影に舞う江戸の暗殺者
皆さま、あけましておめでとうございます!
チョコレートマカロンです!
この度、皆様には大変ご迷惑をおかけいたしました。
今度こそ、5話となります!
どうぞ、本年もよろしくお願いいたします!
防衛府―――――参〇八区担当防衛兵士中央室
強化金属が四方を囲む薄暗い部屋。
会議室……と言うにはすこぶる重厚なその部屋は、作戦の漏洩を防ぐため、部屋の周りに空波障害波が施されている。
真ん中には大型の円卓があり、全員が席につくと、机から空間画面が浮かび上がった。
すると、彼らは自らの通信機を起動し、
通信機から浮かび上がった空間画面を、机に浮かび上がったそれに重ね、接続する。
[参〇八区 紅・拾弐番 佐々木 六城―――認証完了]
[参〇八区 紅・拾四番 木枯 菊 ―――――認証完了]
[参〇八区 白・ 壱番 佐条 梨乃―――――認証完了]
3人の認証完了の報告が、桃太郎の通信機に通知される。
そして、画面は切り替わる。
[参〇八区 深紅・壱番 桃太郎――――認証完了
第壱錠・*********―――――――承認完了
第弐錠 〇〇〇〇〇〇〇〇〇―――――――承認完了
――――起動を許可します]
全ての工程を終えると、いくつもの線が空間に投影され、
参〇八区全体の地図を形作る。
「それではこれより、鬼人迎撃作戦会議を決行する。
今回の観測班は六班、20里先の沖を現在進行している」
すると、六城が口を開いた。
「……ってことは、前線はまた海岸沿いか?
前回の襲撃地点と被ってるってことだよな?」
「あぁ、
2回被るなんて珍しい話だが、予想はほぼ確定だそうだ。
幸い、もうすぐ物資は届くから替刃と[空鳴]の重油に関しては奇胎しなくていい」
「ふぅん…。
それで、敵勢の数は?」
冷静な声で菊は問うた。
「……35だ」
「え?
さ…35……って言ったの…」
梨乃は衝撃のあまり、目を瞬かせながら前のめりになる。
「そうだ、35だ。
今までの防衛戦で最も敵数が多い。
間違いなく過酷な防衛戦になる」
「35……か。
桃太郎、いつもみてぇに易々とは行かねぇが……」
「そうだね…
こんな数相手にしたことないよ?」
「そうだな、圧倒的に数でも不利だ。
だが、この三○八区は突破されるわけにはいかない。
そこで、今回は応援を要請した」
「応援だと?
この短い時間で良く呼べたな。
仮にもこんな激戦区に来るなんて、どんな物好きなんだ?」
すると静かに、しかし確信を持ったように菊は呟いた。
「…紅番・壱・弐・参番。
特殊機械化兵士暗殺部隊…。」
「まさか……[忍]だって言うのか!?
確かに、連中ならすぐ応援に応じられるのも頷けるが、正気か!
あっちは、[鬼]すらろくに見たことのない素人集団だろ?」
六城は菊の言葉を聴くなり過激に反応する。
しかし、梨乃は何のことだか分からないというように首を傾げた
「[忍]……?
それに、紅番・壱・弐・参番って……」
六城はあぁ、と思い出したように桃太郎に語りかけた。
「白番にはまだ存在が秘匿されてるんだっけか?
桃太郎これに関しては頼みたい」
桃太郎は六城と目をあわせると、
その続きを請負ったように話を続けた。
「そうだな。
これは白番には知らされていないから知らなくて当たり前だ。
既に許可は取ったから、今から説明する」
彼はそう言ったかと思えば、空間に一つの画面を展開した。
そして、それを読み上げ始める。
「[特殊機械化兵士暗殺部隊]――――及び[忍]
江戸の有する戦力の一つであり、
江戸を影から守る兵士。
主な任務は将軍の護衛及び、
江戸の秩序を守るための暗殺。
その存在は秘匿され、民には公開されていない。
兵士ですら制限があり、紅番以上の番を取得したもののみに公開される。
その力は必ず江戸を守るために振るわれる力であり、
仮にそれが、将軍の命であっても江戸を脅かすものであるならば、背くことが許される
…と以上だ」
「そういうこった。
でも、なんでそんな連中に応援なんか頼んだだよ桃太郎。
下手に動かれちゃたまったもんじゃないぜ?」
「確かに連携をとるのは難しいかも知れないね…」
「その点に関しては問題ない。
今回の作戦の俺らの役目は、
主に囮だ」
「囮?」
「そうだ、
俺らは敵の攻撃をなるべく耐えて、山の周りから回り込んだ[忍]が暗殺の要領で
潰していく。
どれだけ時間を稼げるのか。
それが防衛の要になる」
「殲滅は、そいつらに任せるってことだな?
確かにお互いが邪魔になる、なんてことはなさそうだが……。
いつもの何倍もの危険があるぞ?」
しかし、桃太郎は微笑を浮かべた。
「あまり、彼らを舐めないほうがいい。
仮にも紅番の三本指に入る連中、
ましてや暗殺を専門とするんだから、刃を向けさせなければ
すぐに終わる任務になるだろう」
六城は、それを聞くと満足したと言うかのように、
背もたれに寄りかかった。
そのやり取りを終えると、続くように菊が口を開いた。
「…彼らの力量と、作戦については分かった。
ただ、彼らは信用できるの?」
黒い瞳が桃太郎をまっすぐに見つめた。
しかし、彼は予想していたというように返答した。
「まぁ、お前がそう言うのもわかる。
死線をともにくぐるんだからな。
むしろ話を聞いただけで信用できるなんて奴はすぐに戦場で果てる。
だが、安心してくれ。
絶対信用できる人物だ」
「―――その証拠は…?」
疑り深く尋ねる菊に、桃太郎は答える。
「…俺がまだ紅番だった頃。
一緒に飯を食って、寝て、訓練して、死線をくぐった部隊の重鎮に当たる連中だ」
話を聞いていた梨乃は、はっとした。
「それって、つまり……」
低い声で、思い出に浸るように彼は言った。
「――俺の先輩…だ」
ご一読ありがとうございます!