第7話 冒険者ギルドで仕事を受けよう!!
「いいですか、ベル。冒険者ギルドの依頼書は、この掲示板に張り出されてますから」
「わかりました、ルミアさん。……で、自分のランクに合ったクエストを受ければいいってことですよね?」
ベルを連れて初めて、冒険者ギルドへとやってきた。
ルミアはもう何度も訪れたことがあるため、基本的な説明を任せている。
子を見守る親のように、少し離れたところで観察していた。
「うわっ、ヤバッ。あの女の子たち、凄く可愛いな?」
「それな? 俺、金髪の女メチャクチャ好みだわ~。顔の可愛さも最高だけど、脚もエロ過ぎ。あ~あの女と一日中エロいことしてぇ~」
「俺はどっちかというと獣人の女かな? ツンとした感じがマジで堪らん! 着てる服もきわどいし、絶対あれは男を誘ってるって!」
近くにいた男たちの、下品な猥談が聞こえてきた。
……まあ実際に二人は相当可愛いし、体つきもかなり魅力的なのは確かだ。
【奴隷着】を着た二人のボディーラインを、日々拝んでいる俺が保証しよう。
なので男の冒険者たちが、こうして鼻の下を伸ばしてしまうのも無理はなかった。
……指一本と触れさせてやる気はないけどね。
「――ご主人様! 依頼、受けてきました!」
ルミアがパタパタとこちらに駆けてくる。
ベルも後ろに引っ付いていた。
ルミアはまるでおつかいを成し遂げた子供のように。
モジモジと褒めて欲しそうな、何かを期待する眼差しをしていた。
……うわっ、可愛い。
「お~流石はルミアだ。任せて正解だったな」
「えへへ……ありがとうございます」
頭を撫でると嬉しそうに、蕩けたような笑顔を見せてくれる。
すいませんねぇ、うちの奴隷が可愛すぎて……。
「……うわっ、あいつの奴隷なのか」
「いいなぁ……毎晩、絶対エロいことしてんだぜ?」
いやらしい視線を向けていた男たちが、俺を見てギョッとする。
同時に悔しそうな表情で俺を睨みつけて来た。
……すいませんねぇ、毎晩、エロいこと全然してなくて。
「んっ、んっ……」
いつの間にか、ベルが俺の背中に隠れていた。
早くこの場を去りたいと主張するように、服の裾をチョンチョンと可愛く引っ張ってくる。
家ではよくしゃべるのに、外に出るとこの子は人見知りを発動するらしい。
……ベルさん、弱ってるような表情とか仕草、可愛すぎでしょ。
まあここは特に性的な視線が露骨だから、余計早く出たいか。
◇ ◇ ◇ ◇
小高い山の麓にある森の奥地。
『ゴブリン討伐:Eランク』の依頼書を再び見返した。
「……この先だな」
開けた場所に、複数の小さな足跡があった。
その向こうに、小さな洞窟が見える。
ゴブリンの巣穴だ。
それを確認して、いったん引き返す。
少し離れた場所へと戻ってきて、準備を整えることにした。
「……あの、ご主人様。万全を期すために、その、【能力解放】しておくべきかと」
ルミアがモジモジと、恥ずかしそうにしながらも進言してきた。
そして合図するように、チラチラとベルに視線を送っている。
「あっ、うぅ……わ、私も。その、【能力解放】、しておいて、欲しいです、マスターさん」
ベルも羞恥心で一杯というように、顔を真っ赤にしていた。
ペタンと頭に伏せられた狼耳も。
恥ずかしさを懸命に堪えるように、プルプルと揺れている。
……戦いに備えて、パワーアップしておきたいというのは本音なんだろう。
だが【能力解放】の際に起こることを想像して、二人ともこうなっているらしい。
[奴隷:ルミア 能力解放 画面]
“スキル 火魔法”
火魔法が使えるようになります。
●保有経験点
力:68
技:102
魔:124
調教:201
●必要経験点
力:0
技:75
魔:100
調教:30
― ― ― ― ―
[奴隷:ベル 能力解放 画面]
“スキル 視野”
視野が広くなります。
●保有経験点
力:119
技:54
魔:33
調教:102
●必要経験点
力:30
技:50
魔:0
調教:20
― ― ― ― ―
ルミアもベルも模擬戦を重ねて、経験点が貯まっていた。
ただ種族や戦い方が関係するのか、それぞれ多く得られる経験点が違っている。
ルミアは人族でバランスが良い。
ベルは獣人族ということで、シンプルに“力”の経験点が良く貯まった。
……どちらも【奴隷着】を装備することになると、“調教”の経験点は一気に稼げるけどね。
“調教”の経験点は“HP”や“筋力”などの能力値に限らず、スキルを習得するなど。
どんな場面でも必要になってくる。
……強くなってもらうためにも、模擬戦では今後もどんどん二人を負かそう!
