理系人間考(一) ~ダメ理系の私がショートショートのランキングについて調査するようです~
さて、初のエッセイである。つらつらと書いていくが、できるだけ平易な文章を使って、どうでもいい話も充分にやりつつ、しかし大事なところでは論理的に、要点を絞ってお話してみようと思う。
なにぶん、初めてのエッセイ挑戦なので、つたないところもあるかもしれない。なにせ、使用した漢字の統一すらしていないのだ。厳しいご意見もぜひ、いただきたいと思う。私の血肉に換えさせてもらい、より良い文章を書けるように努力する。
と、こんなふうに書くと、私はまるで頭が良く、思考能力に優れ、それでいて謙虚な人間であるかのように思われるかもしれない。
しかし実際には、論理的な思考はかなり苦手だ。
理科は好きだが、それとこれとは別の話だ。逆・裏・対偶とか超苦手。論理クイズ大嫌い。謙虚? なにそれおいしいの? 私はただの、かまってちゃんに過ぎないのだ。かまってもらうための戦略なのだ。
そんなダメ理系・ダメ人間の私が送る、初のエッセイが、どうして論理を要するものになったのか。
それはもう私にも分からないが、まあ、なんとかなるだろう。
とにかく、話を始めてみよう。
***
まずは軽く、自己紹介でもするとしようか。
ああ、そうそう、その前に。
だらだらと、相当長くなりそうなので、先に調査から得た結論を書いておく。
【結論】
・評価を伸ばすなら、投稿直後が勝負。上位を狙うのであれば、作品のできばえはもちろんのこと、宣伝活動もすぐに行った方がいい。なんなら予告もすべきかもしれない。
・評価は伸び続けない。むしろすぐに伸びなくなる。だから、伸びなさそうならすぐに見切りをつけて次に移るか、原因を分析・改稿して再投稿するのが良さそうだ。
・著しく強い人気を得た作品であれば、どうやら一年くらいはもつ。寿命というのかな。一年たてば、ランキングからは消えていく傾向にあるようだ。
では自己紹介。だらだら書くので、ここは読み飛ばし、さっさと調査のページへ進むことをおすすめする。
私は表題にあるとおり、「理系人間」と呼ばれる人種である。少なくとも私はそう思っている。
理系と聞くと、一歩引いてしまう人も多いと思う。それは別におかしなことではない。アフリカのサバンナにおいて、シマウマがライオンを見ても「俺は引かねえ!」とは言わないだろう。
いや、別に非理系人間を弱者扱いしたいわけではない。分かりやすいたとえとして出しただけだ。ライオンに対するシマウマのたとえがご不満ならば、ある種の昆虫に対する捕食者でもいい。彼らも、毒のある昆虫をわざわざ選んで食べたくはないだろう。
あるいは、ミミズに対する麻宮サキでもいい。ご存知だろうか、『女番長刑事』という、和田慎二の少女漫画なのだが、主人公のサキがミミズ風呂に放り込まれてトラウマになる回がある。ミミズを見ただけで、本気で引いてしまうようになったのだ。
最終的に、サキはそのトラウマをある方法で乗り越えたのだが、詳細は伏せておく。「うげぇ」と思われること間違いなしだからだ。
いっそのこと、ゴキブリに対する人間でもいい。ゴキブリを見て「俺は引かねえ!」とは思わないだろう。
ちなみに私は、子供ゴキブリ相手なら引かない。と言うか、何も思わない。最初は無視しているが、だんだんうっとうしくなってきてデコピンで弾き飛ばす程度だ。小さいから気持ち悪さも感じないのかもしれない。相手が成虫の場合はさすがに不快なので、見えないところへお帰りいただく。殺す? そんなことはしない。ゴキブリの一匹や二匹、いちいち気にしていられない。毒があるわけでもないのだし。彼らも生きているのだし。
なに? 引く引かないで言えば、そんな私に一番引いているとおっしゃる。普通、潰して殺してゴミ箱へポイだろうと。まあ、普通はそうでしょう。当然だ。私はそれすら面倒くさいというだけである。別にムツゴロウさんのように、ゴキブリを愛しているわけではない。単に、ものぐさなだけだ。
