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小国の王  作者: 黎明の桔梗
第二次オスリス王国成長期編

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63/88

62、皇帝の右腕

 





 オスリス王国で国王陛下が失踪して明明後日、サタル帝国帝都バタクのとある執務室。



 部屋の奥の執務机にドカリと座り、書類とニラメッコする白髭と白髪をたたえる老人がおり、その執務室の前にある客人用机で書類の山と二十面相する若い男がいる。そこに、伝令がやって来る。



「皇帝陛下、申し上げます。オスリス王国は、三か国同盟に対して大勝利をおさめました。そして、バナマス聖国は、ルケニヤ山脈稜線及びオルケニヤ山脈稜線、ドーマ以南まで占領されたそうです」

「そこまで攻められたか! うむ。さがってよいぞ」

「は!」

「で、そちは、どこまで知っておるのだ? 」

「なんのことでしょうか? 陛下」

「オスリスのことでだ」

「先ほどの報告でオスリス王国が三か国相手に大勝したことしか」

「どれ程の大勝だ? 分かっておるのだろ? 」

「皇帝陛下には敵いませんな! 」

「どれだけ年齢差があると思っておるのだ? 」

「失礼しました」

「で、どうなっておるのだ? 」

「オスリス王国は、パンナタ王国とヨバタラカ公国を滅ばしたそうです。バナマス聖国は、ご報告を受けた通りです」

「この戦争で、あの国は、二か国も滅ぼしたと言うのか! ありえん。新型兵器はそこまですごいと言うことか! 」

「いえ、今回も新たな兵器が出てきたそうです」

「今回もか! 今回はどのような? 」

「防衛のための新兵器みたいです。細い筒らしいです」

「ただの細い筒ではあるまいな? 」

「細い筒から火が吹くそうです」

「魔法か! 」

「かもしれませんね」



 と会話をしながらも書頼を片付けていく二人。



「そちは、儂が死んだらどうするのだ? 」

「皇帝陛下は、その様なことを考える歳ではないですよ」

「儂ももう、80だぞ! 」

「そうは見えませんな。お若いですね」

「白々しい。そちは、儂の年齢ぐらい知っとろうが! おだてても何も出んぞ」

「まさか」

「で、儂が死ねばどうするのだ? 」

「皇太子殿下の行動次第でありますね」

「例えば、オスリスに進攻しようとすれば、そちは……どうする? 」

「勝てるのであれば支えましょう」

「その様なことは無さそうだな」

「どうしてでしょう? 」

「帝国がオスリスの新兵器並みの物をいくつか作らねばならん。しかし、どの様にオスリスの新兵器を造るか皆目見当がつかん。そして、そちがオスリスに情報を伝えるであろう? 」

「なんのことやら」

「儂が知らんとでも? そちは………オスリス王国外務省情報局の諜報員だと言うことは知っておる。そして、そちは帝国内の最大派閥の領袖。今は儂と意見が一致しているから国内が割れることになっていないが、意見が別れた場合儂の意見は通らんじゃろな」

「なんのことか分かりかねますが? 」

「とぼけおってからに。そう分かっておるのだが、そちが居らんと公務が滞る。そして、今やそちが居らんと帝国は回らないだろうな」

「私ごときが、このようなことはございません」

「そちは、帝国では重要な歯車だ。儂よりもだ。帝国にはそちが必要だ! 」

「皇帝陛下申し訳ないのですが、無理ですね。ここで私がよい返事をしたら陛下は、私に疑心暗鬼になられるでしょう。そして、私は名君にしか仕える気はございません。陛下は、歴史上類を見ないほどの名君であらせられます。しかし、皇太子殿下が名君である保証がございません。数年は仕えさせていただきます、ですが、陛下並の名君でなければ他にいかせてもらいます。暗君ならば尚更。」

「そうか。仕方ないの。そちが居れば安心なのだがな」

「申し訳ございません」

「よいよい。そちは、その様なことは性格であったな忘れかけておったわ! 」

「して、オスリス王国への今後の態様はいがが致しますか? 」

「何もせん。何かして塩を流して貰えなくなったら、目も当てられん」

「そうですね」

「まぁ、軍事行動の方は、馬鹿に任せればよい。餅は餅屋に任せればよい」

「それも、そうですな」

「今回も、こちらは静観しようかね」

「そうですな」



 執務室には二人の笑い声が響いたそうだ。




 オバリでの地下鉄竣工式より数週間後。

 此方は餅屋のラクバスク騎士国首都クリートのとある訓練場にて。



「なに! オスリスが大勝だと! 三か国も相手にして勝てると言うのか! どんな魔法を使ったのだ? もう一回調べてこい! 」

「しかし、これが事実なのです。統括騎士長様」

「ありえん。どこまで勢力を拡げたのだ? 」

「そこまでは、まだ」

「なんだと! 早く調べてこい! こちらが攻められるかもしれんのだぞ! 」

「はい! 」

「こちらから攻めるか? 」

「良いかもしれませんね。しかし、ガルメスタとの戦争を終わらしてからにされてはどうでしょうか? 南北の敵、二つの軍を相手にするのは骨がおれますからね。そして、万全の準備をしてからにされては? 」

「第二騎士長か。成る程な。そうするか。ガルメスタを強引に攻めてから停戦にする。取りかかれ! 」

「御意! 」



 餅屋の判断は速かった。餅をつくかの如く。





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