76、小国群連合戦争・論功行賞
明けましておめでとうございます。
今年も作者・作品とも宜しくお願い致します。
今年、2018年が読者の皆様のよい年でありますように願っております。
オスリス王国王都の謁見の間
中央の赤い絨毯を挟んで左右両方に三列縦隊で皆が跪いている。カタナスは、俺が座っている玉座の後ろで立っている。こうして見ると、半数以上が騎士爵って何なんだろうか? 爵位の層を厚くしていかないとな。騎士爵の者たちは抽選に当たってこの場にいるのだしな。聞いた話によると抽選会は白熱したそうだ。
等と心の名かで思っているとデリックが声高々に宣言する。
「此より小国群連合戦争に於いての論功行賞を始める。ここで第三功まで述べる! 」
唾を飲む音が聞こえるほどに静かになる。今回の戦争は誰が第三功、第二功に入っているか分かっていないのであった。第一功はあの人であろうと予想はできるが、後の二つはさっぱり。
「アグラン・ナベリウス公爵、前に」
アグランは、立ち上がり赤い絨毯の中央に二・三秒立って玉座まで三段ある階段の踊り場へ向けて歩き出す。そして、階段をひとつ上り跪く。それを見た俺は玉座を立ち上がり階段を二段階下りる。
「第一功、アグラン・ナベリウスを元帥に昇格。そして、新設する戦略参謀本部の戦略参謀総長に任ずる。第一オスリス国軍将軍はそのままとする」
「ありがたく」
アグランはゆっくりとした足取りで元の位置に戻り跪く。俺はというと、立ちっぱなし。一々玉座からここまで来るのが面倒なだけなのだが。
「クロケル・アイゼンルワール、前に」
謁見の間がザワツク。戦争相手の大将軍がこの場にいるのがおかしいのに第二功ときたザワツクのも当然なのだが、アイゼンルワールは、堂々とした出で立ちで階段の踊り場までやって来る。
「第二功、クロケル・アイゼンルワールを男爵に叙爵の上、伯爵に陞爵。軍務省の少将に任じる。そして、第一オスリス国海軍将軍に任命する。それから、新設する戦略参謀本部の戦略参謀次長に任ずる」
「あり「おかしいでしょう! 」」
神聖な論功行賞を汚したのは元中立派トップのハルトル・ニトナトル侯爵。今の政をよく思っていない人の一人だ。国家転覆も視野に入れている人物でもある。だが、なかなかうまくいっていないみたいだ。元中立派のメンバーにもほとんど見放されている。ある意味かわいそうな方だ。
「ニトナトル侯爵、何か御不満でも? 」
「アイゼンルワールへの褒賞は功に見合っていない! 過大評価だ! 」
「そうおっしゃられても困りますね。私は正当な判断をしたつもりなのですがね。では、私がなぜこの様な褒賞にしたかお話ししましょう。マカロン連邦は、アイゼンルワール将軍がオスリスに旅行をしている時に暴走しオスリス王国への侵攻を決定したのです。しかし、アイゼンルワール将軍のおかげでマカロン連邦の都市はすべて無条件降伏をして、敵味方合わせて一滴の血も流れ出ていないのですよ。これを評価したからこそこの様な過大にも見える褒賞になったのです。お分かりですか? 」
「しかし、マカロン連邦の都市が我が軍を脅威に思い無条件降伏をしたのだ! 」
「そうかもしれませんしそうじゃないかもしれません。ですが、この神聖な論功行賞を汚している事実は変わりありませんよ。ニトナトル侯爵」
「私目は、陛下に正当な判断を求めているのだ! 」
「私はそろそろ頭を冷やせと言っているのですが? 出ていかれますか? 」
「陛下!! 」
「近衛兵! ニトナトル侯爵はご乱心だ。退場される!! 」
「「「御意」」」
ニトナトル侯爵にご退場が叶ったので邪魔するものはいないはずだ。アイゼンルワール自身は、素知らぬ顔して、茶番劇を横目に元の位置に戻っていた。デリックも何もなかったように次に進める。
「ウィルフレッド・ラングリー子爵、前に」
ラングリー子爵は、今さっきの茶番劇を引きずっているようで顔が引きずっている。そんな顔で踊り場までこられても。
「ウィルフレッド・ラングリーを伯爵に陞爵。少将に昇格。そして、新設する戦略参謀本部の所属とする。第四オスリス国軍将軍はそのままとする」
「あ、ありがたく」
今に引きずっているようだ。そして、所属が気に入らなかったかな? 俺はラングリー子爵が踊り場を降りたのを見て玉座に向かい腰をおろした。すると、デリックが声高に
「小国群連合戦争に於いての論功行賞を終了する。国王陛下が退場される」
俺もう退場するの? 退場するの雰囲気が出来上がってしまった。デリックめ!
俺は抵抗するように玉座から腰を上げてから声を出す。
「後で、デリック、アグラン、ナヴォワジル、アイゼンルワールは、執務室に来い」
「「「「御意」」」」
デリックは、苦虫を潰したかのような顔をしている。デリックの思惑が功を奏しなかったようだ。俺の完全勝利だ!! いつも通りのことをするということだ。
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