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ヴァーサ・クロニクル  作者: 水無森 夕
1/1

1-1 魔術師に非ざる者

 市街地の喧騒から外れた郊外にある、瀟洒な作りの赤い屋根の屋敷が名家ヴァーサ家である。その立派な外見は、とはいえども周囲に立ち並ぶ堂々たる屋敷たちに比べるとこじんまりとした印象を受けなくもない。敷地のほとんどが庭園で、一家の住む屋敷はぽつんと真ん中に立っている具合である。ただし壁面に描かれた家紋と、細部にまで凝らされた不気味なほど美しい意匠とが、あのヴァーサの家であることを物語っている。その美しい門を、庭を、家を、そしてヴァーサという名前を思い描きながら、道行く人は見惚れるようにして去っていく。といっても、それは通りの方から見える表の顔である。裏手から見える屋敷の姿はその表から見える美しい外見とは不釣り合いなほど気味悪く、人々の好奇心の対象となっていた。人々は口々に噂する。あるもの曰くヴァーサ家は魔術師の恥さらしだと、あるもの曰く、彼らの行っていることは神への冒涜だ、と。

 尤も、そんなことは今となって関係がない。どうせ五歳のときに家から捨てられた身である――ヴァーサ家時代の記憶も、いまではどこかピントのぶれた映写機のように曖昧で漠然としていて、そして今では忌々しいものでしかない。


 義母サアラの葬式明けの翌日、相変わらず朝の光はまぶしかった。馬車は道なりに進み、レンガ敷の舗装路を進んでいく。いよいよあの門が近づいてきた。記憶の中では自分の背丈より何十倍も大きかったあの門も、今見てみると身長にすこし加えた程度の高さしかない。しかし門自体が放つ独特の波動、子供の頃感じていた息苦しさは健在だった。門が近づくにつれてクラースの額には汗が浮かび、心臓は脈を打つ。今日は妹――自分を捨ててまで父と母が選んだ正式なヴァーサ家の後継にして、歴代随一の資質を持つという魔女――との顔合わせだった。

 馬車が家の前で停まり、うやうやしく「屋敷つきの」御者が扉を開けるとクラースを促した。クラースは頷くと降り立ち、青く鈍く光る鉄製の門が開くのを待った。「お帰りなさいませ、クラース様。お待ちしておりました」とどこからか頭のなかに直接語りかける声がして、ゆっくりと門がひとりでに開く。クラースはよれた襟を正して、つばを飲み込むと、そこへ足を踏み入れた。おおよそ屋敷には似つかわしくない、みすぼらしい服装だった。

   玄関口へと続く舗装路を脇道へ逸れて、クラースは花壇の方へ近づいた。かがみこんで花びらを覗き込む。紫からピンク、黄色へのグラデーション。それが5秒程度の感覚をあけて繰り広げられている。そう、ここではすべてが造り物だった、とクラースはため息を付いて、かつてヴァーサの家に住んでいた頃に思いをはせた。記憶の中で、庭園はまるで造り物のようにそこにあった。実際、そこにある全ては造り物だった。そのまま根をちぎるように引き抜き、指で花弁を鳴らすと、心地よい鈴のような音が鳴り響いた。よく手入れされているように見える芝も、そこにある花々も、樹木も、噴水ですら紛い物――すべて魔術によって作られた「造形品」でしかない。クラースにはそれが堪らなく不愉快に感じられた。なぜなら――。


「形を維持するためだけに、魔術を走らせ贄にする。上品とは言えない趣味ですよね」


 いかにもお父様のやりそうなことですが、と、頭上からやや少し低い、砂糖菓子のように甘い声がした。はっと我に返り俯いていた顔をあげると、そこには木陰に潜むように少女が立っていた。長い金髪を腰のあたりまでおろし、ガラスのように透き通る白い肌をした少女。その違和感を覚えるほど整った顔に、青く澄んだ色素の薄い瞳。館に溶け込むような、フリルが彩る黒いワンピースに身を包み、胸元に赤いベロア生地のリボンを締めている。少女は俯きながら少年の胸中を伺うように、どこか寂しそうにそうつぶやいた。


「お帰りなさい、兄さま」

 ――とお呼びしてもいいでしょうか、と、どこか所在なさげにつぶやく少女。

 それが義理の妹、セシリア=ヴァーサとの初めての邂逅だった。


 *


 魔術を走らせるためには媒体となる回路が必要だ。それは電気的なものでも有機的なものでも形を問うことがない。機械と呼ばれる魔術を動力としない機構から、人間の脳まであらゆる物体を媒体にして魔術は走る。魔術師とは、ある特定の媒体へ接続し、そこへ魔術を注入インジェクトすることができる存在である。

