名もなき花
私の人生に一筋の光を与え、生命を水を注ぎ、烈火の華を芽吹かせてくれたKに、敬愛と心からの感謝をこめて……
一 紅花
艶やかに咲き誇る美しき紅き花に
私は誘われ ふと手に触れてしまった
美しき花の棘から感じるこの痛みは
ゆっくりと身体の端まで染み渡っていく
痛みさえも美しい
おお! 美しく咲き誇る紅き花よ
多くの女の血を飾りし者よ
お前は美しくなければならぬのだ……
それがお前の贖償だから
二 夢現
僕は知っている これが夢だと
君は知っている それは現だと
碧い海に
永遠に落ちる私の身体
蒼い空に
永遠に昇る私の魂
いつか辿りつくのだろうか?
夢と現の境界に
まさか君はこれが夢だというのじゃあるまいね!
三 帰り道
「では! また明日」
お前はそう言って お前の道を行く
風をきり 深淵の闇にへと
姿をくらます
私はお前の背中を ただ見つめ
お前の明日を夢見てた
お前は何処に行こうというのか
「では! また明日」
私はそう言って 私の道を行く
お前は私の明日を夢見てる
お前は私の知らない世界にいて
私はお前の知らない世界にいる
それでも お前と私は同じ明日を見ているのだ
「では! また明日」
四 名もなき女よ
純潔の女よ
私はお前を忘れることができない
お前は私の手から
小さな花の種のように 飛び立ち
今は碧い野原の何処かに佇んでいるのだろう
美しき女よ
艶やかなお前の瞳に映る
憐れな道化師を憐れみ給え
幻想の世界だけでも
今夜 私に会いに来てほしい
今夜だけでも お前を抱かせてくれないか
人はなぜ小説を書くのか。それは人の人生の中にもう一つの「人生」を加えるためである。小説とともに喜び、悲しみ、怒り、笑い、時には苦しむ。なるほど、文学は人間の「心の欲求」を満たし、その結果として「生命」を享受するのかもしれない。
読んでくれた読者の皆様に心からの感謝をしたい。