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第1話『元お嬢様を家に入れることになったのだが』

ある日の夜、阿見達也は、謎の金髪美女に絡まれてしまう。だが、その女は実は、花ノ宮グループ総帥の一人娘・花ノ宮麗華だった。

「ちょっと、そこの貴方」

 バイトから帰宅する途中、俺は突如、背後から聞こえた声に呼び止められた。こんな夜に、しかも人通りの少ない住宅街で声を掛けるなんて、いかにも怪しい。俺は警戒しながら、後ろを振り向いた。

 そこには金髪を垂らした女が立っていた。年は俺と同い年か。街灯の明かりから見える女の髪はボサボサに乱れており、顔も薄汚れていた。着ているワンピースも羽織っているカーディガンもボロボロになって汚れており、思わず鼻をつまみたくなる様な異臭が放たれている事から、恐らくホームレスだろう。しかし、彼女が俺を見つめる眼差しは、強い意志が感じられた。

 俺は、帰りに寄ったスーパーの袋を思わず握りしめた。さすがに袋の中の材料を奪われることはないだろうが、そんなことを考えている間に、女は大声で俺を指差していった。

「命令よ、このわたくしを家に入れなさい!」

 指をビシッと差して命令してきたので、思わず「は?」と口を漏らしてしまった。

「あの、もしかして俺ですか? 多分、人違いだと思いますけど……」

「いえ、あなたに言っているのですわ」

 やっぱり、俺のことかよ。それにしても、こんな金髪の変なホームレスが俺に一体、何の用なんだよ。俺は女に質問をすることにした。

「あの……おっしゃっている意味がよく分からないのですけど」

「そのままの意味ですわ。あと、今から私の為に夕食も用意しなさい。メニューは、そうですわね……まず前菜はエスカルゴの殻焼きにしなさい。スープはキャビア入りのボルチーニスープ、あとメインディッシュには仔牛とフォアグラのロッシーニを……」

 おいおい、何だよ。コイツ、通りすがりの高校生に、いきなり無茶な要求を命令しやがって。それに何だよ、ロッシーニって? この人、頭がおかしいんじゃないのか? コイツ、ちょっと病院に連れて行った方が……。

「さっきから何ですか? その不審な者を見る様な目は。まさか、元従僕の分際で、この私を馬鹿しているというのですか?」

 元従僕の分際だと? あまりにも生意気なことを言われたので、俺はカチンときた。

「おい、さっきから黙って聞いてれば、何なんだよ、その態度は! そもそも、キャビアやフォアグラなんて無いし、エスカルゴの殻焼きやら、ボルチーニスープなんて作れる訳ねぇだろ!! それと、出会い頭に勝手に人を従僕にするんじゃねぇ!」

「まぁ! かつての主人に対して、何と無礼な口の利き方! しかも、キャビアやフォアグラも用意出来ないなんて!!」

「そっちこそ、人に頼むんだったら、せめて頭を下げることを覚えろよな! 第一、そんなボロボロの格好で命令したってな、誰からも相手にされねぇぞ!」

「キ―――ッ!! 元従僕の分際で、生意気な口をベラベラと…叩い…て……」

 と、女が俺に反論する途中、突然ぐらりと体を崩し、そのまま地面に倒れた。

「おい、どうしたんだ?」

 俺は咄嗟に女に駆け寄り、彼女の背中を叩いた。すると、女の口から小さな声が聞こえた。

「た、食べ物……」

 食べ物? ってことは、コイツ、もしかして……

「腹が減っているのか」


 女は空腹のあまり、完全に動けなくなってしまっていたので、仕方なく、俺が住んでいる笹凪ささなぎアパートまで、女を背負って帰った。階段で二階に上がり、201と書かれた自宅のドアを開けた。俺の自宅は1Kで、部屋の中は、玄関から入って左手に流し台とガスコンロ一台、床は部屋一面、フローリングであり、奥には洗面台と風呂場がある。ちなみに、家賃は月 三万円である。

