第3話 狩りに参加させてもらおっか
「お~いリュート、こっちだこっち!」
知り合いの男が、大きく手を振って呼んでくる。
同じ奴隷テイマーの、ガノーだ。
「おっす」
軽く手を上げて挨拶。
軽薄そうな奴だが、一応俺より先に奴隷テイマーになっている。
俺が奴隷テイマーになりたいと最初に相談したのも、このガノーだった。
「うぉっ! その子が噂の“ルミア”ちゃんか! うわっ、超絶可愛いな、羨ましいぜ!」
俺の後ろに控えるルミアを見て、早速鼻の下を伸ばしていた。
……まあ興奮するだろうなとは思ってたけどね。
「ど、どうも……」
ルミアは恥ずかしそうに挨拶を返す。
なんか俺以外の相手だと人見知りを発動するようだ。
これはこれで可愛らしい。
「……で? 俺が最後でいいのか?」
「え? ああ、そうだな……」
集合場所になった森の前。
そこでガノーが、キョロキョロと辺りを確認する。
他は、俺たちのようにつるんでる奴隷テイマーたちが2組の計4人。
さらにテイマー一人につき奴隷の従者もそれぞれいるため、全部で8人いた。
「リュートとルミアちゃん。俺と、従者の奴隷を合わせて12人。それが今回の“犯罪者狩”のメンバーだ」
ガノーが、一人の奴隷テイマーに視線を向ける。
一番ガタいもよく、いかつい顔したオッサンだ。
そのオッサンが俺の到着を見ると、前に出て話し始める。
「――よし、全員揃ったようだな。俺が、今回の“犯罪者狩”でリーダーを務める。何かあったら俺に言え」
オッサンが注意事項を何点か伝えると、簡単に自己紹介の時間となる。
奴隷テイマーは俺含めて6人全員が男だった。
そしてルミアを除いて、そのお連れとなる奴隷も皆屈強そうな男である。
「……えー。リュートです。“犯罪者狩”は初めての参加なんで緊張でドキドキ、胸が張り裂けそうです。よろしくお願いします」
自分の番が来たので、渋々ながらも名前を告げる。
すると、何故か他の奴隷テイマーたちがざわつき始めた。
……あれ~全然ウケない。
「えっ、“リュート”ってあの?」
「5分とせず【奴隷魔法】を覚えちまったっていう、ヤバい新人か?」
「しかも最初にもらえる奴隷、一発でテイムに成功したって聞いたぜ? 俺なんて5回試してやっとテイムできたってのに」
漏れ聞こえる話からすると。
……どうやら俺、頭おかしい奴って思われてます?
いやいやいや!
俺普通に教えられたことをやっただけなのに!
それでこんな反応されるのはおかしい。
つまり俺に【奴隷魔法】を教えてくれたあの“ラーズ”っていう教官がおかしいのだ。
失礼しちゃうわ、ぷんぷん!
◇ ◇ ◇ ◇
「【奴隷テイマー】ギルドの裏取り班から、犯罪者一覧表は貰ってるな? 今回のターゲットは8名だ」
森の中へと進み、狩り前のミーティングが始まった。
リーダーが束ねられた紙を掲げる。
同じものをギルドでもらっていたので、ルミアと一緒にペラペラとめくっていく。
似顔絵のある紙もあればただ罪状だけしか書いてない物まで。
内容は8枚どれもバラバラだった。
窃盗、窃盗、暴行、暴行、脱税……。
「軽微犯が殆どですね」
ルミアがリストに視線を落としたまま言う。
「そうだな~。まあそれでも、犯罪は犯罪だから」
悪いことは悪い、などと正義漢ぶったことを言うつもりはない。
そうではなくて――
「――犯罪者は、例外なく【奴隷テイマー】の獲物だ」
リーダーの男が、俺の言いたいことを代弁してくれた。
「今回は全員が“獣人”だから、身体能力の高さに気をつけろ。それと、言うまでもないと思うが“獲物は早い者勝ち”だからな? 新人だろうとベテランだろうと関係ないぞ」
リーダーが、チラッと俺を見ていた。
『遠慮なんてしてやらないから、お前も俺たちに遠慮する必要はないぞ』、そう言われた気がしたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
狩りを開始して、30分ほどしただろうか。
森の奥で、獣人の若い男と遭遇した。
「クソッ! 何でここがバレたんだよ! しょうがねぇ――うらぁ!!」
犬耳の男は俺たちを視認すると、真っ先に攻撃を仕掛けてきた。
とても血気盛んである。
明らかに無実の人間がすることではない。
「ご主人様っ!」
その剣を、ルミアが余裕をもって受け止める。
力で押し込んで来ようとするが、ルミアはそれを技をもって受け流していた。
「うらぁっ、うらぁっ、おらぁぁ!!」
「っ! くっ、んっ!」
剣での打ち合いが続いた。
ルミアが若干、押され始めたように見える。
……だが俺には分かる、まだルミアは余裕があった。
【剣術Lv.1】があれば、そういう力の抜き具合も上手くなるらしい。
しかし勝負所と早合点したのか、犬人の男が一気にケリをつけようとする。
「おらぁぁ!!」
――意識が、完全に俺から逸れた!
「【テイム鎖】!!」
【奴隷魔法】をすぐさま発動した。
魔力の鎖が。
完璧なタイミングで、真横から男へと襲い掛かる。
「なっ!?――」
鎖がグルグルと男を拘束した。
最初は完全に不意を突かれて焦っていたが、すぐに平静を取り戻したような顔になる。
「へっ、へへ。俺は伊達にクソ奴隷テイマーどもから逃げてないんだよ。こんな柔っちい鎖、何度だって破壊してきたんだぜ――」
筋肉の発達した両腕に、さらに力を加える。
大きく息を吸い、男は鎖を内側から壊そうと試みた。
だが――
「……んっ、んんっ!? な、何だこれ、硬ぇ、全然、千切れねぇ!」
何度も何度も破壊を試みるが、鎖は全く千切れそうにない。
その間にも、鎖は収縮を繰り返した。
「いや~残念だったね。【テイム鎖】の硬さってさ。奴隷テイマーによってその質が全然違うんだよ」
俺程度の鎖でも捕まえられるってことは。
この犬人が会った奴隷テイマーって、相当腕が無かったんだろうなぁ。
「チクショォォ!!」
男は何かを悟ったかのように、悔しさのあまり絶叫していた。
鎖は一体化を完了したというように。
男の体内へと、溶け沈み消える。
そして男の腕には奴隷紋が、浮かび上がっていたのだった。




