58、オスリス国王の失踪 その弐
至極真っ当なことを言おう。この状況はなんだ! 教皇が枢機卿たちを退出させて、扉の鍵を閉めらる。その途端に、教皇が飛び上がり階段を下りて土下座をした。そして、俺の空耳であつてほしいのだが、『べリアル・オリアス・セアル・オスリスしんさま』て言ったのだがなぜバレた! 自分の名前の後に何か付いたし、何『しんさま』って。それに、何かを言わないといけない雰囲気なのだが?
「オスリス様がお怒りになるのも仕方ありません。私たちの使者が無礼をしましたこと、本当に申し訳ございませんでした」
私は全然怒っておりません。意趣返ししただけです。
「教皇陛下、頭をおあげください」
「すいません。頭が回りませんでした。べリアル・オリアス・セアル・オスリス神様、頭をおあげになって教皇の椅子にお座りになってください。わたくしめの椅子では汚いかもしれませんが」
何言ってんのこの教皇は!! 何か狂信的な感じだし、あれに似てる気がする。もしや、いや間違いであってほしい。他国の王とでも言える人がだ! こんなこと有っては成らないはずだ。旧バナマス聖国領内に入ってからの違和感はこれだったのか。俺の身近な人で例えるとするならば『ルリ』だと思う。『ルリ』の忠犬レベルは高いからな。だとするならば、アデリーナ・リリアーヌ・ツァイツラー教皇陛下は、忠犬ってことに成るよな?
「でわ、お言葉に甘えまして、立たせてはいただけますので、教皇陛下も御立ちになってください」
俺が立っていて、教皇が土下座をしている光景はダメだからな。小国の王ごときが大国の王を土下座をさせている。これだけでも戦争の口実になりかねない。
と思いながら俺は立ち上がった。しかし、教皇は、土下座を絶賛継続中です。俺これからどうしたらいいの?
「教皇陛下、立っていただかなければ私が困ってしまうのですが。お立ちいただけませんかね? 」
「べリアル・オリアス・セアル・オスリス神様がお困りになられるのでしら、自害いたします! 」
「教皇陛下が自害されたらものすごく困りますね。今よりも。教皇陛下、立たれるだけで私の悩みも解決するのです。そらに、このままの施政ですとお話も出来ません」
「べリアル・オリアス・セアル・オスリス神様のお悩みが解決するのでしたら立ちましょう。しかし、あなた様とお話するとは、畏れ多いことです。あなた様は、ただ下々に御命じになるだけでよろしいのです! 」
誰かヘルプミー、この人何言ってるか分からないのですがこの人ちゃんと言語を喋ってますか? 俺には理解できないのだが。誰か訳してくれ!
「じゃあ、立て」
「はい」
教皇陛下が嬉々として立っちゃたよ。泣きたくなってきた。しかし、某アニメの立ったは感動的だが、これどこに感動するとこある? 目に水が貯まってきてしまった。教皇ってこんなにも残念な子だったの?
「べリアル・オリアス・セアル・オスリス神様、折り入ってお願いがございます」
「う? 私に出来る範囲内でしたらお応えできるかもしれません」
教皇は、満面の笑みを浮かべお願いを口にする。
「オスリス王国の属国にして下さい。よろしくお願い致します。そして、バナマス教は解散。いえ、すべてのバナマス教徒がベリアス教に改宗致しましょう! 」
教皇はとてもいい笑顔なのだが、この場面ではなかったら微笑ましい場面だ。しかし、場を考えろ!そして、教皇よ。教徒のことも考えよ。そして何よりも俺のことを考えろ。
と言いたいところだが胸にしまって。
「教皇陛下、その願いはお聞きできません」
「べリアル・オリアス・セアル・オスリス神様は、私どもを御見捨てになられるのでありますか! 私が考えるに、オスリス王国としては領土が増えますし、そして、べリアル・オリアス・セアル・オスリス神様を崇める人が増えるのですよ! 良いことばかりではありませんか? 」
「領土が広がると言うことは、他国に付け入る隙を与えるものです。そして我が国は、今回の戦争で領土を拡大させ過ぎた。今の領土を守るのもやっとかもしれません。そこに、バナマス聖国が加われば、守ることすら出来ないかもしれないのです」
「それならば、聖字軍をお使いになられればよろしいのでは? そして、べリアル・オリアス・セアル・オスリス神様の御業を御使いになられれば、その様なことはないかと考えなくてもすむはずです! 」
「私の力に頼っただけでは、本当のオスリスの力とはいえません。言ってしまえば、兵士や国民にさせるのではなく人形にさせればいい話だ。其ならば、オスリス王国の骨や肉、血に成らないではありませんか! 私が居なくなれば、オスリス王国は滅亡の道をひたすら歩くだけになってしまう。その様な国は造りたくはない。私が居なくても繁栄していける国を造らねば成らないのです! まぁ、私が居る内に楽しく発展させますがね。それから私の発展の上に新たな者の発展や発明を築いていけるようにしなければならないのです! 」
「…………………」
「教皇陛下、お分かりになられましたでしょうか? 属国のお話はまた後程お話致しましょう。今は、同盟関係のお話を致しましょう」
「は、はい!」
私は、懐から二枚の紙をだして円卓に置く。
「では、これを御覧ください。この条件で宜しかったら二枚のこちらにサインをお願いします。そして、教皇紋をこことこちらに押してください」
教皇は、考えもせずに条文にサインと教皇紋を押す。本格的にバナマス聖国の未来が心配になってきた。まぁ、今、この瞬間に決まった様なものだがな。
条文の内容が下記の通りである。
1、オスリス王国とバナマス聖国間の検問を緩くすること。
2、オスリス王国とバナマス聖国間の関税をオスリス王国で決めること。
3、バナマス聖国はオスリス王国に同盟の対価として歳入の二割を上納すること。
4、上記のことが遂行されるとき、オスリス王国とバナマス聖国の同盟が成る。
これを、読まずにサインするってやばくないか? 出したの俺だけどさ、もうちょっと考えて! そして、俺は神ではない! ここ試験に出るぞ! 覚えとけ!
「では、これで私はおいとまさせていただきます」
「べリアル・オリアス・セアル・オスリス神様、もう少しゆっくりとされていかれればよろしいではありませんか! 」
お前が居るからゆっくりできないんだよ! なんて口が裂けても言えない。
「家臣が心配しておりますから。それと、べリアル・オリアス・セアル・オスリスって長くないですか? 次回からベリアルでいいですよ! 」
「有り難き幸せ! 」
「それと、扉の鍵を開けてください。帰れないです」
「失礼しました。また、ベリアル神様にお会いできる日を楽しみにしております! 」
「あ、はい。では、また! 」
俺は、脱兎の如く部屋を飛び出して、ドーマから逃げ去った。街道から離れて人がいないところで『F-35B ライトニング II』を取り出して、オバリに逃げ帰った。
教皇は、同盟の件で枢機卿たちに怒られたのは言うまでもない。しかし、教皇は逆ギレして、枢機卿をコテンパンに言い(肉体言語を含む)負かして、同盟の話を渋々了承させた。
オバリの城では、雷が数擊落ちたのもいうまでもないはずだ。けれど、バナマス聖国と違うのは、逆ギレをせずされるがままだったことだ。しかし、約束はすぐに破ってしまうのであった。
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