他にもいくらでもたとえはありそうだ。嫌な上司に対する部下もそうかもしれないし、痛いオタクに対する一般人もそうかもしれない。葉山に対する比企谷少年もそうかもしれないし、材木座に対するあなたもそうかも知れない。ご存知ないだろうか。『やはり俺の青春ラブコメは間違っている。』略して『俺ガイル』と呼ばれている、アニメにもなった話なのだが、おもしろいのでぜひ一度見てみてほしい。えっ、不必要なアニメや漫画の話ばかりで、そろそろうっとうしいと。確かに。脱線はほどほどにしないといけない。気をつけます。
要するに、相性の問題だと思うわけだ。自分とは異質な存在を見たときに、反射的に避ける。気持ち悪い、怖いと感じて接触を回避する、あるいは排除する。ひょっとすると、もはやある種の本能なのかもしれない。
あれは松井優征の『魔人探偵脳噛ネウロ』だったかな。見た目は人間ではなく猿そのものだが、知能があって言葉を話す。そんな猿がどんどん増えてきたらどう思う。怖いだろう。いつか自分たちが少数派になるんじゃないかと思うだろう。そして、排除したい、しなければと考えるだろう。
そんな話はいくらでもある。『ブラックジャック』あたりには、いっぱい出てくるんじゃないかな。
まだまだ具体例は思い浮かぶが、きりがないし、これ以上は差別問題を喚起しかねないので書かないでおく。
私は表面上、差別なぞしていないつもりだが、深層心理は自分でもわからない。潜在的に嫌っている相手がいるかもしれない。まあいるんだろうな。根が深い。
*
まあ、そんなわけで、私は理系人間と呼ばれる人種だ。
ひとくちに「理系人間」という名詞でくくってみたが、これはさらに細分化される。
ものを作るのがただただ好きな者。発明家かな。
技術を作りだし、それを使ってものを作ることが好きな者。これは工学技術者だ。
美しい定理を見つけ出すことに熱中する者。数学者。
物理法則の根源に触れてワクワクする者。自然科学者。
生き物の生きざまを知りたがる者。動物行動学者。
ある現象や情報群の背後に隠れている法則に気づいて喜びを感じる者。
これは何だろう、分からない。数学者のようであり、自然科学者のようでもある気がする。
理系と言っても彼らも人間。かくも多様だ。他にもいろいろあるだろうし、さらなる細分化もできる。
そして私は、そこにデータがあれば、とにかく分析したくなるタイプの理系人間である。先の分類で言えば、最後に出したものが一番近いかもしれない。
だから今回は、ショートショートについてのデータがあると分かり、それを調べてみたくなったのである。ご理解いただけただろうか。
***
以上は前置きで、ここからが本題(お待たせしました)。
「なろう」に投稿するようになって、私は、このサイトのランキング情報に関心を持った。どのような作品ならウケが良いのだろうと、まあごく普通の興味を抱いたのだ。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれないが、私はショートショートをやっている。だから、ショートショートのランキングについて調べてみたくなった。
ショートショートを知らない方のために簡単にご説明しておくと、ショートショートには特に決まった形式やルールはない。とにかく、一般に短編と呼ばれているものよりもさらに短くて、ストーリーとしてまとまっていればそれでいい。個人的には、二十ページくらいまでのものかな。あくまで主観だが。
パターンはいろいろあって、私は、王道もの、寓話もの、叙情系、「奇妙な味」系統、邪道ものに大別している。
ストーリーとしてまとまっていれば何でもいいのだが、私にとっての主流は、ブラックユーモアや風刺など、皮肉な内容のものである。故・星新一氏の影響が非常に濃いからだろう。