「わかった。じゃあ解放するぞ――」
今、二人が習得できて。
なおかつ必要だろうと思えるスキルを選ぶ。
その取得を確定し、【能力解放】した。
「あっ――」
「んっ――」
――魔力でできた鎖が、どこからともなく現れた。
ルミアとベルの全身を、瞬く間に拘束してしまう。
「んぁっ、んんっ~!」
身動きを完全に封じられた、あられもない姿をさらしている。
その状況を客観的に認識してしまったためか、ルミアはかぁっと赤くなった。
体に鎖が絡みつく度に色っぽい声を上げる。
そのことがさらにルミアの羞恥心に拍車をかけているようだった。
「うぅっ……」
ベルも恥ずかしそうな、それでいて切なげな声を上げる。
何とか少しでも隠そうと身じろぎするが、ベルの全身を縛り上げる鎖がそれを一切許さない。
逆に動いた反動でさらに鎖が絡まるようで、余計に甘い声を上げている。
冒険者の男たちが羨み、魅力的な姿を想像していただろう。
そのルミアとベルが。
俺の前でだけ見せる、とても色っぽい顔。
また、この甘く切なげな声も。
俺だけしか聞くことができないのだと思うと、“男”としての優越感を強く刺激したのだった。
[ステータス:ルミア]
●能力値
HP:18/18
MP:15/15
筋力:11(+5)
耐久:9
魔力:10
魔耐:8
器用:14
敏捷:11
●スキル
【剣術Lv.1】
【筋力上昇Lv.1】
【火魔法Lv.1】New!!
[ステータス:ベル]
●能力値
HP:22/22
MP:6/6
筋力:21
耐久:13
魔力:5
魔耐:7
器用:7
敏捷:21
●スキル
【視野Lv.1】New!!
◇ ◇ ◇ ◇
準備万端で、ゴブリンの巣穴へと突入した。
意外に広い空洞の中、何体ものゴブリンたちと接敵する。
黄緑の体色は純粋に気持ち悪い。
生理的嫌悪すら感じさせる。
松明での明かりがなければ、不気味さすら感じさせる見た目だった。
「GOBUU!!」
「GOBUAA!」
「GOBU,GOBO!」
奴らは、ルミアとベルを見て舌なめずりする。
鋭い目は極上の獲物を見つけたと、さらにキュッと細まっていた。
性的な欲情を隠そうともしない視線。
ただ二人を雌としかみなしてない、獣の目だ。
気色悪い意思が、これでもかと漏れ出ている。
そうして、一番にその快楽のはけ口を手に入れるのは自分だと。
ゴブリンたちが他を押し退けん勢いで駆けてきた。
「はぁっ、やっ、りゃぁぁ!!」
――そんな悪意を、うちの頼もしい奴隷たちは物ともしなかった。
決して足場が良いわけではない洞窟内を、ベルは外と変わらぬ速度で走る。
グンと勢いに乗ると、手始めに、先頭のゴブリンの頭を殴って吹き飛ばした。
文字通り頭が吹き飛んで、首から体液が飛び散る。
「GOBUGYA――」
仲間の死に、露ほども感情を動かされないゴブリンたち。
むしろそれすらも獲物を捕らえるために利用しようと、左右からベルを挟みこむように動く。
「そこっ、ですっ!!」
――しかしベルは冷静だった。
顔の横に目でもついているのかと思うほど、ゴブリンたちの動きが的確に見えている。
模擬戦では負けが続いていても、繰り返すことで実戦感覚が確実に身についていた。
またその冷静な状況判断を補う【視野Lv.1】も、上手く機能してくれている。
「GOBU!!」
「GOBUBUBU!!」
