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「おう、制服姿とは学校帰りかいローズのお嬢……って」

「初めまして、サー・ケンザン。高名なブルーム・マイスターにお会いできて光栄ですわ」

「……こいつは驚いた、ミッドランドの侯爵令嬢かい。なんでまたライバルと一緒だよ?」

「わざわざ自分の領地から飛んできたのよ……」


 ローズはため息まじりに返答した。

 貴族相手でも口の悪い――ローズやリリィと並ぶとさらに縮んで見える――だが小さくともがっしりした体躯の初老は二人を見て作業を止め、向きを正す。


「くす。噂どおり、お髭は生やされていませんのね」

「ああ、他のドワーフどもは知らんが、あんなんフサフサにたくわえても見苦しいだけだ」

「そうやって協調性なしの偏屈だからワークス契約を切られて工房が金穴になるんじゃない」

「ほざけよお嬢、伯爵が酔っぱらって飛んだのが原因の九割だ!」

「気に入らない顧客をまるで取らない爺さんが言えたこと? ワークスチームでお父様以外の所属パイロットと折り合い付けられなかったのが原因の八割よ!」

「まあまあ。お陰で私がこの工房を気兼ねなく見学できるのですから」

「……ああそうか、おれの元所属ワークスと、リリィ嬢ちゃんの箒を任されてる工房は」

「はい。ライバル関係でしたので」


 ケンザンは「なるほどなあ」と頭の白髪を少し掻く。

 ワークスとは大企業が運営するプロフェッショナルのレースチームだ。

 ゆえに装備供給は企業主導で行われるのだが、パイロット個人の特性に合わせてブルームを調整するのは職人の手作業が中心で、相性のいい小さな工房が請け負うことも少なくない。

 そのため企業はケンザンのような匠と契約を交わし開発や整備を任せているのだが、それが解除されたのはつい先月。守秘義務はあるが、つまりリリィの来訪はタイムリーでもあった。もっともローズにとって、ライバルの視察は気安いものでなかったが。


「まあ、そうでもなかったらミッドランド領からこっちに飛んでこないわよね」

「いえ、私はこれからも毎日ランカスター領に飛んできたいと思ってますよ?」

「……。酔狂ね、そんなにベイスが気に入ったの?」

「ええ、生まれて初めて決闘を申し込むくらいには」

「階級差をものともしないとか、ロマン小説の読み過ぎでしょ」

「そう言うローズのほうこそ、自分はそうでないと言えますの」

「はっ、当然よ!」

「どうでしょう?」


 そうやって令嬢二人が火花を散らしている間、当のベイスはというと。


「いつの間にかモテモテだなあ、坊主?」

「恐れ入ります。あと決闘の件は内密に」

「わかってる、伯爵には告げ口しねえよ。おおかたお前さんと家の名誉回復を賭けてんだろ」

「ご想像にお任せします」

「ふん。まったく釣り合いのとれねえ勝敗取引だが、それならこっちも多少の気合いが入る。伯爵の復帰が早まるならそれに越したことはねえ、金は大事だからなあ?」


 きらりと歯を見せてケンザンは笑う。

 老けた見た目ではあるが、長命のドワーフとしてはまだまだ中年の働き盛り。

 主人が秘密にしておこうとした情報が漏れてひやっとしたが、モチベーションが上がるのは何よりだとベイスは胸をなで下ろす。

 ケンザンは、まだ言い合う二人に「ゴホン!」とひとつ咳払う。


「キャットファイトなら再来月にやってくれ。……おれの仕事を、見に来たんだろ?」


 整備の終えたブルームを掴み、その持ち主に手渡した。

 ローズは箒の柄をなで、グリップを握り反応を確かめようと微量のマナを注ぎこむ。


「問題ないわ。昨日よりも良くなってる」

「当然、レースでの反応をフィードバックさせたからな」

「それがローズの新しい翼?」

「ええ。今の私専用の」


 ブルームの塗装は白地にシンプルな黄金の装飾だ。ローズの代名詞ともいえる赤の魔法衣に映えるようデザインされた――形状こそ箒に似ているが――完全なるレーシング仕様。それは構造材からして単なる清掃用具である普通の箒とは次元を全く異にしている。