しかし最近では、恋愛できれいにまとめたものや、ネット掲示板で流行している「SS」と称されるものも多くあり、これらもショートショートに分類されそうだ。とにかく、決まったルールは一切ないのだから、短くまとまってさえいれば、それで良いのだ。
さて、ショートショートを投稿し始めてしばらく経ったある日、話題のショートショートは無いものかと、私はなんとなく日間ランキングを開いてみた。
すると、驚くべきことに、私の投稿が二位から六位を独占していた。
それは、筆の乗るまま気の向くままにどんどんと書きすすめ、完璧主義の気がある私には「われながら完璧だ」とは言えないが、それ以上掘り下げるのが面倒になって、そのまま投稿したものばかりだった。それらがなんと、上位にランクインしていたのだ。
ショートショートを書き始めた中学生のころは、どれだけ書き直しても満足できず、結局のところ自分には才能は無いのだと諦め、長いこと筆をとらずにいた。
しかし大人になってからは、自身の完璧主義が悪癖だと理解し、それを受け入れられるようになっていたので、近ごろは八割がた満足のいくできになっていれば、そこで筆を止めることにしている。
自己満足などよりも、きちんと書きあげて読んでもらうことの方が大切だと分かったのだろう。それで読んでもらえないなら、原因を考えて修正するだけだ。幸いなことにネット投稿なので、後からの修正はいくらでも利く。
その八割がたの成果が見事にランクインしていたため、私は、私が選んだ方向性の正しさが、はからずも証明されたかのように感じた。
しかし、ここで私は疑問を感じた。
いくらなんでも、都合が良すぎるのではないか。
久しぶりに筆をとり、勢いで書きあげて投稿したものが、こうもうまく上位に食い込めるものだろうか。
ランキングを出した方法が悪いのではないだろうか。
この文章を書いている今は、二〇一七年四月二十四日の早朝。ショートショートを初めて投稿したのが二十一日の早朝のことであり、まだ三日目だ。投稿した数は十九本。
それを踏まえて、あらためてランキングを調べてみよう。さっき書いた「二位から六位」という話は昨日の昼前のことで、すでに十八時間ほどが経過しているから、ランキングも変わっているはずだ。最新データの取得と考察を行いつつ、書き進めていくこととする。
そうだ、どうせやるなら、期間をいろいろ振って調べてみよう。何か傾向や特徴が見つかるかもしれない。
*
調査の手順が決まった。
データは、期間条件をいろいろ変えて取得する。研究業務では基本となる、入力条件のうちの一つのみを変数としたときの、出力(応答)の変化を調べるやり方である。
そして、一位から十位までの内容を記録する。記録する出力項目は、順位、作者、タイトル、期間ポイント数、および総合評価ポイント数とする。その際、作者の敬称については、勝手ながら省略させていただくことにする。
また、必要に応じて、投稿日時等の他の出力項目も確認程度は行うことにする。
*
それでは早速見ていこう。まずは、日間ポイント順からだ。
【キーワード「ショートショート」/絞り込み条件「日間ポイントの高い順」「短編のみ」】
一位 夕凪 もぐら『ショートショート 告白』
日間 二四ポイント/総合評価 四六ポイント
二位 吉川明人『しつこい若造』
日間 一二ポイント/総合評価 二七ポイント
三位 キップル『寓話 注文の多い料理店』
日間 一二ポイント/総合評価 一八ポイント
四位 黄昏の王『好きな女性のタイプ論』
日間 一二ポイント/総合評価 一九〇ポイント
五位 拙作『ショートショート007 健康な社会』
日間 一二ポイント/総合評価 一二ポイント
六位 拙作『ショートショート016 巻き戻る』
日間 一二ポイント/総合評価 二二ポイント
七位 拙作『ショートショート017 息抜きの駄文』