「GOGYAA!!」
ベルが単騎で、敵の数をどんどん減らす中。
ゴブリンたちにも、次々と奥から増援がやってくる。
やはり純粋に、数が多かった。
「――【火球】!!」
その援軍が合流してしまう前に。
ルミアが覚えたての魔法を放つ。
大きな火の玉は勢いよく飛んで、奥にいたゴブリンたちへと見事に命中。
全身が火だるまになって、援軍のゴブリンたちは一気に焼け死んだ。
「はっ、やぁっ!!」
前衛を張るベルが戦いやすいよう、さらに視野の広いルミアがバランスよく戦っている。
魔法で一気に火力を出したかと思えば、時には片手剣を抜いてベルに加勢する。
全体的に戦局を見ることができるルミアに、魔法という他の戦闘手段を与えたのは正解だったようだ。
ゴブリンは数が多いので、どんどん二人の経験点が貯まっていく。
1体倒すたびに全経験点+2はとても美味しい。
ごちそうさまです!
そうして粗方、掃除し終えたかと思った時。
「……GOBUBU?」
奥から1体のゴブリンが。
その巨体を揺らし、のそりのそりと現れる。
子供ほどしかなかった今までのゴブリンとは、明らかにサイズが違う。
ホブゴブリンだ。
その大きな体にピッタリの、ズシリと重そうなこん棒を構えている。
かなり戦い慣れした、ここら一帯の中での強者みたいな風格があった。
「【闇箱】」
――まっ、井の中の蛙だけどね。
ホブゴブリンを取り囲むように【闇魔法】を展開した。
巨体の四方にできた、半透明の黒い障壁。
「GOBAAA!!」
ホブゴブリンが、怒り狂ったように箱を内側から攻撃する。
大きなこん棒を膂力でもって殴りつけるという、純粋な力技。
……だが闇の箱は、ビクともしない。
次第に箱の中は、闇が濃くなっていった。
やがて箱内が闇で満たされると、ホブゴブリンの姿は見えなくなる。
グシャリと、何かが激しく潰れるような音だけが聞こえた。
「……うん。お掃除完了!」
そして闇の箱が消えた時。
ホブゴブリンの体は跡形もなく。
メチャクチャに潰れた姿だけが残っていたのだった。
「お~! 流石ですご主人様っ!!」
「す、凄いですマスターさん!」
あ~。
美少女奴隷たちからのキラキラした尊敬の眼差し、気持ち良いぃ~!!
◇ ◇ ◇ ◇
「お疲れさまでした。こちら、報酬となります。お納めください」
冒険者ギルドへと戻って、依頼完了の報告をする。
多くの硬貨を受け取って、ベルは目を輝かせていた。
「――ルミアさん、ベルさん。ありがとうございました」
それとは別に。
受付嬢さんから、個人的にお礼も言われていた。
「ゴブリン退治って、報酬はそこまで高くないでしょう? でも数が多くて意外に大変で。だからリスクや働きの割に稼げないって、敬遠する冒険者も多いんです」
「…………」
「は~なるほど、です」
ルミアとベルは、説明に納得するように頷いていた。
「――なので、こうして受けてもらえて助かりました。依頼主さんも、凄く喜んでくれてましたよ?」
「あっ――はい! 無事に達成できて、よかったです!」
報酬を貰えた上に、感謝までされる。
依頼を成し遂げた達成感と。
自分が誰かの役に立てたという喜びで、ベルはとても嬉しそうだった。
「ふんふふ~ん。えへへっ!」
帰り道。
上機嫌な足取りで、可愛くハミングしているベルを。
ルミアと一緒に、微笑ましく見ていたのだった。