 もちろん魔法使いであるならば何の変哲もない箒でも、例えデッキブラシであったとしても自在に飛ぶことはできるのだが。


「ベイス、教本の復習ついでに質問よ。このブルームの基本素材は何かしら?」

「はい。CFRP――炭素繊維強化プラスチック、いわゆるカーボンフレームです」

「それはどうして?」

「レースを有利にする軽量化と剛性の確保には、現状で最適とされているからです」

「そうね。過酷なレースに耐えきるために進化した形態、それが現代のブルームよ」

「確かに国際箒連盟【FIB】の規定でも、スクールクラスで使用するブルームの指定素材となっていますわ。ですが」

「ああ、だと言ってもカーボンが最高素材ってわけじゃねえ。学生がワークス並の開発競争をするんじゃねえってお達しだな。だからマナエンジンも共通で、ただこいつは――いや」


 ケンザンがベイスに目を配る。

 その直後ローズに「答えなさい」と命令され、回答する。


「はい。エンジンは同一規格でも、最高出力の向上を除くカスタマイズは推奨されています。それが認められているのは」

 ベイスはこの場にいる二人の魔女の姿を見て「僭越ながら」と前置きし。

「パイロットの魔力の固有性質――【エレメント】、その差異がレースを左右するためです」


 ローズとリリィは互いを見やってにやりとする。

 言外の争いが行われていることは察したが、ベイスは続ける。


「エレメントは文化圏により呼称を異にしているのですが、ユーロス国内においては四属性の【地水火風】に【光闇】を加えた六属性が一般的です。この個々人の特性をいかに引き出して飛行するか、それがブルームを使いこなすための基本であり」

「究極的な到達点よ、勝つための」

「ええ。誰より速く、飛ぶための」

「……。ま、【超音速飛行】は燃費バカ食いだし、レースじゃ誰もやらない大技だけど?」

「確かにレースでは使い物になりませんわね。――ついさっき、私は音速を超えましたが」

「はっ、学校帰りついでにこれから毎日スーパーソニック? 通報するわよ」

「侯爵家なめないでいただけます? 航路の確保と根回しは済んでいますわ」


 二人が笑みを浮かべて睨み合う。

 ケンザンは「ほほう」と感心し、蒼髪の令嬢の持つ箒に目をやって。


「そいつがリリィ嬢ちゃんのブルームか。……レース用じゃねえな、コンセプトモデルだろ」

「はい。私の所有するひとつを、こちらへ最速で来られるように調整させました」

「高々度まで一気に飛ぶ加速重視セッティングか、現状でのトップスピードは?」

「ご想像にお任せします♪」

「ふん、【魔法衣ローブ】も着ずにこんな仕様を乗りこなすか。良かったじゃねえか、お嬢」

「……なによ、こっち向いてニヤニヤして」

「いや。スクールチームの練習をほっといて毎日ランカスター領に来るなんて言うライバルに呆れてたんじゃないかと思ってな?」

「ありえないわ、リリィに限って。――本当に最速で来るなら制服とか論外だもの」


 ローズは言って、想像する。

 あちらの学校の終業が少し早いといっても、100キロの距離を十分未満だ。

 まず超音速飛行が許される法定高度まで上昇する。その時点で通常高度とは比較にならない低温や気圧変化への対応が強いられ、またソニックブームを地上に影響させてはならないため防護魔法シールドを使い衝撃波を大幅に減衰させる義務もある。そして重力加速度も空気抵抗も魔法で軽減させる以上、マナ消費のランニングコストは天井知らず。

 超音速での航行時間をどれだけ継続するかにもよるが、この場合に要求されるのはレースに大きく影響するマナコントロール技術の一つ――極限状況下での出力維持。

 その際にかかるパイロットの負荷と消耗は、無理矢理にたとえるなら長距離マラソンを走る体力の総量を、短距離で使い切るようなバカげたもの。リリィのブルームがレース用と異なる高出力仕様でも、それらをほぼ生身で賄うなどローズであっても背筋が凍る。


(まったく、平然とトレーニングに組み込むなって言いたくなるわよ……!!)