 ヴァーサ家は代々連なる魔術師の家系で、その家名を知らぬものは国内には存在しない。当然のごとく一族は長男として生まれたクラースに対しその資質へ並々ならぬ期待を寄せていた。生後間もなくして術者としての不適合が明らかになったのは、両親にとっては凶報だったに違いない。それから間もなくして、クラースは一族から捨てられた。この世界では極めて珍しい、術者としての適性が全くない存在である――養子に出された先で、クラースは自分が紛れもない〈出来損ない〉という事実を嫌というほど思い知らされた。成長していく兄弟たちが着実に術者としての資質を発揮していくなかで、自分だけはただ一人、何でもない存在だった。

  やがて17になったころには、クラースははっきりと自分のおかれている立場が理解できていた。自分がかのリゼレイユ独立地帯の統治者のひとつ、ヴァーサ家の子孫にして、かの奇才レイメイ・ヴァーサの一人息子であったと聞いたとき、クラースは驚きこそすれ、落胆はしなかった。この世界にとって自分は無そのもの、ましてやあのヴァーサの子供とあれば一家の恥である。裏で殺されても文句は言えない身、追放されてでも生かしてもらえただけマシだというものだ。

 

 そんなことを思いながらクラースはメイドに通されるまま屋敷の廊下を抜け、食卓へついた。クラースは緊張していた。実の父親との10年ぶりの対面が、食事会という形で実現しようとしている。いったいどうして父親は今更になって呼び出すような真似をしたのだろう。考えてみれば、というよりも、考えてみるまでもなく不思議なことだった。口止めだろうか? それとも暗殺? まさか実験材? それはない。だって僕は出来損ないだから。じゃあ何故いまさら呼び戻したのだろう。復縁かな、とあるはずのない期待をする、と、そこまで考えてみて、クラースは項垂れた。未練たらしい自分が嫌だった。そんなあるはずのない空虚な妄想にすがって、馬鹿みたいに馬車に乗ってやってきたはいいものの、これでは本物の馬鹿みたいじゃないか。いずれにせよ、とクラースは水を口に含んだ。相手の出方を見よう。今はそうするしかない。そう自分に言い聞かせたが、緊張は止まらない。口の中がからからに乾いていた。食べる前からすべてを戻しそうだった。

 木製のチェアの上に腰を下ろした瞬間、不思議な事が起こった。それまでの精神のざわめきが止まって、小川のせせらぎにつつまれたように穏やかな心持ちがしてきたのだ。ただの木材なのに、まるで体全体が毛布のように包み込まれているような錯覚。ふと座っている椅子の側面を見ると、木目の中に意匠を凝らして不可思議な文様が描かれているのが分かった。見たことのない文字のような何か。そして感づいた。これは魔術だ。しかしすくなくともリゼレイユ周辺国の文字とはだいぶ形が違うように見える。きっと東の果ての術式のひとつだろうと、クラースは中等教育時代にうけた教養の授業を記憶から呼び戻して推理した。しばらくしてレイメイとセシリアがそれぞれ席についたころには、すっかりクラースの気分は元以上の落ち着きを取り戻していた。

「クラース」レイメイの声がした。給仕がそっと下がると、レイメイはふたたび口を開いた。「緊張は解けたかね。どうだ、私のコレクションは」

「ありがとうございます。お陰で落ち着きました。レイメイさん」

「他人行儀だな。ふん、まあいい。我が子ながら可愛げのないところも私に似てしまったか」

 すこしエリート気取りの嫌味がかった鼻をならしながら、しかし落ち着いた笑みを浮かべると、無言で顎で酒を促した。レイメイ=ヴァーサは年の頃は五十過ぎ、顔は褐色で、初老の皺がいくつか頬を走り、子供の頃に「事故」で付けたという眉間に深く刻まれた傷跡が目立つ。出会った頃には見たことのない白髪に驚きつつ、クラースはその顔をじっと見ていた。鷲鼻は昔から、鼻の頭には眼鏡がかけてある。片側は光学の、片側は魔術駆動の独特の眼鏡はそれぞれ異なる屈折率を有しており、独特の外見から通りを歩くと誰しもがレイメイだと気づく。

 注がれたやや薄黄味がかった液体にいくらか不安感をいだきつつも、恐る恐る口に含む。「うまい」と思わず口にした。「こんなの家では飲んだことがない。なんだろう、これ……?」

蜂蜜酒ミードだ」と屋敷の主は答えた。「ミリュー産のオレンジの蜂蜜に、ヒヨロギをほんのわずかだけ。魔草がわずかに香るだろう。漂う香りは花のごとく、弾ける泡はリュートを彷彿とさせる。そう思わんかね」

