53、ドーマへ
車でドーマへ行くために草原を走行中。いつも通り俺が運転しているはずであったが………、車に乗ろうとしたときに、とある左官に声をかけられた事が始まりであった。
とある左官クレイグ・ドッドは、キメリエス少将から厳命されていた。
その命令は、ベリアル陛下が車で城外へ出ていかれるときは、お前が運転しろ。とのことであったからクレイグは、陛下が車で城外へ出ていかれるのを待っていた。
カタナス・キメリエスがクレイグ・ドットを指名して厳命したのには、二つの理由があった。まず初めに、カタナスが信頼できる部下であること。もう一つは、ベリアル陛下が指導する斥候兵への車の授業?実技演習?実技講習?を興味本意で受けており、車の運転が出来る事があげられたからである。
したがって、俺が今座っているのは、運転席の左斜め後ろだ。普段隣にはルリが座っているはずだが、城を出てくるときに逃げたので代理で多分副メイド長だと思われるラン、ラン・ドラバスを連れてきていた。そして、今乗っている車は、スピード重視の『ランボルギーニ·アヴェンタドールLP1600-4 MANSORYカーボナードGT』ではなく、乗り心地重視の『メルセデス・マイバッハSクラス』に乗っている。一応右ハンドルだ。なぜお前ごときが高級車に! というお言葉もあるかもしれない。反論させてもらおう! たまにはいいではないか! と。それに今日は、運転手もいるしな。のんびりと出来る。それと、今日は隣が五月蝿くない! これに勝る喜びはない! 俺は断言できる! ちゃんとメイドの仕事をしてくれている。ランの淹れてくれた紅茶を飲みながら窓の外を見ている。この素晴らしい現状だが一つだけ、たった一つだけ、これを言ってしまえばバチが当たるかもしれないが言わせていただきたい。遅い。めちゃくちゃ遅い。時速10kmといったところであろうか。速度メーターを見てみると時速15kmでした。一応急いでいる筈なのだが? 言ってしまえば馬より遅い。
「クレイグ・ドッド准佐、もう少し速度をあげてはくれないだろうか? 今の速度では、馬にも抜かされる」
「しかし、陛下は仰いました。運転は安全第一だと! 」
「あのな、もっと速度をあげても大丈夫だ! 四倍以上でも大丈夫だから! 無理なら運転変わるが? 」
「しかし、小官は実習以外で運転したことがないのです」
「大丈夫だから。踏み込んでみなさい」
「御意」
左官は、思いきったみたいだ。関心関心。少し速いかなっと思うが、これで専属運転手ができた。今の時速わっと………時速94km 6倍ですか。ドット君は思いっきりましたね。隣のメイドさんは何も動じていない。
「陛下、紅茶のお代わりはいかがですか? 」
「貰おうかな」
恐るべしメイドさん。この速度で平然といているとは! 情けないなカタナスやティルとは大違いだな。
ドットよちゃんと前見えているのか? 涙が溢れているぞ!
それよりも気になるのがナヴォワジルからの情報だ。新たな宗教が生まれたそうだ。その宗教は、最初王都オバリから誕生し少しずつ信者を増やし広がりつつあったのだが、ある時を境に爆発的に信者が増え他国にも広がっているらしい。特に信者が多いのが旧バナマス聖国らしい。しかもほとんどが元バナマス教信者らしい。しかし、ナヴォワジルの情報なのに「らしい」が多いのは、情報を掴むとき邪魔が入るらしい。どんな奴が新興宗教を操っているのだろうか? 気になるな。まぁなんとか名前は聞き出したみたいだ。「ベリアス教」と名乗っているみたいだ。ナヴォワジルでも「ベリアス教」の実態を掴めていないようだった。
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