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4、そして転生へ……その1

「「トンファー・オブ・トンファー」さーん、到着しましたよー。

 起きてくださーい。」


 オドシーさんの呼ぶ声と、猛烈な熱さと痛みを訴える足の裏の感覚と、自分では全く動かせない程の首の痛み、そして強烈な頭痛と吐き気と体の痺れに目を覚ます。


 さっき目覚めた時より更に悪化してるな、これ。

 激痛をこらえながら、目を開けると、オドシーさんと、片眼鏡をつけたお爺さんが立っていた。


「あ、起きましたねー。

「トンファー・オブ・トンファー」さん、こちらの方はグルニカさんといいまして、転生はグルニカさんが担当していますー。

 私は他の方の浄化のためにここでお別れしますので、ここから先はグルニカさんの指示に従ってくださいねー。」


 どうやら、お爺さんはグルニカさんと言うらしい。

 しかし、オドシーさんともこれでお別れか……

 ちょっと酷い目にあったような気もするけど、オドシーさんは「|トンファー・オブ・トンファー《おれのなまえ》」を受け入れてくれた人だ。

 しっかりお礼を言っておかなければ。


「はい、わかりました。

 オドシーさん、短い間でしたが、ありが」

 お礼の言葉を言い終わらないうちに、オドシーさんが猛スピードで立ち去っていった。


「とうご……ざ?あれ?

 オドシーさん、オドシーさーん?

 ええい、ありがとうございましたーーーーー!!!」


 聞こえているかどうかは分からないが、とりあえず大声でお礼を言っておこう。


「「トンファー・オブ・トンファー」といったか。

 すまん、あれはマイペースなんでの。

 気を悪くせんでやってくれ。

 後で、ワシの方からお主が礼を言っていたと、しっかり伝えておくから安心せい。」


 なんだか優しそうなおじいちゃんだ。

 俺は生前、祖父というものに縁は無かったが、もし祖父が生きていたら、こんな感じだったのかもしれない。

 後、俺の前の名前もちゃんとしたものになってたかもしれない。


「はい、ありがとうございます、グルニカさん。」


「さて、改めて、自己紹介をさせてもらおうかの。

 儂はグルニカ、死後の転生と、転生前の準備を魂にさせる役目を担っておる。」


「俺は「トンファー・オブ・トンファー」と言います。

 よろしくお願いします。」


「うむ、短い間ではあるが宜しく頼むぞ。

 さて、これからお主はどこかの世界で、産まれたばかりの肉体に入り、肉体が滅びるまで「魂」の研鑽に励む事になる。

 ここまではオドシーから聞いておるな?」


「はい、「魂」を成長させて、「魂」単体で活動できるように何度も転生を繰り返すんですよね?」


「その通りじゃ。

 しかし、転生するにあたって、ある準備をする必要があっての。

 それをこれから説明するので、心して聞くのじゃぞ。」


「わかりました。」


 準備か、何をすればいいのかね。


「うむ、では説明しようぞ。

 まず最初の準備として、お主自身に転生先を決めてもらう。

 ただ、ここで一つ問題があっての。」


「問題?」


「うむ、本来であれば、本人の望む転生先にしてやりたいのじゃが、肉体と魂の相性というものがあっての。

 無理に相性の悪い肉体に転生してしまうと、本来その肉体が持つ能力を十全に引き出せぬどころか、下手をすれば即死亡する事もあるから、相性の良い肉体の中から転生先を選ばねばならん。

 自由にどんな転生先でもという訳には行かぬ。」


 なるほど、オドシーさんが言ってた形を変えても転生候補がどうとかってやつか。


「そこで、お主が転生できる肉体の一覧を儂が作って、その中から選んでもらうのじゃが、可能なものを全て一覧に出してしまうと、候補が多すぎて選べないでな。

 抽象的で良いから、ある程度条件をつけて欲しいのじゃよ。」


「トンファーになりたいです。」


 オドシーさんからは無機物は無理だと言われたが、念のための確認もかねて、即答した。


「えらく具体的じゃの。

 トンファーというのは、これの事で間違いないかの?」


 グルニカさんが空中をなぞると、馴染み深い木製のトンファーが空中に浮かび上がった。


「はい、これであってます!

 このトンファーになりたいんです!」


「申し訳無いのじゃが、これは肉体ではないでの。

 これの原材料の植物や植物の魔物に転生する事は可能なんじゃが、これの元になる木材は、肉体から切り離されたものか、よしんば生きておったとしても、加工される段階でまず間違いなく、肉体としての滅びを迎えてしまうの。

 他になりたいものはないのかの?」


 やはり楽してトンファーになる事は出来ないか。

 トンファーは一日にしてならずだな。


「あ、でしたら、オドシーさんが、「魔法の概念がある世界なら、魂を無機物に移す事が出来るから、それならトンファーになる事は可能」だって言ってたので、それができる転生先でお願いしてもいいですか。」


「む、確かにそれは可能ではあるんじゃがな……

 この死後の世界の存在意義から外れておるから、儂の立場上、あまり勧めにくいのじゃが。」


「そこをなんとか、お願いします!」


 日本に伝わる、伝家の宝刀DOGEZAである。

 トンファーが最強の武器であるように、DOGEZAは交渉での心理戦において最強の行為である。

 駄目だと言われたら、俺の夢が潰えてしまうので、全身全霊でお願いする。


「そんな事をせずとも、あくまで勧めにくい立場にいるというだけで、協力するに吝かでない。

 じゃから、顔を上げてくれんか。」


「ありがとうございます!」


「しかしの、魂を別の器に移し替えるような魔法はかなり難しいし、そのための器を用意するのも容易ではないぞ。

 よしんばそこまでたどり着けたとしても、器と魂の相性が良いとも限らん。

 実現できるのは、恐らく万に一つ程の可能性にも満たないが、それでもトンファーになる事を目指すのかの。」


「はい、俺は必ずトンファーになります。

 何度死んでやり直す事になろうとも、トンファーになれるまで何度だって転生してみせます。」


「そうか、そこまでの覚悟があるのであれば、止めはせぬ。

 魔法の概念のある世界で、魔法と相性が良い種族から、お主が転生できるものを選んで見せようぞ。

 仮に、トンファーになる以外の道を進む事になろうとも、魔法が使える種族であれば恵まれた人生を送る事が出来るであろう。」


「よろしくお願いします。」


 それを聞いたグルニカさんが、空中に何か魔法陣みたいな絵を書いたかと思うと、それが光の玉になり、分裂してあちこちにとんでいった。


「さて、これでしばらくすれば、転生先の候補の一覧が出来上がるじゃろうて。」


 どうやら魔法陣?は、転生先の候補を集める効果があるらしい。

 どんな候補が来るか楽しみだ。

ぎりぎり8日内に投稿できたー……

遅れて申し訳ない。

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