ロリっ娘の人の分
欲しいなら手を伸ばさなくては。只指を咥えて見ているだけでは永遠にそれは手に入らない。
「欲しいものは、欲しいのよ」
しかし、それを手に入れる為にはそれなりのリスクが伴う。
「でも、きっと大丈夫よ。だって私は子供だから」
にっこりと、極上の笑みを浮かべて幼女が笑う。
例えどんなひどい事をしたって、今であれば幼い故の暴挙として大して咎め立てられる事もなく終わるだろう。ーーー例えそれが魔女の一族に属するものであったとしても。
なら、どうやって手に入れたらいいだろう?
どうせなら、シャルルの目を祖母ではなく私に引き付けられる様に。
そして、臆面もなく言ってやればいいのだ。
私を見て欲しかったからと。
黒目がちな大きな瞳をくりくりとさせながら言ってやろう。
どうやって手に入れよう?
いっそ、爆弾で木っ端微塵にしてしまおうか?
いやいや、流石にそれはまずいだろう。何より目当ての尻尾まで粉々になってしまうかもしれない。
上手に、尻尾だけ手に入れる為にはどうしたらいい?
頭の先をちょっとだけ燃やしてしまえばいいかしら?
使い魔の鴉をけしかけるのは?
いいえ、いいえ。
どうせならもっと、子供らしい可愛らしい方法で。
じゃあ、何かでシャルルの気を引くのはどうかしら?
たとえば、このポーチの中のおむすびとか。
祖母に敬服しているシャルルならきっと簡単に引っかかるに違いない。
折よく今宵は満月。
クスリと小さく笑みをこぼしてハンナはシャルルの後を追いかける。
オオカミさん、オオカミさん。その立派な尻尾を私に下さいな。
そう口に出してしまいそうになるのを抑えながら、軽やかな足取りで通りを進む。
シャルルの目にはいる様に、姿消しの魔法を解いて。
「シャルル先生」
森へ入ってしまう前に何とか追いついたハンナがシャルルに声を掛ける。
鼻歌さえ歌ってしまいそうな程機嫌のよいハンナの声に、シャルルが振り返る。
「ハンナ?」
突然現れた教え子の姿に驚いたようにシャルルがその名を呼ぶ。
「どうしたのかな?こんな時間に君の様な子供がこんな場所に居るなんて、あまり褒められたものではないと思うが」
「おばあさんの所にお使いにいった帰りなの」
教師らしい方に嵌まった物言いをするシャルルに若干落胆しながらハンナが手にしたポーチをぶらぶらとさせながら言う。
「そうなのかい?」
「先生こそ、これから何処へ行くんです?」
好きなもの拾った上に、投げっぱなしでごめんなさ~い!