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3 好みの洋楽

   3 好みの洋楽


 それから数日、スロワは愛用のイヤホンを見る度、ほんのりと宮下灰花のことを思い出すことがあった。周囲の話を聞くと、結構なイケメンで話題らしい。転校前からの縁であの西野隆弘と割と親しいこともあり女子生徒たちの目を引いているそうだ。スロワはまったくそういったことに興味がなかったため、気にしていなかったのだが。

 昼食を買いに購買に行って、あの戦場を潜り抜け何とか昼食を確保すると、中庭にあの宮下灰花の姿があった。日差しが差し込む木の下のベンチで、恐らく購買で買ったのであろうパンを頬張っている。耳にイヤホンが差してあるのをスロワは目ざとく見つけていた。


 「あれ、宮下じゃん。なに聴いてんの?」

 「え?あっ」


 スロワはするりと灰花の耳からイヤホンを抜くと、自分の耳に入れた。どこか聞き覚えのあるギターリフとボーカルが聞こえてくる。


 「あれっ、これウチ聴いてことある!ってかチョー聴いてる!!」

 「マジかよ!それ好きなのか!?」

 「チョー好きだし!これカバーしたいんだけどBメロのリフむずすぎでー」

 「えっ、何かやってんのか?」

 「ウチ軽音だよ。何、興味あんの?」

 「でも俺楽器何もできないからなぁ」

 「ボーカルなら楽器できなくてもできんじゃん?良かったら1回見学来なよ!つか入っちゃえばいいじゃん!アンタイケメンだから絶対ウケるって!」

 「勧誘熱心だなぁ」

 「部活も音楽も大好きだからね。どう?ウチのバンドで1回出てみない?」

 「気が早いって。それに俺、くずはさんのことがあるし…」

 「くずは?…隣のクラスの葛城のこと?」


 スロワも友人たちとの会話から知っていた。灰花は隣のクラスの葛城くずはを追いかけるようにしてこの花神楽に転校してきた、と。その葛城くずはは花神楽でも屈指の変わった人間で、そのくずはに付き従うようにして灰花はいつもいる。


 「そう、くずはさんからいつ連絡来るか分かんねぇからなぁ。ちょっとでも遅れるとあの人怒って何しでかすか分からないから…」

 「アンタそんなこと考えて暮らしてて自分の生活に支障はないの?」

 「…ずっとそうしてきたからあんまり考えたことなかったな……っと、噂をすれば」


 灰花の携帯が鳴っている。どうやら噂の葛城くずはからメールらしい。


 「今から購買行ってプリンあるかなぁ…まぁ行ってみるか」

 「み、宮下!考えといてよね!軽音!」

 「あぁ、サンキュー!」


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