「えっ、これお酒ですか?」

「ふふっ」とセシリアが笑った。「大丈夫ですよ、お父様の子でしょう」

「うーん……」

「随分としつけの立派なご家庭で育ったんですね」

「いやあ、多分お金がなかっただけだと思うけどね……」

「まあ、ナイフとフォークを持つ手は逆ですしね」

「見た目にそぐわず手厳しいね、君は」

 クラースは羞恥に悶えながらそう返すのがやっとだった。


 食事が半分を過ぎた頃、レイメイはふと席を立ち、「こっちへ来い」とクラースを促した。そこはベランダだった。

「セシリアをしばらく頼む」

「どうしたんですか、いきなり」

「大した話じゃない。あいつはもうしばらく友達もいない。私にも心を開かない。ずっと一人の身だ、彼女の望む、望まないにかかわらず、な」

「別に寂しそうには見えなかったけどな……というか、あなたの子供でしょうに」

「いいや、彼女は――セシリア・ヴァーサは、実の私の子供ではない」

 クラースに動揺が走る。それを察して、レイメイは続けた。

「聞かされていなかったのか、まあいいだろう」

 突然の告白に、不意を突かれて黙り込む。必死に言葉を探すクラースを尻目に、レイメイはわざとらしく咳込んでからこう続けた。

「しばらくここに残りなさい。サアラのこともあるだろうし、実のところ、向こうにも連絡してあるのだ」

「お前だけが頼りだ」とヴァーサは言い残して、ベランダから出て行った。

「セシリア、こいつはしばらくここに残ることになっている」とだしぬけに切り出したのはレイメイだった。「お前としばらく行動を共にする。有事の際にはこいつを使え」

「しかしお父様、兄様はたしか……」

「そうですよ、僕に魔術師としての適性はない」

 レイメイは鼻で笑った。「魔術師としての適性? そんなものは鼻から期待してない」

 それからセシリアに向き直って、こう続けた。

「ちょっと待ってください! 直接繋げ、と?」

 レイメイは無言で酒を飲んで、こう続けた。「心配するな、こいつは術の一つも使えないポンコツだ。ヴァーサ家お墨付きのな。直接的なインジェクションとはいえ、お前と彼とは対等足りえない」

  「そうですけど……そうですけど! いくら兄様とは言えそれは」

 クラースは何の話をしているのか熟考の末、授業で習った魔術の基本を思い出していた。

「つまり――僕と妹を直接繋いで、〈回路〉にする、と?」

 施術する側とされる側の関係性を、体液を媒介として直接的につなぐ。それが魔術師にとってどういうことを意味するか。古来は血の契を意味したそれは、現代では魔術師にとって禁忌にも等しい。そして男女間で行われる〈それ〉は些か別の意味合いを持つ。クラースは顔を赤くするのを止められなかった。

 咳ばらいをして、「お前には術者としての才能はなかったが」とおもむろにレイメイは告げた。「資源としての資質は有り余るほどにあった。有り余るほどにな」

 クラースはそのとき初めて顔を上げた。

「僕に、魔術を走らせる力があると?」

「そうだよ、皮肉なことに、な」

「それは嘘だ。適性試験でだって一度もそんな数値が出たことはない。買いかぶりだよ、レイメイさん」

 僕はそれを、この十数年で嫌というほど味わわされた。

「いいことを教えてやろう、クラース。間接的な魔術接続の技術というのは、実のところまだ解明されていないことが大きい。お前が受けた試験とやらも、どうせ術を受ける側の魔術防壁の計算を完全には考慮に入れていない。術者の能力を上回る防壁というのは存在する。まだ公には出ていない情報だが」

「そんなの初耳だ」

 教科書には書いていなかった。

「教科書には書いていなかった、とでも言いたそうな目をしているな? まあ無理もない。魔術防壁の概念自体は目新しいものではないが、その概念の定義自体が極めて曖昧な――ああ、忌々しい! 魔術はオカルトじゃないというのに、巷の連中ときたら――まあいい。魔術防壁の生成過程とその理論的研究は私の専門の研究分野だからな」

 魔術を走らせるだけの存在――それはヴァーサという魔術師の家系から逸脱した存在を意味していたのだとクラースは理解した。それからしばらくして、レイメイ・ヴァーサはさっと部屋を去った。セシリアがこちらを見てこくりと俯いたので、礼儀知らずの無知なクラースにも食事の終わりだとわかった。