 魔法ブルーが飛ぶための武器ならば、魔法衣ローブは防具だ。

 ローブには様々な効果がある。大きな規定も無いため、用いられる素材や製法も千差万別。その理由はパイロット個々人のエレメントが深く関係しているのだが――ローブを着ることで得られる恩恵の大半は、マナコストの軽減とマナコントロールの安定化だ。

 そのローブの補正なしでリリィは飛ぶのだ、超音速を。


(……。この一年で、いったいどれだけ差が付いた?)


 ローズは思う。この蒼髪巨乳の令嬢は軽口を叩き合える仲だが友人ではない、宿敵だと。

 そして。


「……何を考えているかは分かりませんが、ローズも超音速飛行くらいできるでしょう?」

「軽く言ってくれるわね。エレメントが違う以上、そっちと同じやり方じゃ出来ないわよ」

「でもそうでないやり方で、あなたは進化できていたはず。――本来なら」

「……。身から出た錆よ」

「いいえ、決闘する以上は遠慮なく言います。どうしてあなたは、高等部のスクールチームに入らなかったの?」


 リリィは尋ねた。初めて訊いた。ライバルの凋落をずっと歯がゆく思っていた。

 いくら領地を一時的に取り上げられているとしても、伯爵家の娘が領内のスクールチームに拒まれるなどありえない。

 その問いにローズは無言を返してきたのだが。


「答えてローズ。互いの事情を隠さない、それが貴族の決闘におけるルールでしょう?」

「……。原因の大半は、金のせいよ。自由に家の財源を持ち出せなくなったから」

「保険魔法が高額で、スクールの予算ではグラウンド・フライトを使わせてもらえないと? でもあなたほどの魔女なら私と同じ【サテライト】扱いで、ワークスからの支援だって」

「わざと言ってるの、リリィ? 謹慎くらってるランカスター家の娘を、どこの企業が喜んで援助するってのよ。いくらトップを獲れていても中等部での話、まだ高等部の実績がない私を少なくとも去年はどこも腫れ物扱いで取り合わなかった。……翼をもがれた鳥にむごいわね、この私に無様に飛べと?」

「っ、だからレースから離れていたと言うの!?」

「全力を尽くして飛べないのよ。そんな私をあなたは倒して満足なの?」

「だけどチームに入っていたのならっ、誰かを頼ることもできたはず!」

「はっ、ジュニアクラスのころから私の専制君主ぶりを嫌っていた連中に?」

「だったら性格直しなさいよ! 昨日のレースでも、あなたはどうして……」


 だからリリィは苦手だと、ローズは僅かに視線をそらす。

 中等部の頃からリリィのチームの結束力は音に聞こえるほどだった。それは侯爵家の領内の学校だからという以上に、努力家で高潔で大胆な人柄が生むカリスマ性ゆえのものだった。

 その清らかなまでの正しさは、ローズにとって――


「リリィ。前も言ったけど、私は最高のパフォーマンスを発揮したいだけなのよ。そのために犠牲にしてきたわ、人も時間も……交遊も。だから去年のお父様の一件は、そんな傲慢な私に罰が当たったのだと考えれば凡俗の溜飲も下がるのかしら?」

「……ローズ」

「皆が私に、あなたみたいな良い子になれと求めるわ。どんな天才でも同じ人間なのだから、せめて人格くらい常人も見習えるものであってほしい、気持ちよく楽しませてほしいってね。なんて浅ましくていやしい根性よ、吐き気がするわ」

