49、バナパンヨバ三国同盟戦争 其の玖
バナパンヨバ三国同盟がオスリス王国三城塞都市同日進攻して三週間がたった。
エフゲニー・スメルティンは焦っている。
なぜ三週間も経っているというのに、未だに伝令の一つも寄越さないのだ! もしや侵攻がうまくいって浮かれて忘れているのか? いや、ファブリス・マスグレイヴは、そのような男ではないな。では、どうして伝令が来ないのだ! もしや、苦戦でも強いられているのか? バナマス聖国のマウリシオ・アデリーナ・チカロフに無理を言って、聖字軍を寄越してもらったというのにか? 有り得んな。どうして、オスリス王国が絡むと計画通りに進まないのだ!
あの|豚(ベルナルト・スヴャトポルク・ヴァルヴァラ・パンナタ)にさえ馬鹿にされ始めたではないか! あの豚は分かっているのだろうか? 私が居なかったらとっくにこの国は、寂れていただろう。わかっているか! 胸糞悪い。
しかし、今の状況がわからんな。押しているのか、押されているのか? それとも侵攻してるのか、侵攻されているのか? まぁ侵攻されているのならすぐに伝令が来るな。三択だな。
外から聞こえる音が慌ただしくなる。兵士は駆け足、鎧の金属がカチャカチャ。いつもはゆっくりと進む馬車が馬が速歩で馬車を引く。住民たちは慌てている。
「宰相閣下、失礼します! 」
「いきなり入ってくるな! ノックぐらいしろ! で、どうした? 」
「し、失礼しました! お、王都がオスリス国軍に、ほ、包囲されました! 」
「は?」
エフゲニーは、間抜けな声を出してしまった。
今、何処が包囲されたと、い、言ったのだ? 王都と聞こえたのだが? 近隣の都市から伝令の一つも無かったというのにか? 私の聞き間違いだな!
「ちょっと聞き取れなかった。すまないがもう一度言ってくれないか? 」
「オスリス国軍によってパンナタ王国の王都ナタルタルが包囲されました! 」
「なんの冗談だ! 近隣からなんの伝令も無かったではないか! ここにオスリス国軍が来るまでに伝令が来るであろう! 」
「し、しかし、現に王都を包囲されていますので………」
「なぜ包囲される前に気付かなかったんだ! 」
「土煙が見えると共に現れ、すぐさま包囲されました」
「で、敵数は? 」
「わかりかねます」
「どう言うことだ! 」
「塔が八基あるだけなのです! 」
「塔だと! あの攻城兵器か! 」
「小官は、見たことがないのでわかりかねます」
「木造で大きな塔で上部に橋が付いたものか? 」
「違います。小官が見たものは、灰色の塔で上部に橋が付いたものです」
「灰色か………で、オスリス国軍は、何と言ってきているのだ? 」
「は! 武装解除し、無血開城の上、パンナタ王及び王候貴族の三等親までの引き渡しであります! 」
「で、断れば? 」
「王及び王候貴族の九族(同姓直系の高祖、曽祖、祖父、父、自分、子、孫、曽孫、玄孫の九代)まで皆殺しであります! 」
「猶予は?」
「一刻(二時間)であります! 」
「市民の反応は? 」
「無血開城を願っています」
「…………どのように王を説得するかだな。他には? 無いのなら退出願う」
「は! 失礼します! 」
あの豚は、認めないだろうな。下手したら、いや、下手しなくても、全軍突撃だろう。しかし、オスリス国軍はここまで、どのようにしてたどり着いたのだろう? 進路上の城塞都市・砦・を全て陥落させたのか? それならば、早すぎる? 待てよ! 前回は国土の五分の三を二週間足らずで落とした。それならば余裕でここまでたどり着ける! もしや、王都以外陥落したの…………か? 三か国を相手にしてるのだ! そんなわけあるはずがない! 付近の城塞都市・砦に救援要請を! しかし、王都は今、オスリス国軍に包囲されてい………る。打つ手が………………ない。どうやっても勝て…………ない。
「誰かおらんか! 」
「は! 」
「王と貴族どもを謁見の間へ呼び出せ! それと、親衛隊も謁見の間の前に待機させよ! 」
「は! 」
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