 腰から腰を上げたクラースは、ぱちりと一回自らの頬を叩いた。正直なところ複雑な心境だった。自分が呼び出されたのは自分のためではない――。

「こっちが兄様のお部屋、だそうです」ふと我に返るとセシリアが俯いていた。「あの、兄様。ひとつお伺いしたいことがあるのですが」

「なに?」

「お義母さん――サアラさんのこと、残念です」

「なんだ、聞いてたのか。別に気にしてないよ」

「ヴァーサの分家の方でしたよね。非常に良い方だとはお父様から聞いておりました。まさかあんなむごい死に方をするなんて……」

「……ああ」

「すみません、口が過ぎました。私は隣の部屋で寝てますから、なにか御用があれば。失礼します」

「おやすみ」

「おやすみなさい」


 通された部屋は広々としていた。シックな赤い壁に包まれていて、落ち着いた倉庫を思わせる。人の生活している気配のない部屋だった。ベッドの脇に小さなデスクが置かれていて、そこに腰を下ろして黒皮の日記帳を開いて、今日あった出来事を一通り書き終えると、ベッドに寝静まった。


「ふう、疲れた。それにしても静かだな……」


 と、誰もいない部屋でひとりため息をつく。


 昨日の夜の葬式のことを思い出していた。義母のサアラの死。式は人の目に触れることなく、ひっそりと執り行われた。密葬だった。


 天井をぼんやりと見つめていたが、ふとトイレに行きたくなって部屋を出るとちょうど開けたところでばったりと妹のセシリアに出くわした。


「どうしたの? こんな夜中に、こんなところで」

「い、いえ。別に何でもないんですが……その、さっきはすみませんでした」

「ああ、別にいいんだよ」

「明日なんですけど、市場へ行きませんか?」

「市場?」

「ここから少し離れたところにあるんです。お父様から生活品などを買ってくるように、とことづけを。まだ勝手もわからないでしょうし、私もついていきますよ」

「ああ、そうか。それは助かるよ」

「では朝10時に、広間でお待ちしてます」

「わかった。おやすみ」

「おやすみなさいませ。お兄様」


 朝食を終えて、玄関前の広間に行くと、赤いドレスに身を包んだ妹がいた。昨日と相変わらずのよれよれの服を着た自分とは大違いだな、と苦笑しつつ、「おはよう」と声をかけると、こくんとうなずくセシリア。


「昨日はよく眠れましたか?」

「まあまあかな」答えると大きなあくびをした。「というか、久しぶりにこんな豪華な屋敷に来たからちょっと緊張したよ。片づけるのも一苦労しそうだ」

「ふふふ、もちろん自分たちではやりませんよ」

「まあ、そうだろうね」その時はじめてセシリアの笑顔を見た。苦笑で答えながら「じゃあ、行こうか」と先を促す。


「セシリアはヴァーサの家に来るまではどういう家に住んでたの?」

 馬車で揺られながら聞いてみた。

「わたしですか? そうですね……普通の家に住んでいましたよ」

「もともと住んでたのはこっち?」

「いいえ。私は……『向こう側』から来ました」

 その一言に息をのんだ。その言葉の意味するところを、少年は知っていた。それから無言が続いた後、街にさしかかるころになって、セシリアは少しためらいがちに頬に指をあててこういった。

「私は、売られてきたんです」

「えっ」

「それは……比喩的な意味で?」

「いいえ。そのままの意味です。売られてきたんです。うちは貧乏で、私は末っ子でしたから」

「そんな……」

「お兄様走らないでしょうけど、『向こう側』の貧困層というのは悲惨なんですよ。日々の生活の糧に子供を売るなんて言うのは日常茶飯事です」

 その辺で止めてください、と言いながら、セシリアは持っていたポーチをただす。

 無表情でいいのけるセシリアの横顔に、少し恐怖を感じながら、躊躇いがちに聞いてみた。

「お父さんと、お母さんを、恨んでないの?」

「恨みましたよ、昔は」

「今は?」

「どうでしょうか。もうとっくに昔の話ですから忘れてしまいました……さあ、行きましょう、お兄様。ふふっ、市場は広いですからいなくならないようにしてくださいね」


 ヴァーサ家から東北へ20キロほど馬車を進ませたところに、クローク・マーケットはあった。


「ここはリゼレイユ独立地帯の最大の貿易拠点でもあるんですよ。北のセレーナ国、東のヴァルティア帝国、西のセレーナ国、そして南のヴィリア国からの貿易路が十字に交差する地点、それがここクローク・マーケットです」