 俺は、女を自宅に入れた後、彼女を椅子に座らせて、レジ袋からピーナッツクリーム入りの菓子パンを取り出して、女に渡した。

「先に、それを食べてな」

 女は菓子パンを受け取るが、それを眼前に、しかめっ面をしている。

「どうした? もしかして、中のピーナッツが苦手なのか?」

「そうではなくて……これは、どうやって召し上がると言うのですの?」

「あぁ、それ? 袋を開けて中に入ったパンを食べるんだよ。袋の上の方にギザギザがあるだろ。そこを手で破れば良い」

 そう言うと、すぐさま女は袋を縦に破って、そのままパンを口にした。やっぱり、余程お腹を空かせていたんだな。

 そして、パンを食べ終えた女は、いつもの調子に戻って、俺に命令した。

「それで、ディナーを頂きたいのですけど」

「それよりも先に、風呂に入ったらどうだ? お前、汚いし、臭いもキツイからさ」

そう言うと、女はハッと目を丸くした後、顔を赤らめながら、若干ふくれっ面になって、そっぽを向いた。その表情を見て、思わず可愛らしさを感じてしまった。

「でも、着替えはどうするのですの?」

「風呂場の近くに洗濯機がある。そこに服や下着を入れるんだ。そしたら、『お急ぎコース』というボタンを押すだけで良い。三十分で乾燥まで出来るからさ」

 そう言うと、女は小さく頷き、そのまま風呂場に向かった。残った俺は夕食を作り始めた。今晩はそうだな……スパニッシュオムレツにするか。

 材料を切る最中、風呂場から聞こえるシャワーの音が気になった。あんな身なりだけど、俺と同い年くらいの女の子だからなぁ、きっと風呂場の方では一糸まとわぬ姿で気持ち良くお湯を浴びて……って、ダメだダメだ。料理の最中にいかがわしいことを考えちゃいけない! あと、そうだ。せっかくだし、味噌汁も作ってやるか。


夕食の準備を終えて、俺が そして、夕食の支度を終えた頃、女が風呂から出て来た。その瞬間、俺は目を奪われた。

西洋人の血を引いているであろう彼女の髪は美しいウェーブが流れ、顔は芸術品の様に美しく、白い肌も漆器の様にきめ細やかだった。そして、特に俺を見つめる瞳は、いかにも人を惹き付けてやまないものがあった。

さっきまで、あんな身なりだったのに、これ程までに美しかったのか。改めて、コイツ、いや彼女が何者なのかが、気になった。

 彼女は、さっき食べたパンで腹の具合に余裕が出たのか、見惚れる俺を無視して、部屋を見まわした。

「それにしても貴方、随分と狭い家に住んでいますわね」

「失礼だな。これでも家具家電付きで、家賃は三万円なんだぞ!」

 せっかく綺麗になったのに、高圧的な態度は相変わらずだった。おかげで、我を取り戻したが、さっきまで高揚していた気分は、すっかり冷めてしまった。

「まぁいいですわ。さっさと前菜を用意しなさい」

「前菜はないけど、メインディッシュのスパニッシュオムレツならあるよ」

「スープもありませんの?」

「味噌汁ならあるよ」

 俺がそう言って、一緒に座ろうとしたら、

「ちょっとあなた、ナイフがありませんわよ」

 先に椅子に座った女が早速、文句を言ってきた。

「あっ、ナイフ? 悪いな、ナイフは家に置いてなくって……」

「何ですって?」

「生憎、家にはフォークとスプーンしかないんだ。後は箸を使ってくれる? 俺の実家じゃ、ナイフなんてステーキか、大きなハンバーグの時ぐらいしか使わないんだ」

そう言うと、女は反論する事を止めたが、ムッとした顔をしたまま、フォークを手に取り、器用にオムレツを左端から一口大に切り分けて、食べ始めた。へぇ、マナーはきちんとしているんだな。少しずつ口まで運ぶ仕草が上品で美しい。箸の使い方も完璧で、ワカメの味噌汁を飲む姿も絵になる程だった。


