愛してる、なんて言わないで。~愛羅バージョン~
まさか、大樹が私の彼氏になるなんて思ってもいなかった。
それまで好きな人もいたのに。
私のお父さんと海輝のお父さんは高校時代とても仲が良かったらしい。そのおかげか
私と海輝は同じ学校になった。
最初はいつもみんなに囲まれて「人気者」としか思っていなかった。
しかし、席替えで海輝と同じ班になって、海輝と話し始めたときから海輝への気持ちが変わっていった。
恋をしたのはあの瞬間。
体育の時間。
あいつは運動神経抜群で、リレ選にもなっていた。
その時間は坂上がりの練習だったので、見本に海輝が鉄棒でけんすい坂上がりをした時。
それは起こった。
全てがスローモーションで見える気がした。
貴方が鉄棒で軽くヒョイッと回るとき。私にはとても輝いて見えた。
「嘘・・・・・・・。」と思うくらい。この人、こんなカッコよかったっけと思うくらい。
そしてあの人は軽くスタッ、と着地し、みんなから拍手喝采を浴びた。
その時照れたように笑う君の笑顔に胸がどきっ、としたの。
「私・・・この人の事好きなのかも・・・」って。
でも好きになったときもう遅かった。
あの人には好きな人がいたの。でもそれは好きになる前から分かっていた。
だからちょくちょくからかってたのに。それなのに上手くからかえなくなったじゃん。
だって切なくなるから。
でもからかわないと話す内容ができない。言いたくないって分かってる。でもあいつと話すには
それしかないと思って。だからからかう。瑠奈の事で。言う度あの人には好きな人がいるっていう
事実を自分の言葉で実感する。それでもあいつといられるなら、笑えるなら、こんな努力も努力のうち
に入らない。
ただ、貴方が好きだから。
そのために近づく努力をして。
でもそれも無力化して。
瑠奈のおかげで。
海輝が瑠奈と話してると切なくなって、「やっぱ、あいつって瑠奈の事が好きなんだな」って思って。
同時に「全くコイツは・・・・・。」って呆れる気持ちも出てきて。
「・・・ら、愛羅!!」
どうやら海輝の声みたい。幸せ。
「う、う~ん、海輝?」
「先生に当てられたぞ!!」
え、嘘。おきるとそばに怒った顔の先生が。
「や、やだ、寝ちゃったみたい・・・。」
あわてて言うと先生に
「寝ちゃったみたい、じゃ無くて、この問題を解きなさいっ!!」
先生が指をさした方向を見ると、「超難問」と書かれた文字が。
こ、こんなの解けるわけ無いよな?救いを求めるように隣の席の海輝をみる。しかし海輝も
「参った」という顔をしていた。
先生が黒板へ戻ると机の上に一枚の紙が。
それには、
「12」
と書かれていた。海輝とは反対の方向を見ると、大樹がシーッと口に指を当てている。
あ、大樹か。でも助かった~。大樹にお礼のウインクを送って私は答えた。
「え・・・っと12?」
「ほお、よくできたな、寝てるわりには。」
先生が余計な一言を付け足す。まったく、寝てたわけじゃないんですよ、寝てたわけじゃ。
キーンコーンカーンコーン。休み時間の合図がなる。
「ありがと、さっきは。助かったわ。」
「いや、そんなお礼を言われるほどじゃねーぜ?」
くっそー、憎い。なんでこんな難しい問題を解けるのか、意味不明なのに。
こいつは幼馴染の大樹。小さいころからずっと一緒だった。
でもあいつは天才だったんだ。
今みたいに超難問をすらすら解けるし、英検2級。おかしいと私は思っている。
でもそんな硬い奴じゃなくて、凄く話しやすいし、フレンドリーである。
ドク、ドク、ドク。
心臓が早鐘を打つ。
そう、今は間近に迫っている修学旅行の班決め。
箱のなかに手を突っ込む。
・・・・・・・C。
「愛羅!」
「あ、瑠奈。」
「私、Cだった~!」
「私はE。じゃあね。」
「うん。」
「海輝!」
「お、愛羅!何だった?」
「C。」
「俺はE。」
「へえ、瑠奈と同じじゃん!!良かったね!」
「お前・・・!!」
海輝が言い返すうちに私はさっさと引き返した。
・・・ショック。海輝と瑠奈が一緒だったなんて。
誰に聞いてもCという人は出てこない。
あ、春美がいる。
「お~い!春美ぃ~?」
「愛羅?C班はここよ。」
「え・・・・・・・。」
思わず声が出た。
続けてもう一言。
「あんたらと?」
「そ、俺達と。」
大樹が答えた。
その瞬間自分の顔が明るくなっていくのに気づいた。
今日は修学旅行。
私は先に来すぎていたのかしら?大樹がとても遅く来た。
列車内ではトランプ遊びをして楽しかった。
私がギリギリで勝ち、けっこう面白かった。
まあ、東照宮では輝也と春美のツーショット写真をたくさん撮れてよかったけど。
一番修学旅行で心に残ったのは、大樹と両想いになれたことと、それと・・・。
本当に海輝と瑠奈は恋人同士だったってこと。
二日目の夜。
私達のクラスの女子で集まってゲームをしようなんて言っていて、みんな集まったのに
瑠奈だけ来ないので、私が瑠奈の部屋に行こうと思い、廊下を歩いていたとき。
声がした。男女の声。それが私は瑠奈と、あと誰かの声。
「瑠ー奈・・・・・」
コンコンとドアを叩き、ドアをカチャリと開けた時。への
瑠奈は・・・えっ?!誰かと抱き合ってる?!誰?!
