74、失態
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応接室の静寂に終わりを告げるものが来た。扉を三回ノックする音がして、若いメイドが御膳にアンティークスタイルのダイヤル式電話を乗せて応接室に入ってきてから声を発した。
「レザンスカ大臣閣下、来客中に失礼いたします。陛下より御電話で御座います」
「ドラバス、電話をスピーカーにしてくれるか? 」
「かしこまりました」
ラン・ドラバスは、ダイヤル式電話の受話器をいじり始める。
「ジル、それはなんだの? 」
「電話というものです。遠くにいる人と会話ができる道具です! マカロン連邦には御座いませんか? 」
「無いの」
「レザンスカ殿、どの様な原理で動くのですかね? 」
「ディランド殿でしたか? 」
「はい」
「私もよくわかっていないのです。陛下が創られた物の原理はよくわかっていないのです。陛下の頭の中にはあるようですが、凡人にはわかりかねます」
「そうですか」
「ジル、これが欲しいの! 」
『残念ながらお売りすることができません。アイゼンルワール大将軍』
「陛下! いつからおき気になっていたのですか? 」
『応接室に入ったときから少しは音が聴こえていたからな。いつからといわれてもな? 回答に困る』
「「「物が喋った(の)(ね)」」」
『驚かせて申し訳ない。私は、オスリス王国国王、べリアル・オリアス・セアル・オスリスである。貴殿方のオスリス王国訪問を心から歓迎いたします! 』
「あ、有り難き幸せ! 」
『私も時間が無いものでさっそく本題に入られてもらう。貴殿方は、我が国への亡命希望と言うことでよろしいですか? 』
「その通りで御座いますの。国王陛下! 亡命を認めていただけますかの? 」
『認めましょう! 恥ずかしながら我が国は、人材不足です。優秀な者は喉から手が出るほどに欲しています。しかし、無条件では信用には足らない。よって、貴殿方には、マカロン連邦の連邦政府の反オスリス王国派を捕らえていただきたい。これを成した暁には、今度新設しようと思っているオスリス国海軍のオスリス国海軍少将に任じようと思っています。悪い話ではないと思うのですが? 』
「その様な好条件でよろしいのですかの? 我々には損がないように思われるのですが? 」
『簡単なことでしたか! 一応損はすると思うのですが? マカロン連邦の住民に裏切り者と後ろ指を指されるかもしれないのですよ? 』
「いえ、その様なことはありますまいの。要らぬ火を国に持ち込んだ奴らが指を指されるのですの。一時は、我らが後ろ指を指されるかもしれませんがの。不躾なお願いではありますがの、もう一つお願いしたいことが御座いますの」
『おっしゃってください』
「マカロン連邦の連邦政府の親オスリス派をオスリス王国に登用してはいただけませんかの? 」
『よろしいですよ。しかし、こちらが試す条件を合格できた方だけを登用させていただきますがそれでよろしいですか? 』
「宜しくお願い致しますの」
『これで、今後の方針が決まりましたね。そうそう、アイゼンルワール殿の部下の皆さんが、連邦政府に殴り込みの時には、左の二の腕に赤の布を巻いといてください。こちらが味方に銃口を向けないために。宜しくお願いしますよ! それでは! 』
ガチャン。と音を鳴らして、メイドが受話器を電話の上に置く。そして、用が終わった様で応接室から出ていく。ナヴォワジルは、笑顔になって冗談ぽく言葉を紡ぐ。
「では、師匠、連邦政府まで殴り込みに行ってらっしゃい! 」
「今から、国に蜻蛉返りしても数日かかるの。オスリス国軍に追い付くかどうかというところだの」
「ご心配なく。一日もあれば帰れますよ」
「どの様にして帰るのかの? 」
「地下鉄を使うのですよ! 」
「地下鉄は、農業都市レバントンより東には線路がないはずだの? 」
「一応注釈がつきます。民間用としてはと。軍事用の線路は連邦政府のある首都マンロニアまで有りますよ。まぁ私も今さっき知ったのですかね」
「連邦は、喧嘩を売る相手を間違えたの」
老人は、頬を引釣ながら言うのであった。
言うなれば、マカロン連邦始まって以来の大失態であった。オスリス王国の勢い、軍事力差、経済力差を焦ってしまい見誤った結果、過去に類を見ないほどの取り返しのつかないことをしてしまったのが運の尽き。いや、その様な者たちに政を託した民が悪いとするならば、連邦政府の汚点ではなく、マカロン連邦に住む民全体の汚点なのかもしれない。
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