70、侵攻開始
神創暦494年乾月5の陽、歴史的大事件が起こる。
この日の朝、小国群の首都及び重要都市の住民が空を見上げて指差していた。襲撃された都市一つ一つには、数機の『C-17 グローブマスターIII』が悠々と旋回していた。自分がこの空の支配者かのように。それから、数分後、『C-17 グローブマスターIII』から兵士たちがパラシュートを使い地上に降り立ったのである。
「あ、アレはなんだ! あの空を飛んでいる物体は! 貴様知っているか! 」
「隊長、小官は、わかりかねます! 」
「物体から何か出てきたぞ! なんだアレは! 」
「わかりかねます! 」
「あれは、人なのか! 」
「そのようです」
「何のために、空から人が降ってくるのだ! 」
隊長が、空を飛ぶ物体から降ってきた人間に問いかけた。『MP5』を持った怒り狂っている兵士に向かって問いかけたのであった。
「貴様は、どこのものなのだ! ここは、関係ないものが土足で踏み込んで良いところではないのだ! 早々に立ち去れ! 」
「おれは、第四オスリス国軍ウィルフレッド・ラングリー准将である。我が国は、貴国の暗殺者により国王陛下が暗殺されかけたのだ! しかし、国王陛下の慈悲である! 投降するものは武器を手放せ! もう一度繰り返す! 投降するものは武器を手放せ! おれは、我慢できなくなっているのだ! 今すぐ、武器を手放せ! 」
「貴様は何寝言を言っているんだ! そんな馬鹿なことするわけないだろ! 死ね! 」
「パーン」
「我らが神を愚弄しておいてなんたる態度だ! 」
その隊長は、次に口を開くことはできなくなった。
次々とオスリス国軍の兵士たちは、都市に降り立ち攻撃を開始始めるのである。初め、攻撃を受けている都市に居る兵士や役人、住民は、何が起きているのかさっぱり分かっていなかったのである。あちらこちらでは、乾いた音が鳴り響いていた。守備兵は、どこにいけば良いのか、隊長もパニックになり指示もない。応援要請も来ないが、乾いた不気味な音だけは木霊して、詰め所まで音を届ける。
守備兵が考えあぐねている内に、自国の国旗が次々とオスリス王国国旗へと変わっていく。
この時、やっと兵士や役人、住民が攻撃を受けていることがわかった瞬間である。しかし、国旗が変わっていることは、陥落したことを意味する。
何をされたかわからない内に落とされ、気付いたときには、何もすることが出来ない状況に追い込まれた後の事であった。
住民は、何もできずに住む土地を敵国に奪われたことを嘆き悲しんだ。しかし、ベリアス教はそこにつけこみ、住民の心を神の御業を巧みに使い信者を増やしていくのであった。
オスリス王国東の国境付近、ルバルダス平原に展開中であった第一オスリス国軍は、奇襲を受けなかった都市を次々と陥落させていくのであった。それに、オスリス国軍の『C-17 グローブマスターIII』部隊が合流して、さっきまでの勢いの比ではないほどの速さに格段に速くなり、投降する都市も増えていくのであった。
小国群纏め役、皇国の皇王執務室の窓から皇王がヒステリックな声をあげる。
「アレはなんだ! 空を飛ぶ物体はなんだ! 」
「わかりかねますね」
「物体から何か降ってきたぞ! 」
「何でしょうね」
「なぜ、お前は、平然でいられるんだ! 」
「陛下のように、取り乱してもなんの解決にもなりませんからね。それに、想像はつきますよ」
「なんだと! どこのやからだ! 」
「自然現象だと言うなら別ですが、人為的なものだと、やはり、言うまでもないとは思いますが、オスリス王国ですね。人為的なものだとですが」
「オスリスだと! 行動が早すぎないか? 国王が死んだと言うのに! 敵討ちだから死に物狂いなのか? 」
「死に物狂いで、このようなことはしないでしょうね。御亡くなりになっているのであれば、小国群の国がすべて焦土となりますね多分。オスリス国王が生きているからこそ破壊工作をしない理由だと思われます」
「オスリス王国が生きている筈がない! 」
「まぁ、皇王陛下は、この段階でも死刑は確実でしょうね」
「呑気なことを! 俺がそうならば、お前も死刑だからな! 」
「私は、死刑になんかなりませんよ。それに、陛下はオスリス兵が来るまで、この部屋からは出られませんよ。いや、出させませんから心配しないで下さい」
「貴様! 俺を売ったのか! 」
「いえ、そうではありません。私が、オスリス王国外務省情報局の諜報員だからですよ。陛下」
「貴様! 」
外からドタドタと複数人が走ってくる音が聞こえる。
「お迎えが来たようですよ。皇王陛下」
「俺は絶対に捕まらん! 死ね~」
「貴方はもっと賢い方だと思っていたのですが残念です」
「パーン」
皇王執務室には乾いた音が鳴り響いていた。
「安心してください。麻酔銃ですから!! 」
この男、麻酔銃の下りがめちゃくちゃ楽しそうにてるんですが、大丈夫なのでしょうか?
しばらくこの男のマイブームと成るとは、この時誰もわからなかったことである。これは、また別のお話。
この小説を投稿し初めて早いもので、もう一年が経ちました。厳密に言うと一昨日なのですがね。
この小説を読んでくださっている読者の皆様に厚く御礼申し上げます。これからも宜しくお願い致します。
誤字脱字がございましたらご報告宜しくお願いします。




