第27話 色々と覗き見ちゃおう!!
「……さて、っと」
ヴァニラとフユへ、軽食を届け終え。
次の奴隷たちを探しに行く。
確か、今度の二人も外にいたはず……。
「おっ、いたいた」
表の入口側へと回る。
そこでは、掃除をしているルミアとハルがいた。
「ルミア先生っ! 次はどうしたらいいでしょうか?」
「はき掃除、終わりましたか? ……そうですね。では一緒に窓ふきをしましょうか」
二人は唯一、直接テイムした者・された者のコンビだ。
だがギクシャクした様子は一切ない。
むしろルミアの人当たりの良さが上手く作用し、すぐに打ち解けたようだった。
今はルミアが自腹を切ってプレゼントした、ミニ丈のおそろいメイド服で掃除に精を出している。
「いいですか、ハル? 魔法は一日にしてならず、です。常日頃の何気ない行動一つとっても、魔法の上達に繋がる要素があるんです。だから、掃除も手を抜いたらダメですよ?」
「はいッ!」
ハルは魔術師だった。
ルミア・ベル・シルヴィー・ヴァニラの中で、最も魔法に長けているのはやはりルミアである。
そこで、ルミアにハルの世話役を任せたのだ。
「ルミアちゃん、魔法の先生としても凄く適任なんでしょうね」
「まあ、ルミアは何でもできるからなぁ」
切りの良さそうなところで声をかけようと、二人で少し待つことに。
そうしてシルヴィーとともに話しながら、ルミア達の様子を微笑ましく見守っていた。
ハルは元々明るい性格らしい。
ルミアといるとよくしゃべり、よく笑っていた。
……だがその笑顔が、木の台に上ると急に引っ込んでしまう。
代わりに羞恥心が湧きあがってきたというように、横顔をかぁっと赤くしていた。
「……あの、ルミア先生? これ、台に登っちゃうと、その、下着、見えちゃいそうで」
窓ふき雑巾を持つ手はそのままに。
左手で、必死にスカートの裾を引っ張っている。
少しでも生地を伸ばして、下着が露出するのを防げないか。
そんな意思が窺える、可愛らしい抵抗に見えた。
……だがもちろん、それでミニ丈スカートの生地が伸びてくれるはずもない。
ハルの優しい髪色を思わせる、ピンク色の下着がチラチラと見えてしまっていた。
「――ハル。背筋をピンとして、胸を張ってください。堂々としていれば、案外にスカートの中は見えないものですよ」
そうして手本を見せるというように、ルミアがハルと交代する。
木の昇降台に上がると、言葉通り姿勢よく胸を張っていた。
「おぉ~! 凄くカッコいいです、エレガント、美しいですルミア先生ッ!」
そしてその姿を見て、ハルは目をキラキラと輝かせて称賛する。
お世辞でなく本心で言ってるのがわかる、純粋そうな表情をしていた。
既に芽生え始めている、師弟の美しい絆関係に頬が緩みそうになる。
「……でも、見えるよな?」
「……はい。ルミアちゃん、白のショーツ、バッチリ見えちゃってますね」
ガーターベルトのその先に。
大胆なセクシー下着が、しっかりと顔を覗かせていたのだった。
ルミア当人はもちろん。
下にいるハルも、目が輝きすぎて盲目的になっているようだ。
こちらとしては目の保養になるが、放置するわけにもいくまい。
……それにシルヴィーがいる手前、ずっとルミアの下着に夢中になるのもバツが悪いしね。
「――お~い、二人とも。ちょっと休憩にしないか~?」
わざとらしく呼びかけ、特にルミアの作業を一時中断してもらうのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「美味しかったです。ごちそうさまでした、シルヴィー」
「シルヴィーさん、ありがとうございます!」
掃除を一時切り上げた二人は、シルヴィーお手製のサンドイッチを完食。
着ているメイド衣装に意識が引っ張られているのか、食べる動作・仕草にも品を感じた。
「本当に、今でも夢みたいです。こんなに素敵で可愛い洋服が着られて。今みたいに軽食まで食べられて……」
