞ」
問い詰めるも、男は笑いを含んだ声で返す。
一瞬服の隙間から見えた腕は、紛れも無い[人の腕]だった。
「あー、あはは。
僕は兵士でもないんだなこれが」
眉をひそめる彼に、男は語りだした。
「……何?」
「僕はまぁ、ある人を探していてね」
「人探しだと?」
「うんそうそう、
確か{深紅}とかいうのにいるらしいんだけど……」
その声に、彼は目を見開く。
「{深紅}……
まさか、桃太郎さんのことか?」
「おぉ!
そうそう! 君、話が早いね!」
「{深紅}は、今のところ桃太郎さんただ一人。
ある素質と、紅番の上位まで上り詰める実力が無ければその位にはつけない」
弾んだ声で、男は訊ねてくる。
「へぇ~、ところで、桃太郎はどこにいるんだい?」
「……」
「――ん? どうしたの?」
「残念だが、身の知れぬ男にそれを教えることはできない」
すぐさま金属製の懐刀を取り出し、男の首筋にあてがう。
「さて、そろそろ吐いてもらうぞ?
お前は何者だ?」
男は沈黙し、後に嘆息した。
そしてゆっくりと口を開く。
「―――――僕は欠陥品で、失敗作」
「……な、何?」
全く訳の分からない答えが返って来たことに、彼は少しばかり動揺を見せた。
「今言ったとおりさ、僕は―――」
刹那、白い刃が彼の心臓を貫いた。
「うぐっ!……かはっ、ゴホッゴホッ!」
咳と血の塊を口から吐き出す。
パシャッという音とともにはじけた。
「残念だなぁ。
でも、話すつもりがないなら時間の無駄だからね」
「うっ!……」
男は無慈悲にも、突き刺した刃を引き抜いた。
途端、糸の切れた人形のように力なく彼は崩れる。
同時に、男の笠がはらりと地に落ちた。
「…! そ……その顔…は……!」
笠の下に隠された顔面。
それをみて、彼は苦しげな表情で目を見開いた。
「…桃太郎……さ―――」
かの者の名を口にしかけたとき、
剣光がきらめき、彼の首がぼとりと地に落ちた。
「……はぁ~
探りをいれずに答えてくれれば、生かしておいたんだけどね~」
荒野を染める赤い飛沫を一身に浴びながら、
純白の刃を伝う、真紅の血液を払う。
「ここにはいないかぁ…。
まったくどこにいるんだい? 桃太郎。
―――僕ならここだ」
白刃を鞘にしまいながら、ポツリとつぶやく。
「――――僕は、複製品だよ」
男は、笠を救い上げるように取りあげ、深く被った。
桃太郎の顔と酷似しすぎる、その顔を隠すように。
突然始まるNGシーン
〜冒頭〜
犬「がっ…はぁっ!………
…ゴホッゴホッゴホッ…www
チョッww…ゴホッ……チョマチ……」
「「「www」」」
作「ハイwwカットォ!」
猿「…本格的に咳してるww」