「まぁ、シェフには及びませんでしたけど、貴方にしては、なかなかの出来でしたわね」

 食事を終えて、女は満足した笑みを浮かべながら、横に置いたティッシュでサッと口を拭いた。文句を言われるかと思ったけど、意外にも褒めてもらえて、少し嬉しい。

「あ、ありがとう……お口に合った様で何よりだよ」

「次は、ナイフも用意してくれると良いのですけど」

 前言撤回、コイツは余計な一言を言わずにはいられないのか。

「ところであなた、普段から料理をしているの?」

「そうだよ。一人暮らしをしているから、家事はそれなりに出来るんだ」

「そうでしたの。それなら、今からでもまた私の従僕として、やっていけそうですわね」

「おいおいやめろよ。そんな従僕という呼び方はさ。お前みたいな我侭女にこき使われていたら、身が持たないぜ。それに、どうせ従僕になるなら、もっとお淑やかなお嬢様の方が良いぜ」

「相変わらず、生意気な口を利きますわね。それと、かつての主人をお前と呼ぶのは、お止めなさい」

「んな事言われても、俺はお前に仕えた記憶は無いって、何度も言ってるだろ。まだ、名前も知らないんだし。せめてお前の名前くらい教えてくれよ」

 すると、女の眉はピクッと動いた。

「貴方、まさか主人であるこの私の名前をお忘れになったとでもいうのですの?」

 女は手の甲を頬に当て、顔を青ざめて言った。

「あぁ、全く知らねぇよ。というか俺達、初対面だろ」

 そう言うと、女は深いため息を付いた後、腰に手を当てて言った。

「仕方ありませんわね。では、花ノ宮グループ総裁の娘にして、花ノ宮家現当主・花ノ宮麗華はなのみや れいかと言えば、思い出せるはずですわよ」

花ノ宮家……? 俺はその名前を繰り返し呟いた。そして数秒後、花ノ宮グループのニュースを思い出した俺は、「え―――――っ?!」と、驚愕の声を漏らした。


 花ノ宮グループは、かつてメディアにも取り上げられたことがある程の有名な企業群だった。

 十数本の上場企業を持っており、全盛期は長者番付にも総帥、つまり麗華の父親の名前が載った程だった。

 このグループの創業者一族である花ノ宮家は、日本でも有数の資産家であり、この一帯を仕切る程の権力を有し、雑誌やテレビ番組にも取り上げられたことがあった。

 当時テレビで花ノ宮家のことを見ていた俺は、同じ町に住んでいるのはずなのに、まるで雲の上の様な存在だと思っていた。

 しかし、そんな繁栄も長くは続かず、花ノ宮グループは不景気の煽りを受けて、徐々に経営が傾き、事業規模は縮小。再起の為に始めた事業も失敗して半年前に倒産。多額の借金を抱え、会社は全て解体され、家、財産なども差し押さえられたそうだ。その直後、花ノ宮家の当主である総帥も心労による心疾患で、この世を去った。

 倒産のニュースをテレビで知った時は高校生の俺も驚いたし、敏腕実業家の死を惜しむ人もいたが、すぐに忘れ去られていったのであった。

 まさか、こんなボロボロの身なりをした女が花ノ宮グループの総帥の娘だなんて……。

「でも、ちょっと、待てよ? 花ノ宮家って、会社が倒産したと同時に没落したんじゃ?」

「倒産したからと言って、没落まではいませんわよ」

「終わっていないって、どういうことだよ?」

 すると、麗華は人差し指を天井に差し、瞳に情熱的な炎を灯しながら、堂々と言った。

「何故なら、この私が今から花ノ宮家を復興させるからですわ!」

 かなり、強気な発言だった。先程まで、空腹で倒れていた人間の台詞とは思えなかった。

「じゃあ、その当主様が何で通りすがりの俺に話しかけたんだ?」

「あら? だってあなた、今まで私の下に仕えていたでしょ。あれだけ盛大なリアクションをしたのですから、ようやく思い出したでしょ。それに、わざわざ家に招いて夕食も用意してくれましたし」