日間 一二ポイント/総合評価 二四ポイント
八位 デジタル昆布『(超短編:壱)あぁ、もう疲れた。』
日間 一一ポイント/総合評価 一一ポイント
九位 雪芳『浮気』
日間 一〇ポイント/総合評価 五三一ポイント
十位 結城天『通学』
日間 八ポイント/総合評価 八ポイント
おおう。私の投稿が三本入っていた。十八時間前より数は減り、順位も少し落ちてはいるが。
よく見てみると、二位から七位は日間ポイントが同じになっている。だが、総合評価順にはなっていない。
投稿者と投稿日時で何かルールが決まっているのかとも思ったが、どうやらそういうわけでもなさそうだった。
おそらく、日間ポイントの評価が付けられたタイミング順になっているのだろうと思う。
なお、総合評価が三桁のものが二本あるが、これらは数か月前または数年前に投稿されたものなので、なるほど、さもありなんという気もする。
*
では、条件を変えてみる。日間から週間へと変更した。
【キーワード「ショートショート」/絞り込み条件「週間ポイントの高い順」「短編のみ」】
一位 拙作『ショートショート002 会場』
週間 二四ポイント/総合評価 二二ポイント
二位 フィーカス『妹が妙にイナゴを食べさせたがる』
週間 二二ポイント/総合評価 九七ポイント
三位 沖田猫『物忘れ家族』
週間 二二ポイント/総合評価 二二ポイント
四位 夕凪 もぐら『ショートショート 告白』
週間 二二ポイント/総合評価 四六ポイント
五位 かとうけい『モモちゃんの作文(ショートショート57)』
週間 二〇ポイント/総合評価 三〇ポイント
六位 拙作『ショートショート008 電話』
週間 二〇ポイント/総合評価 二〇ポイント
七位 波硝子『恋心』
週間 一九ポイント/総合評価 一九ポイント
八位 かとうけい『バナナの皮(ショートショート69)』
週間 一八ポイント/総合評価 一八ポイント
九位 神通百力『君の髪』
週間 一六ポイント/総合評価 一六ポイント
十位 拙作『ショートショート010 願い』
週間 一六ポイント/総合評価 一六ポイント
……またしても拙作が入っていた。それも一位。あと六位と十位。投稿してから、まだ一週間は経っていないのだが。
しかしこの一位、週間ポイントが総合評価ポイントを上回っている。誤植ではなく、本当のことだ。いったいどういうことだろう。まだシステムをよく理解できていないので、原因は分からない。ブックマークの影響だろうか? まあ、些事なんだろうな。
とりあえず置いておいて、そのうち調べることにしよう。
それにしても、一位はさすがに驚いたが、しかしまあ、投稿してから日の浅いほうがポイントも入りやすいだろうし、そう驚くことではないのかもしれない。日の浅い、例えば前日に投稿され、日間ポイントを多く稼いだ作品が、週間に入ってくるのは当然だろう。
日間で一位だった、夕凪もぐら氏の『ショートショート 告白』が入っていて、日間で五位から七位だった拙作が入っておらず、その代わり数日前に投稿した拙作が入っているのは、つまりそういうことなんだろう。
ところで、ポイントの数字をよく見てみると、週間と日間では思ったより差が小さい。せいぜい二倍から三倍程度の開きしかない。
このことから、一つの曖昧な推測が浮かび上がる。
ショートショートでは、同一作品がポイントを稼ぎ続けることは少ないのではないか。もし同一作品がポイントを稼ぐのであれば、日間と週間で、もっと差に開きが出ても良いはずだ。
しかし実際にはそうなってはいない。
これはひょっとすると、ショートショート作品はまんべんなく評価がなされることが多く、特定の作品が突出して評価されることは少ない、ということかもしれない。
とは言え、これは日間と週間からの推測だ。