「うわぁ……すごい、人だらけ」

「お兄様は確かリゼレイユ南部のほうからいらしたんでしたよね、あまりこの辺にはいらっしゃらないんですか?」

「ああ。こんなに賑わってるとはね」

 往来を行く人々を眺めながら呆気にとられていると、どこからともなく磯の香りがした。

「いらっしゃいいらっしゃい、とれたてのゲシが入ってるよ。今なら20ネモ。、買っていかないか」

 見たことのない深い紫色の魚。

 すなわち、異国の食材。

「ヴィリア近郊に住んでたお兄様のお口にはあまり合いませんかもよ。住んでたの、リーリア海に隣接したヴィリアの近くでしょう。」

「仮にも海産物の産地だからね。でもあんな魚は見たことがないな」

「ここはひとくちにヴィリアといっても貿易路はさまざま。各地から魚介類が集まりますからね。もともと貿易路にしたって、かつてはヴァルティアが支配していたころのこと、つまり、〈協定〉が結ばれる以前のことだそうですよ」

「セシリアは年の割にいろいろ知ってるんだね」

「……っ」

 すらすらと説明するセシリアに感心した様子で見とれていると、ふと目が合って、口をつぐんで恥ずかしそうに逸らす。年端のいかない少女には似つかわしくない。

「ああ、ごめんよ。ところで、これから僕たちはどこへ?」

「まずはそのみすぼらしい……じゃなくて、えと……お兄様のために素敵なお洋服を買いに行きましょう。うちの仕立て屋があるので」

「えっ、みすぼらしい……」

「見えてきました。あそこです」


 それから洋服をそろえたクラースとセシリアは二時間ほど市街をうろうろと探索――正確にはセシリアの買い物に一方的に振り回されるクラース、という構図だった――していた。

「買い物も済んだし、少し休憩していかない?」

 クラースは大量の荷物袋を抱えて少し憔悴した面持ちでセシリアを見た。セシリアの買い込んだ商品は衣服からよく訳の分からない魔術的な骨董品までさまざまにわたった。単純に、重い。時計の指している時刻はちょうど二時を少し過ぎたあたりで、まだ迎えの馬車が来るには一時間くらいあった。

「そうですね、そこのカフェにしましょうか」

「ああ。さすがにこの荷物の量をもって歩くのは疲れたよ」

「私、二か月に一度くらいしか外出しないんです、ここの市場に来るのなんて……何か月ぶりでしょう?」

「普段買い物とかはどうしてるの?」

「アリサが全部やってくれます」

「メイドさん?」

 ええ、と答えながら、セシリアはドアの前で立ち止まった。

「ここのケーキが好きなんですよね。昔クラスの友達と一緒に来ました」

 クラースとセシリアは、その古風な、一見すると目立たない、蔦に覆われたレンガ作りの建物の中に入る。店内は薄暗く、暖色のランプがわずかに差し込む。

「セシリア、クラスメートいたんだ。」

 角のテーブルに通された。

「ええ、もう何年も昔の話ですが……私が中等科に入ったくらいに。出来たばかりの友達ではしゃいでいましたね」

 すみません、とセシリアは店員を呼び止め、コーヒー二つと、チーズケーキタルトをひとつ頼む。

「いまは、学校には通ってないの?」

「ええ、今は自宅で」

 浮かない顔でそう答えるセシリアを見ながら、クラースは席に運ばれたコーヒーに口をつけた。まあ、事情はあらかた察してはいた。リゼレイユが独立した数年前あたりからヴァーサの立場も複雑になったのだろう。

「あー苦い、俺コーヒー飲むの地味に初めてなんだよね……」

「顔にそう書いてあります」そういって優雅な手つきでコーヒーを口に運ぶセシリアに、なんとなく敗北感を覚える。

「そういう時は、お砂糖を入れればいいのですよ」

「すみません、砂糖を少し頂けますか」といって、クラースは店員にお願いした。しかし、直後、クラースの目の前にいる人物――セシリア・ヴァーサを目にして――コップを手から滑らせた。