「あれは、お前の家を聴いて驚いただけであって、家に入れたのもお前が空腹で倒れたからだ。俺はお前に仕えていないって!」

「まぁ! ここまで言っても思い出せないなんて、あなたもしかして記憶喪失に……?」

「違うよ! お前がさっきから人違いしているだけだろ」

「まぁ、この私が人違いをしていると言うのですって?」

「そもそも、俺の名前は阿見達也あみ たつや。十六歳。高校二年生だ。去年の四月からこのアパートに住んでるんだ」

 すると、麗華の目は点になり、数秒間フリーズしてしまった。しかし、すぐさま我に返り、

「そういうことでしたの! かつての従僕とそっくりな上に、冴えない表情でしたから、すっかり騙されてしまいましたわ!」

「お前が勘違いをしただけだろ。ところで、お前は何でこんな所にいたんだ?」

 すると、麗華は、少しバツの悪そうな顔をするも、ここに至るまでの経緯を話し始めた。

「……最初は、仕事をしながら、立て直そうと思いましたけれど、どの店もこの私を雇ってくれないのですわ! それでも頑張って探し続けて、やっと住み込みで働ける店を見つけたのですけど、誰もこの私に敬意を払いませんし、せっかく私がこなした仕事の成果を認めようともせず、挙句の果てに、追い出したのですわよ!」

「つまり、家が倒産してからバイトを始めようと思ったけど、なかなか採用されなくて、やっとありつけた住み込みのバイトでも上手くいかず、結局追い出されちゃったって訳か」

「ちょっと! それだと、まるで私が悪いみたいな言い方ではありませんこと?!」

 いや、完全にお前が悪いと言ったんだ。初対面で庶民である俺にいきなり家に入れろとか、高級ディナーを作れとか、要求して来たんだからな。あんな態度じゃ、嫌われるのも無理はねぇよ。今までお嬢様育ちだったから、かなり世間知らずになっているのだろうけど。

「でも、待てよ? じゃあ、住み込み先にいなかった時は、食べ物とか寝泊まりはどうしてたんだ? 今まで住んでいた家や財産は全部差し押さえられたんだろ?」

 そう言うと、麗華は、うっ……と、返答に詰まり、そっぽを向いてしまった。

「まさかとは思うけど、他の人にも俺みたいに命令してはいないよな」

 すると、元お嬢様はトリックを見破られた犯人の様に、目を見開いて言った。正解かよ。だが、麗華も負けじと言い返して来た。

「でも、家に招いたのはあなたが初めてですわよ!」

「ということは、今までは公園とかで夜露を凌いだり、野良犬と食べ物を取り合ったりした事もあったのか?」

「何故、そこまで分かるのですか?! あなた、もしかして超能力者?」

 麗華は俺を睨む様な目で見たが、これくらい少し考えれば分かる事である。

「それにしても、こんな夜によくもまぁ、一人で知らない男に声を掛けられるよな。変な人に絡まれたりしなかったか?」

「最初の頃は少しはね。でも、いつまでも怯えていたって仕方ありませんし」

「勇敢だな」

「ですが、近頃は皆、この私を私を見た途端に、恐れをなして逃げ出したり、警察に通報しようとしたりするんですのよ! 酷いとは思いませんこと?」

 いや、これは自然な反応だと思うぞ! だって、あの身なりだし、臭いし、いきなり人に命令するし、そんなことしたら、間違いなく不審者扱いされて、速攻で逃げ出すか、警察に通報されているぞ!