普通に考えれば、知名度は線形的にではなく指数関数的に伸びる。噂が噂を呼ぶ、というやつだ。知名度が高くなるにつれ、加速度的に評価が増えていく。
ならば、月間や年間では大きなポイントを集めているのではないか。ひょっとすると、私の投稿がそうなることもあるかもしれない。
多くの人に見てもらえるというのは、自己承認欲求のひどさを自認している私としては、なかなか魅力的なものがある。
*
少しわくわくしてきたので、月間を調べてみよう。
【キーワード「ショートショート」/絞り込み条件「月間ポイントの高い順」「短編のみ」】
一位 マグロアッパー『時間は人を、曖昧にして』
月間 一〇五ポイント/総合評価 一〇五ポイント
二位 蹴沢缶九郎『電柱の上』
月間 八八ポイント/総合評価 八八ポイント
三位 夕凪 もぐら『ショートショート アンドロメダ』
月間 六六ポイント/総合評価 六六ポイント
四位 夕凪 もぐら『ショートショート スマートフォン』
月間 六三ポイント/総合評価 六三ポイント
五位 有瀬川辰巳『花は桜木、人は梅』
月間 五八ポイント/総合評価 五八ポイント
六位 夕凪 もぐら『ショートショート 告白』
月間 四六ポイント/総合評価 四六ポイント
七位 かとうけい『とっておきの言葉(ショートショート67)』
月間 四〇ポイント/総合評価 四〇ポイント
八位 沖田猫『物忘れ家族』
月間 三一ポイント/総合評価 三一ポイント
九位 ペイザンヌ『ロボット』
月間 三〇ポイント/総合評価 三〇ポイント
十位 かとうけい『我が町へ』
月間 二八ポイント/総合評価 二八ポイント
うん、思っていたほどにポイントが伸びるわけではなかったようだ。そんなに甘くはなかった。
月間の一位でも一〇五ポイント。それに対し、週間の一位が二四ポイント。おおよそ四・四倍といったところ。
一か月イコール四週間だから、指数関数的ではなく線形的だという可能性がある。
ただし、サンプリングポイントが少ないために、本当は指数関数的だが、今回たまたま線形的に見えているだけ、という可能性も充分あることは見落とせない。
実際、日間と週間での違いは、おおむね一倍から二倍程度のようだし、線形とは言えなさそうだ。
それはともかく、噂が噂を呼ぶという現象、それ自体は起こっているはずだ。
しかし、噂が噂を呼ぶのであれば、もっと評価が増えていてもおかしくない気がする。
この仕組みを抑えている理由は、一体なんなのだろうか。
そこまで考えて、当たり前のことに気づいた。古くなると、読者の知る機会が減るのだ。
おそらくだが、短編の読者は、短編で検索をかける。
だから、新着を探す。
しかし、たとえ名作であっても、少し時間が経つと新着には表示されず、後ろへと消えていく。ランキングで調べても、トップテンはともかく、その下となれば、もう見ないという人も多いはずだ。
つまり、時間が経つごとに機会損失が大きくなるのだ。いや、この表現は語弊がありそうだが、とにかく単純に、知ってもらえなくなるということだ。
噂が噂を呼ぶ。それはランキングを見ると言う形で、間違いなく存在しているだろう。しかしその裏で、知る機会は減っていく。この二つの要素が相殺し、線形的な評価の伸び方になる。
どうだろう。案外当たっていそうな気がするが。
*
いい加減に長くなってきたし、そろそろ疲れてもきたので、最後に四半期と年間両方を一気に調べて、考察ののち、まとめに入ろうと思う。
【キーワード「ショートショート」/絞り込み条件「四半期ポイントの高い順」「短編のみ」】
一位 黄昏の王『好きな女性のタイプ論』
四半期 一九〇ポイント/総合評価 一九〇ポイント
二位 マグロアッパー『時間は人を、曖昧にして』
四半期 一〇五ポイント/総合評価 一〇五ポイント
三位 蹴沢缶九郎『電柱の上』
四半期 八八ポイント/総合評価 八八ポイント
四位 湖城マコト『時間停止ボタン』
