災厄の再来
皆様どうも!
来年も寝正月の予感がするチョコレートマカロンです!
やはり戦闘以外のシーンの描写が難しいです……。
こんなグダグダした感じですが、読んでいただければ嬉しいです!
それでは、どうぞ!
防衛府―――三〇八区担当防衛兵士宿舎玄関
[動力車]から降車した桃太郎は、宿舎の方へと伸びる白い廊下を辿った。
しばらくしてたどり着いた宿舎は、江戸城と同じ白金で作られた宿。
戦場に隣した場所であるため、強固な作りとなっている。
彼は玄関先の白い扉の前まで歩みを進めた。
そこには施錠となる画面が設置されている。
彼はその画面にそっと触れ、入室承認を済ます。
スッと、閉ざされていた白い扉が上へ吸い込まれるようにして開き、
それと同時に、整備室から賑やかな声が解き放たれたように耳に飛び込んできた。
「だから!
俺が先だっての!」
「長いでしょ?
私のほうが早く終わる」
「理屈になってんねぇだろうが!」
「効率化って知ってる?」
「えっと…
じ、じゃあ、菊ちゃんから……」
「ち、ちょっと爺さん!」
六城、菊、榊の声が聞こえてきた。
また喧嘩をしているのかと嘆息をつき、その後に失笑し、
彼は整備室へ歩みを進めた。
すっと扉が開くと、予想どうり。
六城、菊、榊の姿があった。
「あ~畜生!
話通じねぇ……あっ!」
六城がこちらを振り返り、微笑んだ。
「よう!桃太郎
いいところにきたな!
きいてくれよ、なぁ~」
「謁見お疲れ、桃太郎
それと、この猿の話は聞いたらダメ」
「猿はお前だろうがぁ!」
「頭の中身の話をしているの、
それと、うるさい」
「くっそ、うぜぇえ!」
予想していたような展開に、あきれるような表情をしながら、桃太郎は訳を訊ねた。
「落ち着け。
今度はまた何があって喧嘩してんだ?」
すると、それを見ていた榊がその問いを返答する。
「いやなぁ、
菊ちゃんの臓腑機の検査のほうが早く終わるから、そっちを先に見ようとしたんだけど
六城君が納得いかないようでね」
「先にやってたのは俺なんだぜ?
俺が付けてもらうのが先なのは当たり前じゃねぇか」
「すぐ終わるのに、
その人を待たせるなんて合理的とはいえないでしょ?
だから猿といわれるの」
「だから猿はおm」
「私は中身の話をしている」
「うがぁあああ、うぜぇぇええ!」
やれやれといった様子で、榊は助け舟を求めるような視線を桃太郎へ送る。
それをみて、彼はため息をつき、後頭部へ手をやりながら言った。
「はぁ…。
しかたねぇな。
菊。
六城に譲ってやれ」
「えっ?」
「っっしゃあ!」
喜ぶ六城をよそに、菊は意外そうな表情を桃太郎へむけた。
それと同時に、彼は不敵な笑みを作る。
「それともなんだ?
お前が[物資運び]やるか?
……なぁ、六城」
「あ……」
「六城。
先にやるといい、私は何時までも待っててあげる」
手のひらを返したように、菊は陣取っていた席を明け渡した。
一方、六城は喜びの姿勢のまま固まってしまった。
「いやぁ、たすかったよ桃太郎。
さすが、リーダーと呼ばれることあるなぁ」
「ジジイ…。
いい加減叱ることを覚えたらどうなんだ?」
「ん~、
でも別に怒ることでもないじゃないか?」
「そこが甘いんだよ、親父の立場なら、俺を叱るくらいしろよな」
すると、榊はどこか遠いところを見るようにして言う。
「親父…かぁ…。
あのころはお父さんなんてよんでたのになぁ……」
「「お父さん!?」」
「お前らはそこに反応すんな」
そんなやり取りを終え、桃太郎は三人に尋ねた。
「そういえば…。
梨乃はどうしたんだ?」
「梨乃?
あぁ、たぶん訓練場で射撃演習してるんじゃないか?」
六城が思い出したように言った。
「そうか。
ありがとな、後で物資は届くと思うから受け取っておいてくれ」
「あ!ちょっ!」
そう口走ったかと思えば、桃太郎は整備室を後にしていた。
三〇八区担当防衛兵士宿舎別棟 訓練室―弐番
パァン!
銃口から解き放たれた弾丸が空を切り、
あらかじめ用意された直線のレール上を
滑るように飛んでゆく。
的が迫り、その中心を貫く。
愛機から顔を離し、目標を確認する。
「……んー」
彼女は、曇った表情でその先に位置する的を見る。
「もう少し右を狙ったはずだった……だろ?」
「う、うわっ!?」
突如声をかけられ、持っていた[燕]を危うく落としかける。
「あ、危なかったぁ……。
い、いたのなら言ってよ桃太郎!」
「一応扉は叩いたんだがな…」
「え?そなの?
と言うか、帰ってたんだね」
すると、先ほどまで曇らせていた表情が嘘だったかのように、
にっこり微笑んだ。
「おかえり!桃太郎!」
「あぁ。
それより、防衛の後だってのに、
訓練とは感心だな」
すると、彼女は首を横に振った。
「ううん。
私、部隊では一番下だし、
今回だって……その……
あまり援護出来なかったから……」
「何言ってんだ、
今回の殲滅数はお前が一番多いんだぞ?」
「でも…それはみんな上手く誘い込んでくれたからで……」
「まあ、確かにそうかもしれないが」
桃太郎は、梨乃の両肩にその強固な義手を載せた
「これは個々の戦いじゃない。
部隊全員の戦いだ。
だから、誰がとか考えるな。
……いいな?」
「う、うん!」
返事を聞くと、彼は右の義手が彼女の頭に載せた。
「よし、いい子だ」
そう言って頭を撫でる。
[え、あっ、えっ、あ、あうう……」
すると、彼女は動揺したように目を泳がせながら
頬を赤くして俯いてしまった。
「それじゃあ、そろそろ夕餉の時間だし……
ってどうかしたか?」
「…そういうところ、ずるい……」
上目遣いで頬を高揚させながら、彼女は桃太郎を睨んだ。
「ずるい?
えーっと……俺が?」
「もういいもん!」
「…お、怒ってる?」
[燕]を銃架へかけ、そのまま訓練場から出ようとする。
しかし、後ろから桃太郎が通信機で通信をとる声が聞こえた。
通信先―――防衛府監視堂 六班
「桃太郎一団 深紅・一番 桃太郎。
応答を。
……はい……了解しました」
そしてすぐ、部隊全体の通信が入る。
{桃太郎より部隊全員に告ぐ―――
二○刻より中央室にて[鬼]の襲撃に対する防衛作戦を立てる。
以上}
通信を終えたその時から、空気が張り詰めた。
「え?
ど、どういうこと?」
梨乃は桃太郎の方へ視線をやる。
桃太郎は、緊迫した声音で返した。
「[鬼]の隊が迫ってきてる。
残念ながら、夕餉はもう少し後になりそうだ。
…クソ、二日前に撃退したばっかだってのによ」
歯噛みしながら、彼は厳しい表情を作った。
「とにかく、中央室に集合だ。
行くぞ」
「うん、
分かった」
軽量化されているはずの義脚が、鉄の塊のように重いのを感じながら、
彼は中央室へと向かった
( *¯ㅿ¯*)