「はわ、すみません……」

 がしゃん、と音がした。しかし店員は動くそぶりを見せない。その目線はじっとセシリアに注がれていた。

「……セシリア? セシリアちゃん、だよね?」


「え……リーゼロッテ?」

「本当にセシリアちゃんだ~。久しぶり。ええと、隣の人は……彼氏さん?」

 クラースは吹き出しそうになった。

「私のお兄様です」

「え、セシリアちゃんにお兄ちゃんなんていたの?」

「ええ、実はいました」

「ふうん……」

 リーゼロッテ、と呼ばれた少女はちらり、とこちらに目をやると、にこりと笑いながら首を傾けた。

「セシリアちゃんのお兄さん、セシリアちゃんをよろしくお願いしますね?」

「ああ、うん……」

「そんな頼りない返事だと嫌われちゃいますよ? ふふ」

 テーブルの片づけをあたふたとこなし、それではごゆっくりと言って立ち去っていく。ひらひらのエプロン姿に少し見とれていると、セシリアに睨まれた。

「あんまり友達を変な目で見ないでくださいね、に・い・さ・ま」

「ご、誤解だよ! ただセシリアの友達ってどんな人なんだろうなーと気になっただけさ」

「まあたしかにあのひらひらはかわいいですよねぇ。指に挟んですりすりしたくなるくらい」

「思考を読まれた!? いやまて、そんな変態的なフェティシズムはないよ」

「まあいいです」


 それから客も来ないので、暇を持て余したのかまたリーゼロッテがとてとてと寄ってきた。

「そういえば、セシリアちゃんのお兄さん」

「ん、なあに」

「お兄さんはどこの学校に通ってらっしゃるんですか? まだ、学生さんですよね?」

「ああ、そうだよ」クラースは躊躇ったが、クヌーチェ高等学院だと白状した。

「えっ、あの名門の!? お兄さん目茶目茶頭いいんですね……実技科目は? 戦闘ですか、回復ですか?」

「いや、僕は、筆記だよ」

 その言葉を聞いて、たちまち静寂がその場を包んだ。

 苦虫を噛み潰した顔をしているクラースに、セシリアはわざと気づかないふりをしていた。

 クヌーチェはこの独立地帯内でも異彩を放つ高等教育のための教育機関だ。そこに在籍するということはそれだけで特殊な意味を持つ。そのことをこの場にいる全員が承知していた。ただ、リーゼロッテがそれ以上口を出さなかったのは、そこに「筆記」で入る人間は、皆無だからであり、それは一種の人間的〈性能〉の隔絶を意味していていて……。

「セシリア、コーヒーのお代わりを頂いても?」

「ええ、はいはい、勿論っ」

 と、逃げるように厨房へ消えていった。



 ----------


「限界というものはどんな人間にも存在するわ。それは体力、知力、認識の限界、環境の限界、限界を知らない人間なんてこの世に存在しない。しかし彼女にはそれがないってことなんだね。限界がないということが何を意味するか分かってるかい?」

「そもそもセシリア・ヴァーサはね、自己で魔術的な能力を供給することができないんだよ」


「彼女には俗にいう魔力なんていうものはからきし存在していないってこと。この事実が何を意味するかわかるかい? 彼女は魔術師になる〈資質〉はあったが、〈資格〉はなかった。なぜならね、セシリアには自立した魔術供給など不可能だからだよ」

「なかった、っていうのは、どういう意味なんだ?」

「彼女は自らを代償に魔術を実行することはできない。しかしレイメイはそれを可能にした。そして彼女はその養子としてアダプトされた。それはつまり――言い方を変えましょうか。魔術的インジェクションというのはつまり、それ自体が吸l血行為に等しい」



 ***


 それからカフェを出た二人は、どことなく気まずい思いをしながらぶらぶらと辺りを歩いていた。馬車でピックアップにくる約束の時間まではまだ三十分ある。

「兄様、クヌーチェに入られたんですか」

「ああ、その話」

「凄いですね。学校の勉強は、楽しいですか」

「いや、別に、普通さ。何もかもが普通で、ありふれていて、凡庸で、通俗で……とても君のお父さんには近づけないみたいだ、はは」

 セシリアは何も返さず、思案した面持ちでいた。が、突如として大声を上げた。


「クラース、危ない!」


 その声は、しかし間に合わず。

「――がっ…はっ……ああああ!」

 クラースの右腕に極度の痛みが走った。目を落とす。何かしらの弾丸が貫通したような痕跡。それからキィィィィ―――という高周波の音が突如として鳴り響く。クラースは『その意味を理解した』。

 セシリアが思い切りクラースを抱き寄せる。そして追尾するように放たれた一撃が、すんでのところでクラースの右頬を貫く。見事に貫通。筋肉を抜けた弾丸は血肉とともに地面に落ちた。そして再び高周波音が鳴り始めた。

 そのままふたりは地面に倒れる。術者は少なくとも2人以上、一人が何らかの形で波動を操作し魔術感知を狂わせる。それからもう一人が攻撃に回っている。次の魔術が発動するのは少なくとも数秒かかるだろうという推測、セシリアは身をかがめてクラースの血痕に手をやる。


 〈痕跡〉をバックトレース。

 大量の情報がセシリアの脳に侵入する。同時に手に触れる夥しい血液が魔術師としての能力を上昇させていく。情報空間上に網の目に張り巡らされたいくつかの痕跡から、敵の方角を見定める。それから手早く周囲に目を配り、脅威におののく群衆たちの瞳からその記憶を瞬時に探っていく。直近3秒間のありとあらゆる記憶への参照、答えはあった。

