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小国の王  作者: 黎明の桔梗
小国群連合戦争編

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73、アイゼンルワールとジル


更新していない間にブックマーク数が10以上増えて146になりました! 読者の皆様ありがとうございます。

 




 一団の長の老人とディランとマークが王城の応接室に通された。他の者たちは、控え室へと誘導された。

 十人以上入る応接室は、オスリス王城にはないからである。いや、相手方が3人以下としか想定されていないのである。四人以上はお断りさせてもらってるのです。

 老人は長椅子に座り、御供の二人は老人の座った長椅子の後ろに立った。三人は、緊張した面持ちで応接室に入ってくる者を待っていた。特に、ディランは、胃がキリキリするほどに。

 そこに、スラッとした知的な男が応接室に入ってくる。そして、メイド服を着た者も入室してきた。

  男が部屋に入ってくると同時に老人は、立ち上がり軽く頭を下げる。老人は、男に座るようにうながされて長椅子に腰をおろす。それを見た男が老人と反対側の長椅子に座った。

 老人は、男が入ってくる前と打って代わり、いつも通りの老人へと変わっていた。その代わり様に、御供の二人は内心驚く。そして、二人の顔は、大いにひきつっていた。二人は顔に出ていないと思っているが全然隠せていなかった。三人とも場違いな程に。今からとても重要な話し合いになるとゆうのに。

 一番最初に口を開いたのは、男、ナヴォワジル・レザンスカであった。



「どの様なご用件で、わざわざ大陸の中央までお越しになったのですか? アイゼンルワール大将軍閣下」

「オスリス国王のお顔を見に来ただけだの」

「残念ながら陛下は外出中でして、この城には居られません。また、改めてお越しください」

「それは、残念よの。仕入れた情報では、昨日帰られる予定であったはずなのだがの? 」

「予定通りならばそうでしたが、陛下が予定を変更なさいました。しかし、何処で漏れたのでしょうか? お聞きしても? 」

「風の噂じゃの」

「そうですか。城の補修をしなければなりませんね。ご忠告ありがとうございます。それで、アイゼンルワール大将軍閣下、本当の目的は何なのでしょうか? 」

「ただ、オスリス王の顔を見に来ただけだの! ついでに、オスリス王国の船頭がどの様な人物か探りに来たのじゃの! 」



 その発言に、ナヴォワジルはピクリと眉を動かした。その仕草を老人は見逃さなかった。老人それを見て微笑ましく思った。自分は隠しているつもりでも全然隠せきれていなかった昔と同様に。

 その事で、老人は、オスリス国王を操るものがアイン・ザイルから大臣をしている誰かに変わったと思っていたが間違いであることに気が付いた。ジルのあの行動は、本当に不快でないと出てこない一瞬の表情であるからだ。

 老人はオスリス国王は誰にも指図されずに政をしているのだと知ることになった。オレバス大陸のほとんどの国は、オスリス国王は誰かに操られていると思い込んでいる。いや、確信している。年端もいかぬ子供が政なのど出来るわけがないと。



「すまなかった。ワシが悪かった」

「いいです。それで、本題の方は? 」



 ナヴォワジルが言い終わると、老人、アイゼンルワールは、雰囲気を一変させた。老人が戦場に立った時に纏わせる独特なピリついたオーラを交渉相手に叩きつけた。だが、後ろにいるはずの味方の二人もオーラにのまれる。真正面からオーラを当てられたわけではないが二人ともたじろいでしまった。

 しかし、オーラを真正面から受けたナヴォワジル本人は、ただ、何もなかったかのように振る舞い、そして、殺気にも似た粘っこい目には見えない力を老人へと向ける。老人へと向けられたその見えざる力は容赦なく後ろに立つ二人にも襲い掛かる。二人は、部屋から出ていきたい一心であったがその様なことを許すような場ではなかった。

 ディランは、あることに気付く何故、オスリス王国で()()の最高峰である大臣のナヴォワジルがこの様なオーラを放てるのか? これは、戦場で少しずつ経験を積んでいかなければ出来ない芸当の力だ。疑問に思ってしまう。



