ケンタッキー州のフライドチキン 50音順小説Part~け~
かなりはやめのメリークリスマス。
景色は一面雪化粧だ。
クリスマス直前に降るなんてホワイト・クリスマスではないか。
12月半ばに入ってこんなに雪が降ったのは今日が初だった。
あまりにも嬉しかったので寒いのも気にせず窓を思いっきり開けた。
「わぁ・・・・・。まっしろだぁ。」
目に映る何もかもが白く覆われている景色を今年も見られて感激だ。
しばらく眺めているとその中に赤い点が見えた。
それがどんどん近づいてきて赤いコートを着た女の子だと分かった。
「ケイトッー!!」
「あっベラッ!!」
ベラは頬をコートと同じ色に染めケイトの部屋の窓辺まで息を切らして走ってきた。
「ケイトッ!遊ぼっ!スノーマン作ろうよ。」
「作りたいっ。待ってて!今そっち行くから。」
彼女もクローゼットから真っ白いコート、マフラー、手袋を取り出し外へ飛び出した。
幼い少女たちにとって雪は楽しい遊び道具の一種で寒いのなんてなんのその。
ここはケンタッキー州パデューカ。
冬は雪深い地域として有名でつい最近では同時期にクリスマス前豪雪があった。
今日はクリスマス・イヴつまり明日はクリスマスということもあって家の周りはそのための飾りが
数多く装飾されておりどこもかしこもいつもの雰囲気とは違っていた。
「ベラ。明日はホワイトクリスマスだよ。」
「うんっ。ケーキにプレゼント楽しみだぁ。」
「私はそれより・・・」
「「フライドチキン。」」
二人の声が揃う。
「ケイトってばいっつも食べてるじゃん。」
「だって美味しいんだもん。」
フライドチキンはケイトの大好物で月に1回は食べている。
クリスマスも七面鳥を食べるところだが一人っ子の彼女の大好物であるフライドチキンを
代わりにテーブルに並べているくらいだ。
「あのジュワッていうのがたまらないんだ。」
想像しただけでよだれが出てくる。
そして彼女にとって今年のクリスマスは特別だった。
「それに今日やっとママが帰ってくるんだ。」
「本当!?じゃあ明日は弟も加わって4人でクリスマスパーティーだね。」
ケイトの母は一週間前に赤ん坊を出産し今日退院して帰ってくるのだ。
新しい家族が増え母も帰ってくることがケイトをさらに嬉しくさせる。
「でももし弟が大きくなって七面鳥がいいって言われたらフライドチキンがクリスマスに
食べれなくなっちゃうな。」
「いつも食べてるんだからクリスマスくらい七面鳥食べればいいんだよ。」
しかし毎年の恒例だったのがいつかなくなってしまうと思うと寂しいものだ。
増えるものがあればなくなるものもある。
けれど今では増えるものの喜びの方が大きかった。
「このスノーマンも見せてあげるんだ。」
最後に二人がかりで作った大きなスノーマンの頭上にバケツをのせそれは完成した。
満足げに顔を見合わせハイタッチをする。
すると通りの向こうからゆっくりと一台のイエローキャブがケイトの家に向かってきていた。
「あっきっとママだ!」
ケイトは雪かきしたばかりの道を幸せの黄色い車へ走っていった。
イエローキャブは幸せの黄色いハンカチをイメージしました。