5 気付いてほしい
5 気付いてほしい
それからというもの、スロワは何かと理由をつけて灰花の元に行き、軽音部へ誘ったり、一緒に音楽を聴いたり、買い物へ行ったりした。その中にはあの楽器屋も含まれており、灰花はベースに興味を示している様子だった。
「しかし楽器って高いんだなぁ…軽音のやつらすごいんだなって思ったよ。スロワが持ってるって言ってたのも結構高かったし。やっぱバイトとかしてんのかな?」
「小遣いじゃ買えないのか?」
「そりゃお前の小遣いなら買えるかもしれねぇけどさ。これだから金持ちのボンボンは」
多くの者の避難場所、屋上。宮下灰花と西野隆弘は、柵に寄りかかるようにしてそこにいた。今は放課後、外は晴天。日差しが強いが吹き抜ける風のおかげかさほど暑くはない。
「最近スロワと仲良いんだな」
「え?」
「この間まで口開きゃ『くずはさん』『くずはさん』だったのに、最近スロワと一緒にいることが多いみたいだな。いい雰囲気じゃねぇか」
「そ、そういうつもりじゃ…」
「ん?今何を考えた?俺は何も言っちゃいねぇぜ?」
「あっ、てめぇ…!」
何も隆弘だけがそう思っているわけではない。スロワの友人たちの間でも、灰花と親しげにしている姿が度々目撃されていたため、話題の中心になっていた。もっとも、スロワの方は強く否定していない。ただ、彼女にも彼女なりの思いというものがある。
「ねぇ、リックスいる?」
「あら、どうしたのスロワ、珍しいわね」
リックスの元に隣のクラスのスロワが訪れたのは、灰花と隆弘が屋上で戯れる少し前、ホームルームが終わった直後のことであった。スロワはリックスを廊下に呼び出し、少し人通りの少ない場所まで連れて来た。
「どうしたの?」
「折り入って、アンタに頼みがあるの。アンタじゃなきゃ、多分できないんだけどさ」
*
屋上にいる灰花の元に、電話がかかってきた。スロワからだ。仲良くなってから、連絡先も交換していたのだ。
「もしもし?」
「あ、宮下、今ヒマ?」
「え、あぁうん」
「これからさ、CD買いに行かない?ウチいいとこ知ってんだー」
「マジで!?行く行く!」
「じゃあウチ校門のとこで待ってるから」
「オッケー、すぐ行くわ」
電話を切ると、隆弘が隣でニヤニヤと笑っていた。
「楽しんでこいよ」
「…あぁ」
灰花は屋上を出て、階段を下り、教室に寄って鞄を取ってから、校門へ向かっていった。校門のところに、目立つ紅色が見える。近付く。ピンクのイヤホンが見える。と。
(あれ…?)
灰花は何かに気付き、隣まで近付いて、確信に至った。
「お前、隣のクラスの…ウェグレーだっけ?こんなとこで何やってるんだ?」
「…え?」