ハルが、特にルミアへと見えるように。
右足の踵を軸にして、クルッと一回転してみせた。
短いスカートが少しだけフワっと浮き上がり、中の下着が見えてしまわないかドキドキする。
だがその分、衣装の可愛さもより際立っていた。
おそろいのメイド服をプレゼントしてくれたルミアへ、感謝を示しているようである。
「ふふっ。……ハルにも、そう遠くない内に後輩ができるでしょう。そうしたら、自分がしてもらって嬉しかったことを、あなたもその子にしてあげてくださいね」
「ルミア先生……はいッ!!」
ルミアの言葉は満点以上をあげたくなるほど、後輩奴隷への慈愛と思いやりに満ちていた。
そしてハルにも、それがしっかりと伝わっているのがわかる。
感動で目を潤ませている様子を見るに、ハルの心にしっかりと刻み込まれたみたいだった。
……水を差すようで悪いが、言うべきことは言わないといけない。
「あ~シルヴィー」
俺が言うよりも角が立ちにくいだろうと、ルミアと同性であるシルヴィーに任せることに。
シルヴィーも了解したというように、黙って頷き返してくれる。
もちろん、ルミアとハルは何のことかわからないといった様子だった。
師弟揃って、可愛らしく首をかしげている。
「あの、ルミアちゃん。――ゴニョゴニョ……」
「……えっ!?」
シルヴィーが耳打ちすると、ルミアの顔が途端に真っ赤になった。
俺の反応を窺うように、真っ先にこちらを見てくる。
俺と目が合うと、恥ずかしそうに視線をキョロキョロさせた。
自身の短いメイドスカートを見て、また俺の方へと戻ってくる。
照れもあるが、それ以上に羞恥心が勝ったかのような。
とても庇護欲をそそる、非常にキュートな顔になっていたのだった。
「……その、あの、えっと。あ、あはは」
頭が真っ白になって、何を言えば良いかわからない。
そんな、曖昧な笑みに見えた。
だが羞恥心に耐えながらも。
何とか笑顔を浮かべようと頑張るルミアは、とても可愛らしかったのだった。
「――すいませ~ん、配達に来ましたぁ!」
タイミングが良いのか悪いのか。
そこで、他者の来訪を告げる声が聞こえたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
ちょうど在宅のため、自分が応対しようかと腰を上げかけた。
だがルミアがそれを制す。
「ハルと私が対応します。ご主人様はおくつろぎください――行きましょう、ハル」
「えっ!? ――あっ、は、はい!」
そして止める間もなく、門へと駆けて行ったのだった。
……まあ微妙な空気だったしね。
穴があったら入りたそうにしてたから、ルミア的にはこの場を離れられてちょうど良かったのだろう。
休んでいて良いとは言われたが、気になって様子を見守ることに。
「あっ――え、えっと。リュートさんのお宅に、食料を届けに来ました」
顔見知りの若い青年奴隷が二人いた。
言葉通り、食料を配達しに来てくれたのだろう。
毎回多くの食材を買って持ち帰るのは大変だからと、定期的に届けてもらう契約を結んでいるのだ。
配達料はかかるが、それでルミア達の負担が減るなら安い物である。
あの二人はちなみに、ガノーがテイムした奴隷だった。
だが借金がかさんで仕方なく担保に入れたらしい。
そしてそのまま借金を返せず、結局は売ることになったと聞いていた。
「いつもありがとうございます。――この子は新しく従者になった“ハル”です。今後、この子も応対に当たることがあると思いますので、よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いします、ハルです」
ルミアはそつなく、ハルの顔見せも済ませていた。
それもあって、自分たちが行くと言ったのだろう。
「あ、えっと。はい、よろしく、です……」
若い青年たちは上がった様に、ルミアとハルを見て顔を真っ赤にしていた。
メイド衣装、特に綺麗な脚が大きく露出するミニ丈スカートへ視線が釘付けである。