・・・・・海輝だった。
ありえない。そんな声が頭をよぎった。どうしてここに海輝が?どうして?
やっぱり二人は両思いだったのかぁ。
いろんな海輝への想いが頭を走馬灯のように走る。
初めて海輝と会った時。仲良くなったとき。好きだと自覚したとき。
でも瑠奈の存在があると知ったとき。瑠奈と海輝が仲良くしているとき。
何回も何回もお風呂の中で諦めようって思って。でもできなくて。
君の笑顔に惹かれて。無邪気な笑顔に惹かれて。ずっと、ずっと。
明るい性格に惹かれて。
でも。
あの子にだけは勝てないと思っていた。
私がどんなに海輝と中が良くても、瑠奈にはなれないのだと。
海輝の、トクベツな存在。想い人。
どんなに頑張っても、頑張っても、瑠奈にはなれない。
特別にはなれない。その想いがいつも私を苦しめていた。
でも、ずっと我慢してきて。笑顔で、居続けて。
笑って流していたけれど。
もう・・・。駄目みたい。
私は勢いよくドアを閉めて、走り出した。
こんな悲しい現実から逃げたかったからかもしれない。とにかくその事実を受け入れたくなかった。
すると、反対側から大樹が歩いてきた。こんなときに大樹に会うなんて、ツイていない。
すれ違った瞬間、腕を強く掴まれた。
「放してよ!!!!放して!!」
自分でもビックリするほどの大声で叫んでいた。
「だって!!!だって!!!好きなんだもん!!海輝の事が!!」
「俺だって好きなんだよ!!お前のことが!!なんで分かってくれないんだよ!!」
「え・・・・・・・・?」
大樹が誰を好きだって?
「小さい頃からずっと・・・、好きだったんだよ・・・・」
ビックリした。大樹が私の事を好き?でも私はいっつも大樹に海輝の話をしていたので、
傷つけていたのかもしれない。
今は大樹の胸の中に飛び込みたかった。もう、何でもいい。
「・・・・っく、・・・・っく・・・・」
涙が頬を伝っていた。
でも、大樹の想いは無駄にしたくないから。絶対に、海輝のことを、諦める。
「多分、まだ忘れられないと思うけど・・・・。海輝の想いはまだ消せないと思うけど。
でも消したい。大樹のためにも」
そして最後の一言を。
「大樹の彼女にならせて」
大樹は少ししてから返事をした。たまらなく嬉しいのかな?
「喜んで」
そしてキス。
そんなこんなで修学旅行は終わった。
帰り道。
「楽しかった~!!」
私は思いっきり夕暮れの空気を吸った。
「・・・・・」
大樹は答えない。
「どうしたの?」
「俺、愛羅のこと放すつもりないぜ?それでもいいの?」
何、その質問。まさか、私が裏切るみたいな言い方。
「それでもいいよ。だって言ったのは私でしょ?『大樹の彼女にならせて』って」
「そうだな・・・・」
大樹は私に顔を近づけた。
・・・甘い甘い口付け。
やっと・・・!!やっと・・・!!かけたぁ。
待ってくれていた皆さん。(多分いないだろうけど)本当に申し訳ございません!!
何ヶ月も何ヶ月も先延ばしにして~(泣)