「っ、まさかそれ、あなたの学校のチームにも!?」

「言ってやったわ、没落した私と組んで美味しい思いするのは難しいから離れていいってね。領主の娘だからって気に病まず、むしろおべっか使われるほうが癪に障るから、私に従うのが嫌なら組まないでって。……私の誇りにかけて、仕返ししないって誓いを立ててね」


 ローズは言い切る。自分は正しくないが、間違ってもいないのだと。

 それまで黙って聞いていたケンザンが口元をにやりとさせてみせる。


「ふん、呆れたじゃじゃ馬ぶりだな。そんなお嬢がおれの素行不良を指摘するか、愉快だぜ。優秀なことは世渡り下手の言いわけにも、高慢の免罪符にもならねえぞ?」

「お互い様よ。というよりも優秀であることと結果を出すことは必要最低限じゃない。それは褒められることではないわ。赤子でない人間が二本足で立って歩いたからって褒められる? 私たちみたいな人種はね、矯正にコストなんて割きたくないの、無駄だから」

「無駄じゃないわ! チームの力はっ」

「そんなものは切り捨てているからよ!! ……私はね、コンマ一秒のタイムを削ること以外はどうだっていいの。本質的にはそれが出来なければ私を認めないくせにっ、どいつもこいつもきれいごとばかり求めてくる……うんざりよ」


 ローズはスマートフォンを出してネットの記事を開いてみせる。掲示板のスレッド一覧を、SNSのコミュニティを、昨日出場したチームやプライベーターのブログを開いてみせる。

 どれも内容は批判ばかり。それはわかりやすくローズの思い描いた状況だった。


「……どこの誰から出てくるのよ、私の人間性を変えるのに費やされるエネルギーは。それはコンマ一秒を削ることに費やすよりも大切なの? ええそうでしょうね、おかげで私は一年も前線から遠ざかった。何よりリリィ、あなたがその重要性を誰より雄弁に物語ってる」

「だったら……だったら少しは!」

「つまりあなたは正しいの、完璧に。歪んでるのは私のほう、当然よ。……だけれどね」


 ありのままの自分を出せばいい――性善説を信じる者はそう言うのだ。

 抑圧に負けず立ち上がれと、根本から歪んでいる人間を勘定に入れず。


「だけれどね、私はこうして再び舞い戻った。だから言ってやるわ、“だからどうした”って!! 私を否定するのは、私の翼が砕けて飛べなくなったときか力尽きて死んだ後にすることね! 私は飛ぶわよ、思うままに我がままに、誰一人として寄せつけない孤独の花になるために!!」


 ローズは笑う、だから彼らの好きなきれいごとどおりそうしてやる。

 そんな野次馬の眼を一人残らず己の飛翔で魅せつける、黙らせる。

 ありのままの自分でもって勝ってやるのだ、魔女らしく。

 そして今や追われる立場となった宿敵は、僅かなあいだ目を伏せた。


(負けられない。今度こそ、ローズに勝ち逃げなんてさせはしない……!)


 リリィは瞼を開けていく。そこに映るのはかつて追い、なお届かなかった高嶺の花。

 それは今も気高さと誇りを失わず翼を広げこちらを睨み、玉座を狙ってきているのだ。

 そして。


(もう一つ、勝ちたい理由が出来たもの)


 目線をローズのその向こう、黙したまま控える従者に注いでいく。

 ベイスの表情はやわらかい。主人は激昂しているのではなく、冷静だと分かっている。

 その無言の理解を羨ましいと思いつつ、リリィはこれまでベイスを見るのをさけていた。

 出会った当日ほどではないのだが、やはり僅かでも赤面してしまうから。


(……彼を知りたい。私のことも知ってほしい、私の近くに居て欲しい)


