▼2▲ ‐九月‐
「ベイスと申します。よろしくお願い致します」
教室内。真新しい学生服に身を包んだベイスは、自分の座席から立ち上がり挨拶した。登校初日の朝、自己紹介は順番に続いており、そのなかでも簡素極まるものだったのだが。
「ね、あんたもしかして仕人やってた? やけに言葉遣いと所作が堂に入ってるとゆーか」
「いえ、現在進行形ですが」
「え。じゃあご主人様に通わせてもらってるってこと!?」
「そのようになります」
隣の席――若草色の髪をした女子が、ベイスに軽い口調で話しかけてきた。同年代者ばかり集まる空間、学校での会話は久しぶりだがベイスは普段通りに返答する。
女子はなおも(小声だったが)気安く質問を続けてきた。
「まさか、コネを使った裏口入学?」
「いいえ、試験を通ってきてますよ」
「……年齢は?」
「今年で十七歳の、現時点では十六歳です。ここにいる多くの皆さんとは一つ年上かと」
「そ、そうなんだ。なら仕人学校からストレートで入ったわけじゃないんだぁ……ほっ」
ユーロスにおいて義務教育は仕人・平民・貴族を問わず中等部まで。
高等部へは中等部を卒業していれば進学できるが、仕人学校出の者は少し違う。学習内容が平民や貴族のそれとは違うため、そちらの卒業相当の資格試験を通る必要があったのだ。
試験は八月にあり、ベイスは七月中その勉強に励んでいて、隣の女子はそんな事情を知って聞いてきたのだろうと考えた。彼女がはにかみを返してくる。
「あ、自己紹介の順番だね。あたしはソラム、みんなよろしくっ!」
ソラムは勢いよく座席から立ち上がり、快活に挨拶する。
そのときベイスは彼女の姿を正しく認識した。緑系の髪色だけでは分からなかったのだが、
(……耳が僅かに尖っている? エルフ――いや)
「見て分かると思うけど、あたしはハーフエルフなんだ。ま、適当に仲良くしてね!」