「昔よりオーラの粘度が上がっておるの。そして、人を嘗め回すような感覚気持ち悪いの。ジル! 」

「それは仕方ありません。先に師匠がオーラを放ったんですから! それに、弟弟子がどの様な人物か見てみたかったので。おあいこと言うことですよ! 」

「今回は、仕方ないの! しかし、何故こんなにもオーラが粘っこくなるのかの? 」

「私の知ったことではありません! 」

「つれないの! 老人をいたわるのだの! 」

「何処が老人なんだか」

「お主、言い寄ったな! 」



 二人の言い争いを見たディランとマークの目は点に成ってしまっていた。二人は何処で知り合ったのか? それに、ディランは兄弟子がいないと思い込んでいたのだが、居た事実に愕然となる。アイゼンルワールは基本的には弟子を取らない人間である。だが、アイゼンルワール本人が気に入った人間か成長が気になる人間をいつの間にか弟子として取っていた。しかし、ディランはアイゼンルワール大将軍に誰一人として弟子が居ないと噂だっのを鵜呑みにして、アイゼンルワールの一番弟子だと思い込んでいたのがぶっ壊れたのだ。それも、自分の覇気より濃密なオーラを扱う文官の男だと知って自信が音を立てて崩れ落ちた。それもそのはず、アイゼンルワールがジルを育てていたのは、数ヶ月だけだったからだ。そして、アイゼンルワールがディランを育てようかなと思ったときには、ジルとの訓練の日々から数年たっていたからディランがそう思うのも無理なかった。

 それからしばらくジルとアイゼンルワールは、小言を言い合った。そして、またナヴォワジルが話をきりだす。



「それで、本題の方は? 」

「儂らを亡命させて欲しいの」

「真意は? 」

「故郷の地が血で濡れぬようにするためじゃの」

「アイゼンルワール大将軍が亡命されてから、その様なことが御出来になられるのですか? 」

「成せるの! 」

「確証が持てませぬ」

「貴様! 大将軍を疑うのか! 」

「マーク黙っておれの! 」

「私は、オスリス国王の大臣としてここにいるのだ! 私の本心は師匠が嘘をつかないと知っているが、オスリス国王の大臣としては、それを疑わなければならないのだ! ここでの選択のミスで国王、宰相、ひいては、国民に損害を与えるかもしれんのだから! 」

「疑って当然じゃの。して、どの様に身の潔白を証明したら良いのかの? 」

「将軍が操れる軍の規模は? 」

「六万程かの。内訳は、陸軍四万、海軍二万程じゃの」

「では、将軍の操れるものたちでマカロン連邦を内部から叩いてください」

「何故そうなるのだ! 」

「ディラン、静かにするのだの」



 アイゼンルワールは、行動としてはディランを諌めているが、表情は冷たくナヴォワジルを睨んでいる。そして、冷めた声でナヴォワジルに問いかける。



「どう言うことだの? 」

「今の状況を分かっておられないのですか? 」

「ジル、お前は何をいってるのかの? 」

「知らないと言うのですか? 惚けないでもらいたい! 」

「ジル、儂は何も惚けてはおらんの! 」

「でしたらかいつまんで今の状況をお話ししましょう。今からどうにもできないお話なので、我が国が小国群を滅ぼしたのは知ってらっしゃると思います」

「あ、あ、知っておるの。そのお陰で、連邦内が大混乱に陥ったの」

「小国群を滅ぼしたので、空白地帯の制圧を隅から隅までしている最中に、どこかの誰かさんがちょっかいを掛けてきたのに陛下がブチギレまして、そのお馬鹿さんを懲らしめるために小国群に侵攻していた全軍がお馬鹿さんの方向に向かって全速前進しているところです。もしかしたら剣を交えているかもしれませんね? 」

「そ、そ、れは本当なの、か、の」

「えぇ、本当のことです」

「あの馬鹿どもがの!!! 」

「早くしないと、どうなるかわからないですね。今の陛下の虫の居所はとても悪い。もしかしたら、腹いせに大虐殺を敢行するかもしれません」

「するかもしれんのかの? 」

「国民思いの陛下ですからたぶんしませんが、兵士たちはわかりかねますね」

「ど、ど、うすれば回避できる? 」

「先ほど言った通りに内部から叩くのですよ」

「あ、あ、わかった」



 アイゼンルワール大将軍は、オスリス国王にやって来たときのような元気ハツラツな老人ではなく、年相応な御老人に成り果てて、椅子に座っているだけであった。






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