 音速を超えてでも今すぐ会いに来たかった。衝動を速度に叩き付けてやって来た。

 こんなふうに異性を求めたがる感情を得たのは初めてで、一目惚れに違いなかった。

 レースに全霊を注ぐライバルに対し、こんな思いで戦うのは不純ではないかとも考えたが。


「ローズ、あなたが次のレースを飛ぶ理由と、私との決闘に臨む事情はよく分かりましたわ。すべてを見返し取り戻し、また万全な状態で飛び続けることを望むため。そうでしょう?」

「当然よ」

「あなたは全力の邪魔になる無能な味方を、一人残らず切り捨てた。ふるいにかけて、けれど誰も留まることはなく、それがあなたを一年もレースから遠ざけた。でも降って湧いた幸運にあなたは喜び勇んで戦場へと舞い戻った」

「口惜しい指摘だけど概ねそうよ、肯定するわ」

「そしてローリスクでハイリターンが期待できるから、私との決闘も受諾した。どうかしら」

「じゃなきゃ誰が受けるのよ、決闘は申し込む方がリスクを負うのが常識で」

「そんな甘えた“凡俗”に。このリリィ・ミッドランドが負けるはずないでしょう?」

「……、言うわね」


 言ってやる。ローズの瞳が強く見開いて静止する。リリィは続ける。


「世俗の泥にまみれて穢れることを嫌がって、ずいぶんな深窓のご令嬢でしたのね? 本当に不純なのはどちらでしょう」

「はっ、人の従者を欲しがる純粋さは見習えないんだけど?」

「不倫や横恋慕なら私も御免です。もしそうなら今すぐ契約破棄だって」

「あなたと一緒にしないでって言ったわよ、冗談じゃない!」

「では決闘で破れた後の強制とは別にして、ベイスさんに自由を与えるのに異論はないと?」

「とっくにベイスにも言ったわよ、二言はない」


 そこでリリィがにこりとして、ローズは気付く。

 これまでの話の示すところ、それは現状の詳細確認と、もう一つ。


「これで最終同意が取れましたわ。何の遠慮もなくあなたを叩き潰せます」

「……。呆れた正しさの奴隷ぶりね。そんなに間違ったことが嫌いなの?」

「私は後悔しないことが好きなのです♪」

「いい歪みっぷり。とても凡俗好みのね」


 二人はくすりと互いに声を出す。

 ベイスはその光景をとても心地よく思えていて。


「……おい坊主、こんなおっかねえお嬢様らに好かれて嬉しいか?」

「胸が熱くなる思いです」

「けっ、おれは母ちゃん一人で十分だわ。――お、ローブのほうも終わったな」


 ケンザンが携帯の着信を見て修繕が終わったと判断。工房の二階に上がってゆき、下りてきたときには赤の魔法衣を持っていた。


「これで調整は完了だ。確認してくれ、お嬢」

「……。“今のところ”問題ないわ。受け取って」

「かしこまりました」


 返答して、ベイスは用意していたスーツケースに仕舞っていく。リリィがそれを窺って。


「問題ない、ですか。装備の調整担当は決まってますの? レース当日の」

「いないわよ。事前のフリー飛行でデータ取ってケンザンに任せるつもり」

「まあ、この仕上がりの早さなら。でも視察に来てよかったですわ」

「ふうん。クルーがベイス一人だから、助け船でも出したかった?」

「いいえ、余計なお節介の無意味さは、昨日の小切手で懲りましたもの。それにしてもさすがサー・ケンザンの奥様ですわね、今のローズに合わせた針仕事を完璧に」

「おう、ミッドランドの嬢ちゃんに褒められたって伝えるよ。人見知りな母ちゃんで悪ぃな」

「お構いなく。むしろアポも取らずに同席した無礼を詫びますわ」

「はいはい。じゃあ次はそっちのレース用の装備も見せることね」


 楽しげに主人はライバルと笑い合う。

 その光景はベイスの目にも、速さと勝利を求めあう純粋な関係に映っていた。

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