 あたりで騒然としていた群衆たちが意識を失ったようにばさりと倒れていく。何事が起っているのか、クラースはあいまいな痛みの中で考え続けていた。この状況は敵襲か。今起きたのは間接的な魔術接続。この広範囲に及ぶ術式を組み立てたのは――。

「15メートル先、露店、フード、黄色い目玉に、〈黒い猫〉」

 ぽつりとセシリアはそれだけ言い、瞳をつぶる。アドレナリンの波が脳を駆け抜け、痛みを超えて思考が極度に冷静になっていく。続けて再び魔力の駆動音。それも今までとは比べ物にならないほどの音量。今度は間違いなく敵の一撃だろう。

 確実に、死ぬ。

 クラースは思った。その音が途切れた瞬間。目をつむろうとして、ぼんやりとした視界から見えたのは。

 突如として自らの血液がするすると、あたかも爬虫類のごとく地面を這い、空中へと遡上。クラースの目の前で紋様を形成する。

 再び大きな魔術弾が目の前にぶつかる。紋様にぶつかったそれは、ネットに触れた途端にスピードを落とす。紋様は蜘蛛の巣のようにそれを受け止めると、セシリアは声を落として一瞬で術式を詠唱した。

「冷血なる我が守護者よ、赤き血により鉄槌を下せ。【リセース・イエール・ハルノイド】」

 そして血液は目の前で対象に向けて赤い線を描き出す。15メートル先にあった露店を右に急カーブ、魔術師の皮膚の上に焼けるような瘢痕をねっとりと浮かび上がらせ、極度に膨張したエネルギーとともに爆発音が鳴り響く。肉が断たれる音。悲鳴。断末魔の叫び。

 そばにあった石造りの家の壁は崩壊し、露店に並んでいた果実がごろごろと転がり落ちていった。煙があたりを立ち込めていく。クラースはその煙幕のはざまに少なくとも2人以上のむごたらしい死体を認めた。そしてひとつの動く影。比較的軽傷で済んだと思われる敵の一人が、両腕を赤黒く焦がした状態で立ち上がろうとして膝をつく。衝撃で右腕が捥げて地面に落下。激痛に悲鳴を上げそうになるのを食いしばっている。金髪は自らの血で染まっていく。


 なるほど、「遮蔽役」か。何らかの組織に従って動いている訳だから、年齢からみて高位魔術師であることには間違いがないだろう。15歳くらいだろうか。とセシリアは辺りを付けた。彼女はかろうじて付いているだけの左手を魔術で無理やり動かして手を開いた。風がなぎ、周囲の煙は消え去っていく。同時に姿がゆっくりと周囲の情景に溶け込んでいく。そして文字通り彼女は消えた。

 とはいえ、テレポーテーションが起こったわけではなさそうだとセシリアはすでに確信を持っている。移動系の魔術は広範囲に情報汚染をするためにすぐに対象に気取られるし、空間のゆがみを見れば術者ならすぐにそれとわかる。つまりこれは幻術の類。敵はクラースを殺そうとしているわけだから、こんなところで易々と引き下がらないだろうとはわかっていたが。

 今度は一切の音もなく空中に百の紋様が描かれていく。黄色く不気味に描かれた円陣。それから氷の矢が一斉にふたりへ襲い掛かった。続いて大きな駆動音。「セシリア!」とクラースは叫ぶ。すでに矢は放たれた。死は眼前に迫っている。しかし肉声が届くよりも、攻撃が命中するよりも、セシリアのほうが早かった。本体からの攻撃位置は魔術によって隠蔽されていて掴めそうもない。空間に展開された紋様の半分はフェイク、本物は呪符による即席のチープな魔法、メインは本体からの一撃――セシリアは血の付いた右手を動かすと、自らの右手側に亜空間を構築し、〈ここではないどこか〉への空間情報を付与する。そこへあたかもポケットのように突っ込み、そしてその手を引き抜く頃にはその手には刃物のような何かが握られていた。グリップは臓物のようにびくびくと波打っており、刃先は黒く靄のかかったようにその実態をひとつに定めない。彼女はその手を下に『放す』。自由落下し始めた刃物は先から粉々になるようにクラースの目の前で消えていく。


 次の瞬間、勝負は決まっていた。


 数メートル離れた距離に迫っていた魔術師の少女は、空中へ跳躍したままの状態で刃物で心臓を刺された状態でその姿をあらわした。魔力を失った死体は重力係数に従って速度をつけて床に転がり落ちた。それから、魔術の原則とも呼ぶべきものがそのとき起こった。あらゆる攻撃は対象との関係性において位置づけられるものだから、本体が死ねば放たれた矢は解決する先を見失う。そして起こるのは空間による魔術の破棄処理、つまり、術者のいない魔術は無効化されていく。