四半期 七四ポイント/総合評価 七四ポイント
五位 星こうすけ『転生本気だせず』
四半期 七一ポイント/総合評価 七一ポイント
六位 黒井羊太『ユビキタス』
四半期 七〇ポイント/総合評価 七〇ポイント
七位 夕凪 もぐら『ショートショート アンドロメダ』
四半期 六六ポイント/総合評価 六六ポイント
八位 夕凪 もぐら『ショートショート スマートフォン』
四半期 六三ポイント/総合評価 六三ポイント
九位 蹴沢缶九郎『一杯のラーメン』
四半期 六〇ポイント/総合評価 六〇ポイント
十位 有瀬川辰巳『花は桜木、人は梅』
四半期 五八ポイント/総合評価 五八ポイント
【キーワード「ショートショート」/絞り込み条件「年間ポイントの高い順」「短編のみ」】
一位 甘木智彬『お前のせいで、おれの人生は滅茶苦茶だ。』
年間 七九九ポイント/総合評価 七九九ポイント
二位 黒井羊太『星間戦争の片隅で』
年間 四一一ポイント/総合評価 四一一ポイント
三位 深夜太陽男『犯罪するとオタクにされる』
年間 二九四ポイント/総合評価 二九四ポイント
四位 黄昏の王『好きな女性のタイプ論』
年間 一七八ポイント/総合評価 一九〇ポイント
五位 乳酸菌『チョコレートが固まるまで』
年間 一六七ポイント/総合評価 一六七ポイント
六位 乳酸菌『どうりで寒いと思った』
年間 一三七ポイント/総合評価 一三七ポイント
七位 沖田猫『バッドエンド』
年間 一三〇ポイント/総合評価 一三〇ポイント
八位 濃口しょうゆ『いちばん画期的な発明』
年間 一一四ポイント/総合評価 一一四ポイント
九位 茨木野『飲めば、モテる(1本5000円)』
年間 一一〇ポイント/総合評価 一一〇ポイント
十位 たこす『困った男』
年間 一〇六ポイント/総合評価 一〇六ポイント
……って、たこすさんやないかーい!!!!
びっくりしすぎて、ついどこかの芸人のような叫び声を上げてしまった。まさか、そんな大物でいらっしゃったとは。
恥ずかしながら、まだ読んでいない作品だと思われる。近々、読ませていただきます。
さて、考察をしていくのだが。
「まあ、こうなるんだろうなあ」。これが率直な感想だ。
まず四半期だが、ランクインしている作品のラインナップの多くが、月間で入っているものだ。具体的には、月間でランクインしているもののうち五作品が、四半期にも入っている。
四半期、つまり三か月。
そう考えると、四半期の上位十作品のうちの半分程度を、直近一か月のランキングに入っているものが占めているというのは、そうおかしいことではない。むしろ当然のことだ。
古びれば消えていく。いくら噂が噂を呼ぶとは言え、この真理には抗えない。
しかもそれが、お互いに噂を呼んで競合している名作どうしであればなおさらだ。
短期的には、古びる速度の影響よりも噂を呼ぶ効果のほうが大きく作用し、評価が増えていく。
だがそうして残った名作どうしの戦いとなると、話は別だ。
たとえ一か月前に月間ランキングに残っていた名作でも、直近の、より新しい同程度の名作にとって代わられる。だから、相対的に直近の一か月間のもののほうが、四半期に入る確率はより高くなるはずだ。
実際に詳しく調べてみると、直近一か月のものが五本、一か月から二か月以内のものが三本、二か月から三か月以内のものが二本。古いほど少ない。
母数が十本と少なすぎるから誤差も大きいだろうが、まあそれはいいにしておいてほしい。三十位とかまで調べるのは、さすがにしんどい。
その代わり、この考えを補強する材料として、各期間ポイントと総合評価ポイントのデータからの推測を示しておく。
日間はともかくとして、週間、月間、四半期、年間では、ランクインしている作品の多くで、期間ポイントと総合評価ポイントが完全に一致、またはかなり近しい数字になっている。
