第6話 実戦に勝る経験は無し!!
「ほらほら、二人ともどうした? 攻撃しないと勝てないぞ~?」
実戦に勝るトレーニングはないと、家の庭で行っている模擬戦。
相手のルミアとベルは、歯がゆそうに俺を見てきた。
「っ!! 言われっ、なくても! わかってます!」
ベルが勝機を見出そうと焦ったように、持ち前の身体能力を生かして駆け出す。
やはり獣人だけあって、とても動き出しが速い。
そこからグンと加速して、すぐに距離を縮めてくる。
「その速度は流石だ。だけど――【闇弾】」
【闇魔法】でできた黒い魔力の弾丸。
それを、予測できたベルの進路上へと出現させる。
【闇魔法】は【奴隷魔法】とイメージが近く、親和性があって簡単に習得できた。
でも講習では何も言ってなかったので、これも奴隷テイマーであれば普通に誰でも使えるようになる能力なんだろう。
「えっ――」
球状をした無数の闇が、一斉にベルへと襲い掛かった。
「ベルっ、避けてっ!!」
「っ!?――」
ルミアの声が飛び、反射的に何とか回避が間に合う。
だが弾丸の幾つかが、ベルの脚をかすっていた。
僅かに触れてしまっただけで、致命傷には程遠いはず。
だが――
「しまった!?――クッ!!」
ベルは致命的なミスを犯してしまったというように。
その幼さが残りながらも美しい顔を歪ませる。
ベルの感覚は正しかった。
◇ ◇ ◇ ◇
――攻撃に触れてしまった脚先は、まるで黒い絵の具が飛び散ったような跡が広がっていた。
そして闇に汚染・浸食されているかのように。
テカテカと黒光りする色は、ジワリジワリと面積を拡大していく。
「安心しろ~。【テイム補助】の一種だからな」
主人と従者、つまり俺とルミア、ベルにも使用している【奴隷魔法】の能力だ。
対象を傷つけず、精神的・疲労ダメージを与えるだけになる。
なのでこうした味方同士で行う模擬戦にもピッタリなのだ。
前回の“犯罪者狩”で学んだことだがある。
男の奴隷は売るので、最悪傷ついてもいい。
だが女奴隷はベルのように、できるだけ手元に残しておきたい。
なので女の奴隷候補者に対しては、何としてでも無傷でテイムを成功させたいのだ。
いくらテイムに成功しても、大きなケガを負わせたらその後が大変だもんね。
――そうした強い想いが能力に具現化したのか、【テイム補助】の効果が“対女性限定”で成長したのである。
「クッ、『安心しろ』って!? マスターさん、そんなの、できる訳、無いじゃないですか!!」
プリプリと可愛く怒って、ベルが自棄になったように飛び込んでくる。
あ~あ~、そんな突っ込んじゃって。
だが手加減はせず。
【テイム補助】の効果を溶かし込んだ、闇の弾丸をお見舞いする。
「っ!!」
前後左右から襲い掛かる【闇魔法】になすすべなく。
ベルは全身に、闇の弾丸を食らってしまった。
今度はさっきの比ではなく、闇の絵の具はベルの全身に塗りたくられている。
――そして闇は、一定のダメージ蓄積を経て、その姿を変化させた。
「あっ――」
ベルの四肢に。
テカテカと黒光りする長手袋・太もも丈のブーツが勝手に装備されていた。
そして胴体も。
鼠径部まで丸見えになるような、とてもきわどいハイレグ衣装に強制変身させられている。
それぞれが身体にピタリと貼り付くような生地で、ベルの成長途上なボディーラインがハッキリと見えてしまっていた。
小ぶりな胸も。
細く引き締まった腰の線も。
プリっとした可愛らしいお尻の形も。
すべて衣装の上から、さらされてしまっているのだ。
「うぅぅ~」
ベルはとても恥ずかしそうに、顔を真っ赤にしていた。
少しでも隠せないかと左腕で胸元を抱くようにし。
右手は股間に伸ばして被せ、必死に覆い隠す。
また無意識に、生地を伸ばそうと引っ張ってもいた。
だが身体に張り付くようで脱ぐことはおろか、布の面積だって1mmも増えやしない。
これは俺だけが使える対女性限定の、【テイム補助】が進化した能力だ。
特定箇所のダメージが一定限度を超えると発動する。
俺の許可なしに脱衣不可となる、特殊な魔装具へと変化するのだ。
「はいっ、ベルは脱落ね――」
それは別に、恥ずかしい格好になったから負けという意味ではもちろんない。
ベルの四肢や胴体、それも強制的に装備させられた魔装具に。
突如として、夥しい数の魔法陣が出現した。
黒くテカテカと光る長手袋、太もも丈のブーツから。
まるで生えたように鎖が次々と飛び出してくる。
「うっ――」
そうしてベルは手足を拘束され、全く身動きが取れず。
あえなく戦闘不能となったのだった。
「さっ、残るはルミアだけだ――」
「うっ、うぅぅ~」
恥ずかしい衣装へ強制的に着替えさせられたベルを見て、ルミアは顔を真っ赤にしている。
自らもああなった光景を想像してしまったに違いない。
……ルミアさん、ムッツリスケベな子。
「――い、行きます! やぁぁっ!」
だが敗戦濃厚となっても、ルミアは戦う意思だけは消さなかった。
そういう姿勢はとても大事だ。
必死さが、生への渇望が。
勝ち筋を拾うことに繋がるときだってある。
……ま、今回は違うけどね。
「せいっ、やぁっ、たぁっ――あっ!? きゃっ!」
【剣術Lv.1】を駆使して、何とか【闇弾】の幾つかを撃ち落としていく。
だが物量で押され、すぐにさばき切れなくなった。
全身に被弾し、ルミアの身体も真っ黒に染まる。
「あっ――うぅぅ~」
そして四肢に加えて胴体も、ダメージ蓄積が一定を超えた。
ルミアの身体にも、とても恥ずかしい黒の魔装具――【奴隷着】が、強制的に装備させられてしまう。
。
その効果で、ルミアも俺の許可なく魔力が一切使えなくなった。
そして【奴隷着】は、その全面積が【テイム鎖】のマーキングポイントとなる。
すなわち対象がどこにいようが。
どれだけ離れていようが。
どれほど警戒しようが。
俺は目をつむっていても、そこに自分の限界数を超える【テイム鎖】を発動させられるのだ。
……凄く恥ずかしい格好になるってのは、単なる副次的な効果ね。
俺は別にそこを意図してないから、うん。
「はい、ルミアも脱落、俺の勝ちねぇ~」
だから実質、あの魔装具を奴隷・奴隷候補者に装備させられれば。
テイム・拘束は成功したも同然となるのである。
ルミアの長手袋・黒のニーハイブーツからも、魔力の鎖が次々と出現した。
そしてルミアが、その細く綺麗な手足を縛り上げられる。
種族の違う、それぞれタイプも異なる美少女二人が。
恥ずかしい衣装を強制的に装備させられ、そして身動きできない状態で緊縛されていた。
「残念。勝てばお小遣いだったのに」
恥ずかしい格好にはなっちゃうけどケガや死ぬわけじゃないし、罰金みたいな実マイナスがあるわけでもない。
一応ちゃんと戦力的には公平に分けてるので、これに懲りず頑張ってほしい。
「うぅぅ~……はい」
「悔しいです……それと同じくらい恥ずかしいです。むぅ~」
二人の眼福な光景を見られるだけでも。
毎日お小遣いを賭けるには十分だと思えたのだった。