 セシリアが手をそっと上げると死体から刃物は消え、血液の後だけが残った。


 そのままセシリアは背後を振りむき、再び握りしめられた刃物で空を斬る。奇襲を掛けようと動き出した弓を構えた三人の魔装兵たちが胴体から二つに切断され路上に転がった。クラースは息を呑み、セシリアをのぞき込む。その目に感情の色は見えなかった。


 それは暴力というにはあまりにも凄惨で。

 圧倒的な、蹂躙だった。


 セシリアは手早く呪文でクラースの傷跡に応急処置を施すと、その手を取って走り出した。歪曲する路地を抜けて、砂ぼこりの舞う中をひたすらに駆け続ける。道行く罪なき通行人たちを薙ぎ倒しながら追手から逃れる。

 再び頭上から高速な弓が十数連射、クラースたちの背後に規則正しく降ってきた。瓦礫がはじけ飛ぶ。方角は北東の時計塔のほう、狙撃手、このままではまずいとセシリアは足をとめ急旋回。クラースの手を無理やり引いて今度は人通りの多いメインストリートへ回る。

「このまま突き当りまで走ります! 急いで!」

「わ、わかった!」

 クラースは言われるがまま走り続ける。背後で甲高い鉄の衝突したような音が繰り返し鳴り響き、短い詠唱、それから腹の底まで響き渡るような低い音が辺りを揺らしていく。敵の銃撃をセシリアが弾いているのだ。と思った瞬間、突如、一斉にあたりの窓ガラスが割れて通り全体に振り注いだ。

「おいおい、正気かセシリア。死人が出るぞ!」

「ふざけたことを言わないでください、あなたが死にます?」

 均質に隈なく散布したガラス片から屈折率の変化を読み取り、隠れて接近してきたステルス兵たちを「認識」する。対象を捕捉。

「這え、影の触手よ」

 セシリアの足先から素早く植物の蔦のような何か――いや、植物にしては禍々しくその先端は食虫植物のごとくに口を開いて対象者に襲い掛かる。蔦は一瞬で絡みつき、締め上げると、そのまま兵士の顔面を喰らいつくしてしまう。

 クラースはあまりの情景に吐き気を催しながら、なおもセシリアとともに走り続けた。突き当りまで出るとマーケットの入り口だ。


「お嬢様! お待ちしておりました、早く馬車へ……」

「要らないわ。兄さま、血を借りますよ」


 血で床に刻印を書き、幻獣を召還した。それは馬によく似ているが、その輪郭は青くゆがみ、霊体のようにも見える。

「乗ってください」

「大丈夫なのか、これ」

「居たぞ!」追手の一人が声を上げ、弓を構える。

「ああ、クソ、どうにでもなってくれ」

 二人はその幻獣に跨ると、その場を駆け去った。


 ヴァーサ邸につく頃には既に夕刻が過ぎ去ろうとしている。屋敷に近づくと、クラースは息を飲んだ。

 辺りは騒然としていた。ふたりはすぐに異常に気付いた。物凄い量の煙幕と、何かが燃える異臭。

「家が……」

 屋敷は、燃えていた。

「嘘でしょ、お父様……!」

 セシリアは獣から降りて屋敷へ駆け寄る。先ほどまで跨っていた獣は跡形もなく消失した。クラースセシリアは慌てて中に入ろうとしたが、消防隊員とみられる男性に抑え込まれた。

「中には入れません」

「ここの者です。離してください! 中に誰かいるかもしれないんです!」

「駄目だ。落ち着いてください!」遠くの消防隊員から、遺体2、生存0という声が聞こえた。跡形もない焼死体が遺体袋に収められているところだった。

「え、嘘でしょ……お父様…………嘘、こんなの、お父様ぁ……」

 取り乱すセシリアをなだめていると、そのうち、隊長と思しき男性が現れて「ここのお屋敷の方ですか。少しお話があります」と声をかけてきた。頷いて、二人は立ち入り禁止区域への立ち入りを許された。遺体袋を確認する。一つ目はアリサのものだった。セシリアはうろたえ、静かに目をつぶる。二つ目はレイメイのもの。クラースはごくりと唾を飲み込んで、袋を開いた。しかし袋の中身は『空だった』。


 突如として町中に緊急放送が鳴り響いたのは、そのときだった。


「ヴァルティア帝国による侵攻開始を確認した。全住人はこの区域から退避せよ。繰り返す。ヴァルティア帝国による侵攻開始を確認した。全住人はこの区域から退避せよ」


 中立地帯での魔術による殺人、ヴァーサ家当主レイメイ・ヴァーサの失踪、そして東側のヴァルティア帝国からの侵攻。これらはすべて一夜にして起きた出来事だった。



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