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8 惹かれ合う

   8 惹かれ合う


 翌日。いつもならとても楽しげに話す灰花とスロワだが、この日、2人は一言たりとも話さなかった。灰花の方は少しスロワに視線を向けていたが、スロワはまるで灰花などいないかのように振る舞い、ちらりと見ることさえない。周囲の人間は何事かと密かに騒いだが、スロワの異常な様子に、誰もそのことを聞けずにいた。

 一方灰花の方は、いつもの覇気はどこへやら、授業中も休み時間も、心ここに在らずといった雰囲気であった。隣のクラスにいる愛しの葛城くずはの元へ行くこともない。こっちはこっちで異常な事態だった。

 周囲がまったく関与できずにいる中、救世主は放課後に現れた。放課後もぼんやりと机にいる灰花のところに、長身の影が差した。


 「よう。元気なさそうだな」

 「隆弘…」


 隆弘は空いている灰花の前の席に座る。


 「…聞いたぜ。あのことをあの暴食共が軽音の部室で暴露したんだってな」

 「誰から聞いたんだ?」

 「てめぇはそれどこじゃねぇかもしれねぇが、学校中に知れ渡ってるぜ?軽音はうちでも1、2を争うマンモス部活だし、お前らが言い争ってたのは廊下のど真ん中だしな」

 「…そりゃ、確かに」

 「………何で何も言わなかった?てめぇは途中から来ただろ?あんなことやってるの知らなかったって顔してたじゃねぇか。あんとき何やってたんだ?」

 「…プリンを買いに行ってた」

 「は?」

 「くずはさんに頼まれて、プリンを買いに行ってたんだ。くずはさんが、あんなことをやっててあんな状況になってるなんて知りもしなかったよ。でも、先に知って止めるべきだったし、それからもあんなやり方しかできなかったのは俺の力不足だ。責められても仕方ない。…確かに俺のプライドは薄っぺらいのかもしれない。けど、それでもプライドだ。守りたい信念だ。それがあのときはお前の方が強かったってことだ」

 「それを何であいつに言わねぇんだ?」

 「言っただろ?責められても仕方ないって。俺は十分共犯なんだ。…あのとき俺がやったことは後悔してない。くずはさんがやりたいって言ったからやった。それも間違いない。でも…」


 灰花の言葉が若干詰まった。


 「それを聞いて怒ったり泣いたりしたスロワを見たら、何か、嫌な気持ちになったんだよな…」


 それを聞いて隆弘はやれやれと半ば呆れるように首を振った。


 「そういうことは、俺じゃなくて、本人に言ったらどうなんだ?」

 「え?」

 「えっ!?」


 突如、教室の扉の方から、第三者の驚いたような声が飛び込んできた。隆弘が振り向くと、扉の影から、とても気まずそうな表情で、スロワが教室に入ってきた。


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