年間評価に関して、一年以内の評価=総合評価ということはつまり、上位に入っているもので一年以上前から評価がなされているものはほとんど無いということだ。
おそらく、一年以上前のものは、もはや読んでもらえてすらいないのだろう。
実際に年間の上位十作品の投稿日を調べてみたが、投稿が一年以上前のものは一本しかなく、残りはすべて一年以内に投稿されたものだった。
そしてその一本も去年の四月十九日のもので、一年を大きく過ぎているわけではなかった。
また、年間だけでなく、より短いスパンでも両者のポイントが一致する傾向が強い。
この事実は、ごく当たり前だが厳しい示唆を与えてくれる。すなわち、評価が増えるのは最初だけで、あとはもう伸びることはない、という示唆だ。
一か月という短いスパンで上位に入っている作品に関して、月間ポイントと総合評価ポイントが一致しているということは、つまり最近投稿されたものしかランクインしていないということだ。
少しでも古くなった作品はもはや、新規評価が伸びて最新ランキングに載ることはない。言われてみれば当たり前だ。
つまり、投稿直後、具体的には一週間から一か月程度の間にどれだけ評価を伸ばせるかが勝負で、一か月を超えるともうほとんど評価が増えることはなく、最新ランキングに新人として入場することもない。
と言うかそもそも、見てもらえてすらいないのではないだろうか。たぶん、そういうことなんだろうな。
投稿から時間が過ぎた作品は、評価してもらえること自体が少なくなっている。
ましてや、一週間や一か月を超えてもペースが落ちることなく少しずつ評価が伸び続け、週間ではランクインしなかったが月間で登場する、ということは、まずありえないのではないか。
*
以上のことから、あくまでもショートショートに限った話だが、次のような結論を得た。
評価を伸ばすなら投稿直後が勝負。
どうやって数字を伸ばすかはいろいろな戦略が考えられるが、投稿直後に伸びなかった作品、おそらく一週間を経過しても週間ランキングに載らなかった作品は、おそらく見込みが無い。
さっさと見切りをつけて次回作を書くか、改稿して再投稿するしかない。
また、評価が伸びてもすぐに古びて、一年以内にはほとんどが消え去っていく。
一年以上前に投稿されたものがなおも年間ランキングに残っているようなことは、まずない。
ショートショートは、長編にくらべ本数自体が多いのかもしれない。
しかしどちらかというと、愛着のあるキャラクターなどが登場しないことの影響の方が大きいのではないだろうか。
愛着のあるキャラクターがいないので、ショートショートはストーリー勝負・オチ勝負になる。そのうえ短く、世に出る本数も多い。
それゆえ読者の心に残りにくく、忘れ去られるのも早い。
実際、星新一の作品でも、すぐに思い出せるものは、はたして何本あるか。千編を超えるショートショートの何パーセントだろうか。つまりはそういうことなのだ。
しかし、いい情報もある。年間評価でトップテンに入っている作品で、四半期ランキングにもトップテンに入っているものは、一本しかないのだ。
これはつまり、ショートショートという、短くて本数も多くて魅力的なキャラクターの登場しないスタイルであっても、人気を博した作品は、長い間残り続けるということだ。やや古い作品であっても、年間ランキングに残り続ける。
そうして再び読んでもらい、再評価のチャンスをつかんで評価を伸ばせる可能性が残る。
まあ、逆に言えば、四半期に残れなかった作品は、もう再評価のチャンスは無いということでもあるのだが。
厳しいことだ。
***
以上、ショートショートでランキングに入っている作品について分析し、考察を加えてみた。
はっきり言って、全てのデータを網羅してはいないし、おかしな推測もあるだろう。私の知らない背景があって、間違った分析をしているかもしれない。
だから、私が最終的に言いたいのは別のことだ。
