戦
こんばんは!チョコレートマカロンです!
ようやく戦闘回となりました!
おもいっきり戦闘をメインとしながら、いままで
ろくな戦闘が無くてさぞ皆様も退屈なさったかもしれませんね……(・∀・`。)
では、そんな戦闘回をお楽しみください ノシ
参〇八区防衛戦線――――即ち、戦場
雨の恵みを受けた地の果てに、黒い軍隊が姿を現す。
死という名の波と化し、静寂を進む機械人形。
波が大地を流れた後に、残るものは無い。
桃太郎は、前回同様、既に使われなくなった砲台の横でその流れを見ていた。
{各自に告ぐ――――。
現在第1防衛線を通過、交戦予定まであと数刻。
今回は第2防衛線にて交戦する。
俺と[猿]、[犬]は敵の囮。
[雉]は中距離型の対処を頼む。
作戦は昨日述べた通り、以上}
{了解ィ~。
爺さんに治して貰った[弐式]が火を噴くぜっ!}
{了解っ!
――っていうか六城さんの義手、火を噴くようになったんですか!}
{お? おうよ!
火噴くぜ?}
{梨乃。
それこいつの嘘、騙されちゃいけない}
{あ、そうなんだ…。
なーんだ、少し期待したのに}
{……お前ら緊張感持てよ}
眼前の死を見て尚、緊張感のない会話に桃太郎は嘆息をつく。
しかし口ではそう言えど、それが数々の死線をくぐり抜けてきた兵士の在り方だと彼は理解していた。
平和な日常は徒花のように儚く、気まぐれで、予兆はない
――――そう、この戦場では。
彼は思いつめたように息をゆっくりと吐き、指令を下す。
{本刻より、作戦を決行す。
各自、必ず生還せよ。
――――――突撃っ!}
{{{了解!}}}
駆け出した4つの兵士の背に、恐怖は無かった。
――――――
「おらぁっ!
くらいやがれぇええ!」
六城は、目の前で刀を振りかぶる機械人形の脇腹に
素早く紅い刃を叩き込む。
刹那に紅く煌めいた金属片が空中を舞い、腹を切断された[鬼]の上半身はなす術なく地に崩れ落ちた。
それと同時に、断面が紅く熱した鉄の如く熱を帯び、
一気に燃え上がる。
炎が揺らぎ、その上に、ゆらゆら陽炎が沸き立つ。
その炎はあっという間に硬い金属を溶かしきり、どろりとした液体へと姿を変えた。
「へっ、ざまぁねぇ!
さぁ、来いよ! クソ鬼共がよぉ!」
獲物を狩る狩人のように、彼は次のなる[鬼]を求めて雨に濡れた大地を蹴る。
しかし突然、彼の目の前を冷めたい風が横切る。
先端の蒼い槍を持ち、
肩まである黒く艶やかな髪を靡かせる美少女。
蒼く光る矛先を湿った大地に突き刺し、[鬼]に背を向けて立つ彼女こそ、
戦場の[猿]――――菊だ。
「なっ…! お前っ! 何のつもりだ!」
「…今回は主に、護りを固めて耐えるのが役目
勝手に敵の真ん中に行かれたらこっちが迷惑」
行く手を阻む彼女に、彼はハッとしたような仕草をとり、
歯噛みしながら構えていた[陽炎]を下ろした。
「……わーったよ。 畜生…」
素直に敵の大軍と距離をとり、元の位置まで引き返した。
彼を引き戻した彼女は、ため息を一つ漏らす。
だが、すぐに微笑を浮かべた。
「……確かに、武器の調子は良好。
この敵の大軍と緊張感。
……[犬]が騒ぎたくなるのも分からなくはない…」
地に突き立てた槍を抜きながら呟き、
彼女はその場を離れる。
背後に立つ、霜に侵され凍てついた機械人形を置き去りにしながら―――――
{―――あれが 新型電帯刀 [陽炎]と 新型電帯槍 [雪氷]……。
替刃の電力を展開し、刃として顕現させる[電帯刀]の後継機……ねぇ。
――――時代の流れを感じるなぁ}
{替刃の電力を[熱]と[冷気]に分解、そして展開し、刀身とする。
秘匿された江戸最新鋭の武器です。
見たことないでしょう?
―― っと!}
{あたりまえだろ!
もしあれが[硬化刀]で強引に叩き切ってた時代にあったら、
俺の殲滅数も800は優に越してるだろうな}
{防衛の度に硬化刀バッキバキにして、
その上助けなかったら死んでたくせによく言いますね……あと、それは今もですよね?}
呆れたように語る桃太郎に、通信先の男はふっと笑った。
{ははっ! そりゃ違いねぇ。
でもまぁ、前までは鈍らしか使ってないからな。
今の俺はあの時とはちがうぜ?
