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友達

作者: マーク
掲載日:2026/03/03

友達が死んだ。


友達だと思ってたやつが、死んだ。


俺がそれを聞いたとき。


俺は悲しめなかった。


最初に思ったのは


『なんで』


それだけだった。


––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––


あいつと初めて話したのは確か、移動教室、二年生のときだった。


そのとき俺はトイレに行ってて、時間に間に合わないと思って、急いで荷物をとりに教室に行ったんだ。


そこで。

椅子に座って、何も動いていないやつを見つけた。


扉が開いてたのは、こいつがいたからなんだな。

なんて、くだらないことを考えていた。


『遅れるぞー』


ボーッとしてたから、声をかけた。


あとどれぐらいかな、と思って時計を見ると。


思ったより時間に余裕があった。


でも、そいつしか居なかった。


『そうだね』


それだけ言って、そいつは椅子から立ち上がった。


どうせなら一緒に行こうと思って、そいつの隣を歩いた。


そんで、聞いたんだ。


『なんで、ボーッと一人で座ってたんだ?』


『とくに理由はないよ』


嘘をついてはなさそうだった。


だから俺は。


自分のペースを持ってるやつなんだと、そう思った。




それから。


俺は、なにかとそいつにちょっかいをかけた。


休み時間にそいつと喋ったり、ちょっとした相談なんかもした。


そいつはいつも、どこか達観した様子で、何もかも諦めたみたいに


『頑張ってるんだね』


そればっかりを言った。


自分は頑張ってないとでも言いたかったのだろうか。




いつからか。


そいつの周りには、人が集まるようになっていた。


悪口を言わず、否定もせず、心からの肯定をしてくれるようなやつだったから、それも当然だと思った。


しかし、平均ちょっと下の俺よりも勉強ができなかったのには驚いた。


そいつが話すことにはいつも賢さがあって、自分の中で、理論に否定を繰り返していたような、そんな洗練された感じがあったから。


勉強で人を測ることは出来ないな、なんて、ませたことを考えていた。




三年生になって。


みんな、進路のことばっかりを話していた。


そいつはどうだったのかと言うと、人の相談ばかりに乗っていた。


そんなだから、俺は気になった。


『  。進学と就職、どっちにした?』


『俺は、就職にした』


こいつなら、どこでもやっていけると、俺は思った。


だから、心配なんてしてなかった。


『そうか。高校卒業しても、仲良くしてくれよな』


本心からの言葉だった。


なんというか、良心というか、自分の善の部分がこいつなんだと、そんな風に思っていたから。


『…そうだね』


いつも通り、どこか遠くを見ながら答えた。










『  さんが、自殺しました』


『…………は?』


何も考えられなかった。


ただ、


『なんで』


それだけ、口から勝手に出ていた。


言葉だと認識できないくらい、震えていた。




学校は休校。

二月から自由登校だったから、それが少し早まっただけ、なんて言われていた。


俺は専門学校に受かっていたから、家にいた。


休みになる前。


アンケートが配られた。


何か予兆はなかったか。

今悩んでいることはないか。


そんなことを、調査するためのものだった。


遅い、とは思った。



俺は。

何も書けなかった。


あいつがいなくなったことが、受け入れられなかった。

何も、考えられなかった。


悲しみも、怒りも、何も浮かばなかった。


ただ、疑問だけが、俺の心に充満していた。


いま思い返すと。


俺は、あいつのことを何も知らなかった。


なんとなく、あいつが聞いてほしくなさそうだったから。


俺は、何も聞かなかったんだ。


––––––––––––––––––––––––––––––––––––––––



そうして、気付く。


あいつはもう、手遅れだったんだと。


「理由はない」


それが、あいつの全てだったんだと。


誰かが悪いと断じてしまえば、きっと楽。

でも現実は、曖昧で、鈍くて、静かに壊れていく。


あの子は多分、どうしても死んでたたろうね。

後悔することさえ、許してくれないだろう。

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