84、王帝同盟覚書締結 (副題:帰宅への道のりは………)
大変お待たせいたしました。
「お父様!! わたくし、この方と結婚したいですわ!! 」
皆、目を白黒させ、闖入者が発言した内容について頭をフル回転させている。いや、一人を除いて………
その人物は、顔を般若のように歪め、殺意すら抱いていた。普段ならば首を刎ねていたであろう。しかし、それをしなかった理由は二点ある。一点目は、バラン老をお父様と呼ぶ人物が只者であるはずがない点。もう一点は、ベリアルに血が掛かる危険性があったから。まぁ、ルリが懸念したのは、後者であって、前者は多分どうでもよい点なのであろうが、同盟国となるかもしれない大事な国との取引を邪魔するのは本意ではないために上がった点である。
正常な反応をしている者の中で、真っ先に、内容を理解したバラン老は、慌てふためきながら、言葉を発する。
「ベリー!! 何を言ってるのか分かっているのか!!! 」
「百も承知ですわ!!! わたくしは、この方と結婚したいのです!!!! 」
百も承知って、俺が何処の誰だか知ってるのか??そんなことはあるまい。数時間ほど前までは、仮想敵国だったはずなんだけど………
バラン老はどうしたらいいものかとこちらに目線を送って来るが俺は目を反らさずにはいられない。だって、後ろから物凄い殺気が発せられてるのだから………
闖入者は火に油をそそがないで頂けないであろうか。ルリが般若を通り越して、真蛇に成ってるよ。この後、誰がルリを宥めるのか。俺しか居ないよね。でも、何も言わなかったら………
あれ、可笑しいな。殺気の発生地点が後方と前方に1つづつ増えたんだけど………
そして、震え始めたバラン老。いや、俺も震えてる。一刻も早く何とかしないと爆発する。
「バ、バラン老。そ、そちらの方は……… 」
「あ、あ、あぁ。娘のベアトリーチェじゃ。ベアトリーチェ、此方は、オスリス帝国皇帝べリアル・オリアス・セアル・オスリス陛下じゃ。挨拶をせい」
「ご紹介頂きました。ベアトリーチェ・バラン・ベアリーナ・サタルでございます。べリアル・オリアス・セアル・オスリス陛下。いえ。将来のだん……」
ベアトリーチェの自己紹介中に言葉が続かない。何故かと見遣ると………
見なかった事にすることは出来ないだろうか。うん。見なかったことにする。だって、ベアトリーチェの後ろに回って、鈍く光る物を首に当ててるメイドが居るんだもん。無視できないですよね。分かってますともでもね………
はい。
「あ、あの、ルリさん。そ、そ、その手に持ってる銀色の物は何かな?? あと、ベアトリーチェ皇女殿下を放してあげよっか?? 」
「いえ。心配要りません。すぐに首を切断してから放しますので……… 」
「いや、いや。首を切る前に放して!! 話し合いましょ。ね 」
「いえ。問題は鉄と血によって解決されるのです」
「いや、ルリさん。いつから鉄血宰相に!! ではなくて、話し合おう。ベアトリーチェ皇女殿下も悪い人じゃないと思うから」
「いえ、極悪人です。帝国皇帝とつるんでオスリス帝国を傀儡にしようとしているのですよ!! 」
「いや、そんなことはないと思うが……… だって、バラン老を見てみ。驚愕と悲しそうな表情が入り交じって何とも言えない。これが、策を仕掛けた人の顔だと?? 」
「………………し、しかし……… 」
「バラン老も何か言ってくださいよ。娘さんが三途の川を渡ってしまいますよ」
「昔、ベリーはお父様と結婚するて言って居ったのに…………」
「昔話が聞きたいんじゃないんだよ。娘の命が懸かってるんだよ」
なぜ、今さっき顔を見ただけの他人の娘のことをこんなにも一所懸命考えているのだろうか。てか、他に止める奴は居ないのかよ‼‼
「娘はベリアルが引き取ってくれると信じているから大丈夫だよ」
「火に油を注ぐな‼‼ この耄碌爺‼‼」
「ベアトリーチェ。この世に思い残すことは??」
もう。いいか。この茶番を終らせる。
ベリアルが猫を被るのを止めて素を出すことにした。
「ルリ、ナイフをベアトリーチェ皇女から放せ。ベアトリーチェ皇女、この話は聞かなかったことにする。バラン老、同盟を素早く成立させるぞ。文句はないな。いや、拒否権はない」
俺はこの場にいる全員を睨み付けた。この話が続くと確実に一人は死ぬことになる。その前に同盟だけでも成立させておくと、強大な軍事力を持った仮想敵国が減ると内政や戦争が有利に進むものだ。
「同盟をさっさと締結させましょう」
「う、うむ」
俺は柔やかにバラン老に話しかけた。
その後、バラン老に頼んで二枚の紙とペンを用意してもらい、ナヴォワジルに二枚の覚書を作成させ、二枚とも俺とバラン老が確認し、二枚ともサインをし、紙の上部をずらして二人の略式印を押し、割印を製作する。そして、ここで問題が勃発する。俺が上部の紙をバラン老に渡そうとすると、バラン老は固辞し、下部の紙を手に取ってしまったのだ。
「バラン老。原本を御持ちください」
「いや。こちらが招いておいて、原本を受け取れるわけなかろう」
「いや、しかし、作成したのは、我が方ですから」
「御客人に控えを渡すことは、我が帝国の恥である」
「分かりました。帝国の云々を出されると引くしかありませんね。今回はその様にさせて頂きます」
仕方なく、仕方なく。折れることにした。
その後は、和やかにバラン老と握手を交わして、帰宅しようと、扉に向かおうとしたとき…………
「父上‼‼ オスリス王国に攻め込むチャンスですぞ‼‼ 」
そう。二回目の闖入者の乱入によって、応接室の扉が開いたのであった………
これまた波乱の予感………
これこそ人死ぬね……………
まだ、首繋がってるのか…………
俺、いつ帰宅できるの??
帰宅への道のりは遠いですねwww
私がこの作品を投稿したのが三年と六ヶ月前。
その当時は高校生でしたww
今はコロナの影響で全然まえに進まない就活生です。こんなにも時間の経過が早いものなのですね。
そして、愕然とするこの話数………84話
全然進んでないですね。頑張ります。
一応、第二部、第三部の構想はあるので、第一部の途中で投稿を辞めることはないと思います。まぁ、新しいお話の書き溜めは有るのですが新作を出すと確実に投稿できなくなるので止めてるのですがね。
小国の王の第一部が完結するまでは頑張ります。
読者の皆様へ
こんなにも遅足な作品を待ち望んでいらっしゃる読者の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございます。終わりの挨拶みたいになってしまいましたが終わりませんのでww
今後とも『小国の王』と黎明の桔梗を宜しくお願い致します。
誤字脱字がございましたらご報告宜しくお願い致します。




