ー第六話ー 憎悪の転生者
---んん、ここは・・・どこだ?
てか、頭にくるあの声が、何かいっていたな。
魔力切れ・・・?魔力なんか使ったか?
切れてただろうに体は人のままだし。
むむう、この世界の常識はわからん。
・・・周りを見ていくか。
俺が今さっきまでねていたのは、石の上だ。
ちょっと遠くに俺が誕生した森がある。
そして周りは110㎝くらいの高さの家みたいなのがたくさんある。
俺がスライムの体のときならとても大きく感じただろう。
だが、その中で一際ぐっときたところがある。
人の体である、俺の体をはるかにこえる大きさ。
その頂上は見ることすらかなわない。
色は白を基本とした、鮮やかで明るいものだった。
見た目だけは城と言われれば納得しそうな大きさだった。
突如、上からガラスの破片らしきものがおちてきて、俺の目の前に刺さった。
かと思えば、突然変形しだし、そしてそれは一つの生物へと変形していく。
優しそうな顔をし、しかしその目は圧倒的な覇者のものをした、一人の老いた男へと。
そして目を見開き、こういった。
「はっはっは、今年は人化を行えるものが20人もいるのか。こちらとしては人材としてほしいところだが・・・どうかね?君、我が学園のエイジメリヤに行く気はないかい?」
「え?あの、あなたは・・・?」
「む?私のことを知らないのか?」
「ま、まあ・・・」
今日あったばっかだからな。
「まあそんなことはいずれわかる。それよりも、さっきの質問の答えは?」
ふむ。
学園でなにを教えてくれるかわからないな。
「学園ではなにを?」
「魔法を覚えたり、他種族との闘い方や情報、そして人化が使える君のような子だけ、特殊な授業がある。他にもいろいろあるっちゃあるけど、そこらへんは直接見てほしい」
魔法か。
俺は魔法は操る程度はできるが、ほかになにができるかはしらない。
他種族のことも知らないといけないし、この男のことも。
こっそりと解析してみると暗闇だけが見えるという現象がおきた。
・・・行くだけの価値はあるな。
「その学園・・・エイジメリヤに、行かしてください」
「もちろん。少し前に作られた学校だったし、今日を入学式にしよう。さあ、これを持って、あの白い建物に行ってこい!」
そういって、一枚の紙を渡された。
その紙には、『村長の名のもとに、この子がエイジメリヤの試験に入ることを許可する』と書かれていた。
優しい人。
というよりも・・・ええ?
この人、村長だったのか!
村長に書いてもらうとか、結構やばいことしたな。
そして俺は逃げるように学園へ走り出した。
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近くで見るとより迫力のある学校だな。
門のまえまでいくと衛兵っぽいスライムがうるさかったが、紙をみせると試験会場まで連れていってくれた。
試験会場はどうやら二つあるらしい。
スライム型と人型で分かれている。
どちらもテストは同じらしいが、分けられてる理由を聞くとだまりこんだ。
どことなく、差別のにおいがしたが、俺は人型の方に行った。
どうやら、個室でまっておくようだ。
そこから長い長い時間がたった。
いかついおっちゃんがきた。
無言で入ってきて、紙を渡してきた。
紙とかどうやってつくってんだ?と疑問も感じたが、聞くのはやめておいた。
紙には緑色でこう書かれていた。
『試験の内容はいたって簡単。他人を殺したりして、君の強さを見せるだけだ。そして上位150名を、我が校の入学生として受け付ける。注意事項なんかはない。好き勝手してくれたまえ。制限時間は私の気が済むまでだ。この紙が配られた時から、試験を開始する』
・・・。
適当すぎる。
さすがにまだ殺し合いはしてないよなと、そっと部屋からでて周りを見る。
「・・・ドーン。」
うおっ!?
横から声がして、避けようとする。
だが、遅れた。
「あ」
右手に当たった。
「・・・?」
痛くない。
しかし、異物感が右手にある。
すっと、目を向ける。
・・・そこには、原型がわからない肉片があった。
「え?」
思わず声を上げる。
痛みは、その存在を目に入れて、理解したのと同じ時に来る。
「―――!!」
痛みをこらえ、俺の右手を肉片にした本人に向け、解析する。
*****Lv*
名前:無し 状態:無し
HP:**
MP:**
攻撃力:**
守備力:**
速度能力:**
魔力循環能力:**
スタミナ:**
体内エネルギー:**
装備
・維**衣
スキル
・****
・****
・****
・****
・****
・****
ユニークスキル
・****
魔法
・****
・****
・****
技術
・****
解析失敗しました。
「「ああぁ!!」」
俺が頭を抱え叫ぶと同時に、相手も頭を抱え叫んだ。
このしっぱいした量はやばい。
失敗した情報の一つ一つが俺の頭を熱く、痛くしていく。
奴も同じような状態になったのだろうか。
俺のスキルは一つしかしっぱいしないから、そんなに痛くないはずだが・・・。
俺のスキルがすべて奴には見られていないと考えると・・・。
そんなことができるのは、スキルの&%)ヱ‘*1ぐらいだが・・・。
これはいわゆる転生特典というスキルだ。
・・・確認のため、日本語で聞いてみるか。
「お前はなんだった?」
「!!?・・・・・・日本人?」
まじか。
こいつ、俺と同じような転生者だ。
「俺と一緒にたたかわな・・・」
「もうだれも、しんじない」
すべてを言い切ることはできなかった。
気付けば目の前にきて、手を前に突き出していた。
「ドーン!ドーン!ドーン!」
・・・あ、そういう名前なのね。
とどうでもいいことに気付きながらすこし顔をゆがめる。
だがな、俺もおまえにまけない変な技名があるぞ!
「謎光線! 謎光線! 謎光線!」
相手の方も少し顔がゆがんだ気がする。
俺が出した謎光線と、奴がだしたドーンがぶつかり合う。
・・・だれがどう見ても、おかしな奴らの戦いだ。
ただ、俺の方が・・・!!!
弱い!
「謎光線が負けただと!?」
「その名前やめようよ!」
「お前こそドーンてなんだよドーンて!」
自分のことを棚にあげ、口喧嘩する。
ドーンの光線を避けたいが、この至近距離じゃ避けれない。だから・・・
「吸収!」
―――全てを、おれの力にする。
「なっ!?」
なにっと言いたげな顔をするが、そんなことは言わせない。
なにも言わせず、おれは押し倒す。
「もう一度聞く。――――おれと、一緒にたたかわないか?」
「――――無理、かな。もう、だれも信じれないや・・・。」
「どうして・・・」
「無理だって、言ってるんだよ!!」
ぼわっ!!
体が吹きとばされる。
地面に体をぶつけ、体が擦り切れていく。
「――――!!!」
「無理、無理なん・・・――――人間なんて、《死ね》ばいいんだ」
突然声の質が変わる。
あがっ!!
「なん、だ?これ、は・・・」
破損していないのに、体がスローにしか動かない。
まともにしゃべることすらできない。
「あぁ、なんで体が動かないかわからない顔をしてるね。僕がさっき使った呪文は、体と精神を分離する技なんだ。喋れてる君の方がいじょうなんだよ?すごいね、ハハハ」
無機質な、恐怖すら感じる声で、そのなにかはしゃべった。
―――――こいつは、止めないといけない。
そのかすれる意識をフル活用して、無理に立ち上がろうとする。
――――だが、それはかなわない。
殴り飛ばされる。
「わかんないかな?君を殺すかどうかは、僕が決めるんだよ?変に動かないほうがいいんじゃないかな」
その、憎悪の塊のような目をした、化け物によって。