……というか、お前の[月夜]がおかしいだけじゃねぇか?}
{硬化刀であることに変わり無いじゃないですか……
―――でもまぁ確かに。 こいつは少々切れすぎます、ねっ!」
――――戦の真っ只中。
桃太郎は[鬼]の刃を、愛刀[月夜]の漆黒の刀身で受け流しながら、通信を受けていた。
通信先―――――――富士 瑠道
特殊機械化兵士暗殺部隊
紅・壱番 富士 瑠道
桃太郎が剣術を教わった師であり、夕餉を共にした仲間であり、
先輩である。
{よし、裏は取れた。
まぁ、任せとけって。
俺を誰だと思ってるんだ?}
{思ったより早かったですね。
無駄口はいいので、早くお願いします。
……というか、ほかの皆さんはどうしたんですか?}
{あいつらならもう始めてるんじゃねぇか?
江戸を出て、一刻ぐらいではぐれちまったからな}
{――――相変わらず統率の取れない人たちですね……}
{まぁ、そう言うなよ。
…他でもないお前の頼みだ。
間違いなく間に合わせるだろ。
もしかしたらもう始めてるかもしれねぇしな}
{……わかりました。 それじゃあお願いします}
{あぁ、任せとけって。
そんじゃまぁ、あとで}
桃太郎は彼との通信を終える。
そしてすぐに、音声再生機を起動する。
不明番号 参====
いつも通りの楽曲。
だが、音量はいつもより大きめに設定した。
なぜならそれは……
―――――――ギイィィィィンンンン!
敵勢の奥から響く、壮絶な破壊音を紛らわせるためだった。
「な、何あれ……」
梨乃は上空で浮遊する[空鳴]から、その光景に目を見張った。
戦場の空が大きな炎でもあるかのように、仄かに紅く染まったからだった。
{桃太郎……あれどうなってるの? 火事?}
異変に、すぐさま通信機で桃太郎を呼び出す
しばしの電子音が耳の奥で響いた。
{――――[雉]か? 一体どうした?}
{た、大変! 戦場の空がっ!}
勢いで危うく噛みそうになるその声に、
彼は穏やかな声音で返した。
{あぁ、そっちからは空が燃えてる様に見えるかもな。
……応援部隊だ。
[硬化刀]で叩き切ってるから、[鬼]の装甲が火花となって
空を染めてるんだよ。
後は……半分くらいだ。 中距離型の方は任せたぞ}
{……う、うん}
一度納得のいかないような返事をし、その後に、彼女は急いで桃太郎を呼び止めた。
{あっ! 待って桃太郎!
{ん?どうかしたか?}
{その中距離型の事なんだけどね―――――}
「おぉ、すげぇな!」
六城は暗い空を染める、紅い仄かな光を眺めた。
「よそ見してるとまた[弐式]壊すからやめて。
爺に迷惑かかる」
敵の攻撃を避けながら、菊は六城に忠告する。
「んだよ、別にいいじゃねぇか。
怖い顔しやがって……
―――それにしても」
刀を振り、炎を立ち上らせる六城。
彼はいつもとは違う、神妙な面持ちで菊から[鬼]へと視線を移した。
「妙…じゃねぇか?」
「―――妙?」
突然の問いに、菊は背を向けた六城を振り返る。
「あぁ。
なんつーかなぁ………弱すぎる
ような気がするんだよ」
「そう言われれば……。
35体の大軍のはずなのに、いつもより楽な気がする……」
菊はそう言うと辺りを見渡した。
敵の数はだんだんと減り、残りは13体ほど。
戦う[忍]の姿が、朧気に見える程度になっていた。
「いや、それだけじゃねぇ。
気持ち悪いほどに、中距離型の支援がすくねぇ。
あっても3砲だ、明らかにおかしいぜ……」
その時、突然通信機より通信がはいる。
通信先――――桃太郎
{桃太郎? 一体どうし―――}
{菊かっ! 今すぐその場から離れろっ!}
菊は耳を疑った。
緊迫した彼の声など、今まで聞いたことが無かったためである。
{そ、それはどういうこと? }
{いいから早く離れろっ! そこは――――}
そこまで桃太郎が口走った所で、[陽炎]の峰が彼女を弾きとばした。
「く―うっ!」
――――そして、時は遅延する。
気持ち悪いほどに、時の流れがゆっくり感じられ、
六城の背中に視線が吸い込まれ―――
{――――罠だっ!}
再び時は加速して。
刹那、無数の砲撃が――――
――――六城を貫いた。
一読頂きありがとうございます!
いかがでしたでしょうか?
戦闘シーンの書き方なるもののテンプレを知らないばかりに、拙い文章に見えてしまっていたらもうしわけないです……。
続きは翌週の日曜となります!
六城は果たしてどうなるのか……!
もし気に入っていただけましたらブクマ等を下さると、
マカロン(←作者)のクリームが出ます。