転生依頼受付開始
気が付いたら真っ白な部屋でお爺さんとキャリアウーマンとの3人でお見合いしてました。
足下には私を殺した自動掃除機が元気よく活動中……て、おい!
「あ、お嬢さんは少しお待ちくださいね。
お爺さんはこちらへどうぞ」
キャリアウーマンが真っ白な応接セットにお爺さんを誘うもののお爺さんの方はキャリアウーマンを無視して困った顔で私の方を見ているばかりで応接セットに向かおうとはしない。
「外人さんは苦手での…」
暗に『一緒に来てくれ』との空気をにおわせてくる
緑色の髪をひっつめお団子に結い上げた白人ぽいキャリアウーマン風白スーツ女性は『保険のセールスレディ』にも似た雰囲気で『デキる女』のような場を支配するような力も信頼できる感じも見られない。
「少し離れた所まででしたらご一緒します
声が届くところで待ってますね」
お爺さんをエスコートしながら横目で自動掃除機を睨んでやった。
交差点で落とした紙袋の中身がアイツだったのだ。
ヤツは右折してきた車にはねられた拍子に私に向かって一直線に飛んできたっけ
ま、紙袋が破けたのは『ヤツの体重のせい』だけとは言えないし、信号の青点滅で焦っていたとはいえ私がヤツを見捨てて横断歩道を渡りきるのではなく…もしも運転席からも見えやすい私が荷物とともにいたなら右折してきた車の方だって一時停止してくれたのかもしれない。クソッ!
でも一瞬の判断をミスっただけでも人間て簡単に死ぬんだね。
あ、あのセールスレディぽいのは女神様かしらん
お爺さんは自分が死んだ事を自覚してないみたいだから女神様が何を説明するにしても時間かかりそうだな
やぱ『転生』とかさせてもらえるのかしらん
あの職人みたいなお爺さんが女神様から何かチート能力貰うとしても交渉とか苦手そうだしろくな能力もらえないんじゃ……
「……ですから貴方はもう死んでいて……」
まだまだ時間かかりそう
◇◇◇◇◇
とうとう見かねて口出ししてしまっていた
白い部屋には私のアイデアで女神様が投影してくれた三途の川と賽の河原。
応接セットのところはお花畑にしてあるけど遠くには閻魔大王様の映像も見せているんだよ。
これでお爺さんも自分の死を簡単に受け入れてくれたんだから我ながらアッパレよ
「はい『転生』というのはですね…」
説明しているのはなぜか私。女神様はそんな私とお爺さんにお茶をいれてくれている…通訳するだけのつもりだったのに……面白すぎる
女神様からいただくチート能力についても私が交渉してみるか
◇◇◇◇◇
転移とか転生について何も知らないお爺さんは宮大工だった知識と能力を引き継いだだけで今生の記憶は上書きできるよう削除されてから異世界に生まれ変わるのを承諾するのか拒否するのかを女神様から打診されている。
つまんね
チートは?
「チート?私にそんな権限も能力もありませんよ」とか
え?そ、それじゃ!
もしかして私にもチートなし?!
◇◇◇◇◇
「お蔭様で助かりました」
女神様、腰低っ
いい人みたいだね
でも、期待も薄っ
◇◇◇◇◇
「特殊能力を持たない女性への転生依頼は極端に低いので……」
………だよねぇ
女神様から半年以上望まれてやっとここに転生してきた自動掃除機は元気に活動中……
う、うらやましい!
誰かを助けたわけじゃなし
誰もが望むような英雄なわけでもないし
神様に殺されたわけでもないし
どおしようっかな
このまま死んでまた輪廻転生に戻る?
せっかくここに来られたのに?
だいたいこの部屋の清潔な白さを保つべく奮闘しているのは私の掃除機だぞ!
あぁ。お爺さんに同情して意気揚々と通訳していたさっきまでの自分が恥ずかしいわ
あ、私?
掃除機だけ転移させるつもりだったのがたまたま病死したお爺さんと同時刻だったせいで同時転移に焦った女神様のミスで掃除機とくっついていた私までここに一緒に連れて来られただけだってさ!
「あ、ちゃんとした事故死で問題なく完璧にお亡くなりになったと処理されておりますのでご愁傷様ですがご心配なく」ですと
くー!!
女神様は悪くないんだろうけど
なんか悔しい!!!!
◇◇◇◇◇
異世界から地球への召喚依頼は結構多いらしい
特に動物
ダイオウイカや豚が人気らしくて女神様はお爺さんとの話の合間にも豚を1頭転移させていたし私との話が始まってからも豚1頭を転移させている
なんでもオークとかいうモンスター種が人間との混血化で絶滅の危機なんだとさ
へええ
て! 豚、人気ありすぎ!
それにオークが絶滅しちゃダメなんかい!!
あたしゃ豚より下かよ。トホホ
◇◇◇◇◇
私、『転移転生召喚株式会社』に就職しました。
はい。女神役として
チート?
私にそんな権限ございません。
前の女神様?
はい。前任の女神役もご自身が転生依頼あるまでのアルバイトさんでした。
彼女も粘ったらしいんですけど……
諦めてご自身の星の輪廻転生の輪に戻られましたよ
元々地球担当になるには地球の知識が足りなすぎると憂いていたようで上司の承認がおりたとたん最低限の引継ぎだけでものすごく素早い退職でしたね。私としては1年くらいご一緒したかったです。
はい、わたくし女神ではありますが絶賛転生依頼受付中でございます
どなたか『特技不要の若い女性スタッフ』を募集している異世界責任者をご存じありませんか?
地球にならいつでも戻れるんですけどね
『魔法少女』になってにっくきオークを倒したいんです
ま、八つ当たりってもんですが