「でも、それはもう済んだ事ですわ。人違いだったとはいえ、あなたもある程度の知性と家事の技能もそれなりにある様ですし。これなら私の従僕として使えますわね」

 ん? この人は、今何を言ったんだ? なんか、俺を従僕にする様なことを言っていたんだけど。

「あ、あの……失礼ですけど、麗華さん。まさか、俺を……」

「あら? だって先程あなた、どうせ仕えるなら、お淑やかなお嬢様の方が良いと、おっしゃっていましたわよね? だったら、ちょうど良い機会ですわ。今からこの私が貴方を従僕にして差し上げますわ。光栄に思いなさい、この私に仕えることを」

 麗華は、フフンと笑いながら言ったが俺は、

「無理です」

 速攻で断った。

「ちょっと、それはどういうことですの?! この私がせっかく貴方をお気に召したというのに、私に仕える事のどこが不満だと、おっしゃるというのですの?!」

「当たり前だ! タダですら、勉強とバイトで忙しいっていうのに、お前の従僕になれだって? ふざけんな! 第一、お前にこき使われていたら、俺の身が持たねぇよ!」

「な、何ですって?! 庶民の分際で、この私に逆らう気?」

「そもそも、お前だって家もビルも財産も全部取られて、仕事も住む所もお金も無いんだろ。そういう奴は世間じゃ、ホームレスって言うんだ! 今までは、周りからちやほやされたのかもしれないけど、そんな奴はもういないんだ。今のお前は、もうお嬢様じゃないんだよ!!」

 酷い言い方ではあるが、これだけ言えば、本人も怒って家を出て行くと思った。ところが、

「………うっ……ひっく、ひっく……」

 あっ、ヤベェ。ちょっと言い過ぎたか。

「あっ……いや、あの、ちょっと待てよ。こんな所で泣かれたら……」

 だが、そうも言っている間に麗華の目は、みるみると涙で滲んでいき、

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああん!」

 麗華は突如子供の様に泣きじゃくった。

「そんなのいやだよおおおお! 今まで、みんなわたしの言うこと聴いてくれてたのにいいいい!! 家が潰れた途端に見捨てるなんて、ひどいよおおおおおおっ!!」

 そう言うと、今度は俺の胸をポカポカと叩き始めた。もう、ここまで来たら駄々っ子顔負けじゃねぇかよ!

「お願いだから、助けてよお! わたしの従僕になってよお! 見捨てないでよお!」

こんな目に遭ったのは、中学生以来だ。あの出来事は今でもトラウマになっていて、この状況には未だに慣れない。

「みんなからちやほやされたいよお! 家が潰れるのはいやだよお! 見捨てられたくないよお! 貧乏な生活なんて送りたくないよお! 路頭に迷うのはいやだよお! 野宿はいやだよお! いつまでもお嬢様で、いたいよお! こんな所で終わるのはいやだよお! うわあああああん!」

 マズイぞ……このまま、泣き喚いていたら、隣の人か大家さんがやって来てしまう。こんな所を人に見られたら、俺がこの子を泣かせているみたいじゃないか。

「分かった、分かった。俺が悪かったよ。じゃあ、しばらくの間は、ここに住まわせてやるから、こんな所で泣くのは止めてくれ」

 観念した俺がそう言うと、麗華はピタリと泣き止んだ。そして、ニヤリと笑みを浮かべた。

「フフフ、さすがは私が見込んだだけの男ではありますわね」

 と、いつもの調子を取り戻し、俺に指を差して命令した。

「では、阿見達也。今から私の従僕として花ノ宮家の復興に協力しなさい!」

「いや、さすがに従僕になるのは……」

 すると、麗華の目が再び涙で滲みそうになった。

「分かりました。これからよろしくお願いします……」

 俺は、遂に花ノ宮麗華の前に屈服してしまった。

 ううう……高校に入ったら、誰にも邪魔されない、自由で楽しい生活を送ると決めていたのに。こんな事なら、最初の時点で、すぐさま警察に通報するか、救急車を呼べば良かった。つくづく、自分のお人好しぶりを恨みたくなる。でも、こうなった以上、この女に従うしかなさそうだ。

 かくして、俺はこの元お嬢様の従僕として彼女と暮らす事になった。これから俺の生活は一体どうなるのか。先行きが不安になるばかりだった。

遂に、始めました。稚拙な表現もあるかと思われますが、よろしくお願いします。

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