年頃の若い男にとっては、美少女二人のメイド姿は目の毒だろう。
二人はチラチラとルミア・ハルを気にしながらも。
何とか仕事を全うしようと、力を合わせていた。
荷車から、食料をせっせと下ろしていく。
「少々お待ちくださいね――」
ルミアが、作業中の青年らとハルを置いて、一度家の中に。
しばらくして、盆を持って戻ってくる。
その上には、特製のドリンクが二人分乗っていた。
来訪者に振る舞っている、自家製の果実水である。
「お疲れでしょうから、どうぞお飲みください」
「どうぞ」
ルミアが一つ。
成り行きを察したハルも一つ、それぞれ手に持った。
そして青年たちに、一つずつ手渡す。
「あ、えっと、どうも」
「あ、あざッス」
しどろもどろになりながらも、二人はルミアとハルから果実水を受け取る。
美少女の指先がそっと触れ、若者たちが興奮しているのが伝わってきた。
美味そうにゴクゴクと喉を鳴らし、すぐさま飲み干す。
豪快な飲みっぷりで、男らしさもアピールしているかのようだった。
「っぷは~!」
「う、ウマぁ~!!」
それを見て、ルミアがホッとする。
あれは、自分の作った飲み物の出来が、ちゃんと良かったことへの安堵だろう。
……だがそうとわからない二人には、まるで女神の溜息にでも映ったようだ。
「…………」
「…………」
見惚れるように目をトロンとさせ、ボーっとしていた。
あ~あ。
ルミアよ、罪な女じゃ。
……知ってるかい、青年たち?
その子、さっき大胆な白の下着が丸見えだったんだぜ?
「――おっす、配達お疲れさん」
青年たちの目がちょっと興奮しすぎていたので、ここらで姿を見せることに。
男である家主に声を掛けられ、青年奴隷たちはハッとしたように正気に戻った。
「あっ、えっと、は、はい!」
「ウチは中心部から離れてるから、大変だろう? ……今後もよろしく頼むな」
そう言って気さくなお兄さんを装い。
二人の手に、それぞれ銅貨を1枚ずつ握らせた。
奴隷にとっては銅貨1枚でも、貴重な駄賃だろう。
青年たちはすぐ、とても嬉しそうな表情になっていた。
「は、はい!」
「ありがとうございました!」
そうして礼儀正しく頭を下げ、元気に荷車を押して戻っていった。
「――流石です、ご主人様」
応対を終えたルミアが、改めて俺たちの元へ戻ってくる。
もうさっきまでの、気まずい雰囲気はなくなっていた。
言葉通り、尊敬を感じさせる目で俺を見上げている。
「配達の方々が、いつも嬉しそうにウチへと来て下さる理由がわかりました」
ルミアは、俺が毎回彼らにお駄賃を渡していることを言っているらしい。
……いやいや。
あれだけでは、男連中を引き留められないって。
ガノーからのまた聞きだが。
ウチへの配達仕事は、むしろやりたいと手を上げる男奴隷が後を絶たないらしい。
配達の男たちが文句なく、むしろ嬉々としてウチへとやってくる。
……そりゃ、ルミア達が目当てだからだろう。
重くかさばる食材を運ぶのが大変でも。
誰かしら美少女が対応してくれる。
笑顔で労い、美味しい飲み物まで手作りして振る舞ってくれるのだ。
「う~ん……まあルミアちゃんは、主様以外は眼中にないですもんね」
シルヴィーが、ルミアをからかうように苦笑していた。
言い方的に、シルヴィーも俺と同様の考えらしい。
ねっ、普通は美少女目当てだよね。
「へっ!? えっ、な、シルヴィー!?」
またルミアが、茹で上がったみたいに顔を真っ赤にする。
そして物凄い速さでシルヴィーの口を塞ぎ、まくし立てるように俺へ何かの言い訳を続けていた。
「いや、あの、ご主人様、違くてですね!? これはシルヴィーの冗談で。シルヴィーったら……」
「……ルミア先生がこんなに焦ってる姿、中々見れない。やっぱりリュート様の前では、ルミア先生も乙女なんですね……」
そうして騒がしくなったところで。
そこから逃げるように、最後の二人の元へと向かうのだった。




