72、白髭の老人
大変お待たせいたしました。
旧皇国の皇城でルリがもう一度紅茶を淹れに別室へ入っていった頃オスリスの王城城門前にとある男が率いた一団がやって来ていた。
一団の長と思われる髭の長さが握りこぶし二つ分ありそれでいて、手入れのいきとどいた白髭を右手で左右に触りながら老体が嬉しそうに口を開いた。
「もう、オバリについてしまったの! 電車と言うものはすごいの! 我が国に、電車があれば………の」
「素晴らしかったですね! わが国にあれば民が喜びますね! 大将軍! 王城が見えてきましたね! 」
老人の心の動きに陰りが見え始めたので、軍人にしては髪の長い男が老人の雲を取り払おうとすぐに言葉をかけた。
「ここがオスリス王国の王城かの! 素晴らしいの! これ程大きくて白堊の城は見たことがないの! 」
「噂に聞くより素晴らしいですね。大将軍。百聞は一見にしかずとは、まさにこの事でしょうね。我が国がこれ程の城を建てようと思ったらどれくらいの費用がかかり、日数を要するのでしょうかね? やはり、建国時から塩で儲けている国は違いますね! 」
「違いないの! ディラン。まぁ、まずはの、衛兵にオスリス国王陛下への謁見を申し込まなければの! 」
「では、私が詰め所に行って参ります! 」
「でわ、頼むの! マーク」
「はい。行って参ります! 」
マークと呼ばれた男は、王城城門の近衛隊の詰め所へと走っていく。マークは詰め所に詰めていた、近衛兵と二、三会話をして手紙を託した。
手紙を託された近衛兵は、上官に許可をとり、100メートル走をするかの如く城の中へ駆けて入っていった。それを見ていた他の近衛兵たちは、何事かと慌てかけていたが上官の一喝で静まり返ったが、走って行った近衛兵と話していた男を皆で見る。
男は、視線を感じてかは知らないが、爽やかな笑顔を近衛兵たちに返して老人の下へと帰ってくるのであった。
「マーク、どうであったの? 」
「上に報告するのにすこし時間がかかるそうです! 」
「すこしとはどのくらいなのかの? 」
「私にはわかりかねます! しかし、この国は、他国からの使者はほとんどが国の中枢の人間が直接会談するそうなので一刻(二時間)程はかかると思われます! 」
「一刻も待たないでいいみたいですね。情報伝達が早いですね! 」
「そのようだの! 時間を潰すことを考える時間も与えてはくれんとはの! でわ、戦場へと赴こうかの! 」
とある男が率いた一団は、近衛兵に呼ばれて城内へと赴くのであった。男たちの生死を決める戦場。幾多の能辯な者たちを屠ってきた舌戦の戦地へと。
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