もし、これを読んでくれたあなたが、失礼ながら下位で苦しんでいて、しかし評価を伸ばしたいと思っているのであれば、このような分析を行ってみるのも一案ではないだろうか。
間違いもあるかもしれないが、何かしら得られるものもあるかもしれない。やってみて損はないはずだ。
たとえば、上位に入っている作品の特徴を調べてマネしてみたり、上位の投稿者の投稿方法を調べてその戦略をマネしてみるなどの方法がある。ごく普通のやり方かもしれないが。
上位に残っている作品は、私はまだほとんど読めていないのだが、タイトルを見るだけで魅力を感じる。少し偉そうに言うならば、光るものがある、という感じ。「読んでみたい」と思わせる何かがある。そんな印象を受ける。
本当に面白いかどうかは、実際に読んでみないとわからないが、少なくともそういう「何か」が感じられるから、開いてやろうと、ためしに読んでみてやろうじゃないかと、そう思ってもらえるのだろう。
あるいは、あらすじ。
ショートショートだからと省略されている方も多いようだが、私は可能な範囲で書くようにしている。それは、評価云々以前に、とにかく読んでほしいからだ。
先にも書いたが、私は承認欲求が強いのだ。とにかく読んでみてほしい。もちろん喜んでもらえれば最高だが、面白くないこともあるだろう。きちんとした批判であれば、悪い評判をもらうことも厭わない。
しかし、読んでさえもらえないのは、哀しいことだ。せっかく作ってみたのに、読んでもらえないままに埋もれていくのは、哀しい。
私の好きな『〈物語〉シリーズ』の中で、神原駿河というキャラクターが、こういうことを言っていた。
『どうしてみんな、人と会うことを避けるんだ。人と人は、まず出会わなければ何も始まらないじゃないか』
同じことは、小説にも言えるだろう。読んでもらわなければ、物語は始まらないのだ。
だから私は、お話を書くのである。
私は書きたいものを書く。周りに流されるのは嫌だが、分析は反映させたい。
分析というと大仰だが、いろいろな方の書いた話を読んで、自分なりに得た考えを反映させるということだ。
たいていの人がやっていることだと思うし、ごくありきたりな行動だ。
そうして腕を磨いて、より多くの方に喜んでもらえるような物語が書けるようになれば、それ以上のことはないかな。
まあ、こう偉そうに言っている私だが、来月上位にいるという自信なんて、これっぽっちもない。なにせ、まだ一週間も経っていない。
他人事だから偉そうにして、なにやらもっともらしいことを言っているだけだ。
ただ、そんなに間違ったことは言っていないと思うのだが、どうだろうか。
***
さて、今回はここで終わり。いかがだっただろうか。つまらなかったでしょうか。甘んじて受け止めます。精進いたします。
偉そう? そうですね。書き終えてから、何を言ってんだ私と思いました。わけがわからん。
それはそれとして。
他にも気づきはいっぱいあったし、おそらくランキングに影響を与えているであろう戦略というか、まあそんなものも少し見えたのだが、もう飽きたししんどいので書かないでおく。
と言うか、エッセイで調査・研究はしんどいわ。
次は、もっとだらだらした感じで書いてみます。本当にどうでもいい感じの、毒にも薬にもならないような、そんなことを書きます。
ここまで私ごとき者の書いた文章に長々とお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
それでは、最後は私の好きなこの言葉で、締めくくらせていただきます。私の好きな作家さんが、あとがきで毎回使っているフレーズです。
もし。もし、このエッセイをおもしろいと思っていただけたとして。
もしもご縁がありましたなら、いつの日か、また、お目にかかりましょう―――――。
平成二十九年四月
笹石穂西