第26話 上手くやってるか、様子を見よう!!
住人が増えて新たな生活が始まり、早くも数日が経った。
より日常の出費も増すため、お金稼ぎに精が出る。
内職の【テイム鎖】作りが一段落ついた。
若干の疲労と空腹を感じ、厨房へと足を運ぶ。
「おっ、シルヴィー。お疲れさん」
広いスペースに、シルヴィー一人が立っていた。
どうやら、皆の分の軽食を作っているらしい。
「主様! ご苦労様です、休憩ですか?」
手を止め、パッと花開いたような明るい笑顔になる。
「ああ。ちょっと小腹が空いてな」
返事を聞くと、シルヴィーは嬉しそうにパンッと手を打ち合わせた。
「それはちょうど良かったです! 沢山作ってあるので、どうぞお食べください」
今正に作りたての調理パンを差し出してくれる。
ありがたく受け取った。
中央に切れ目を入れ、そこに様々な具材が挟んである。
「あむっ……」
焼いた卵やスライス肉、葉物野菜が一度に口の中へと入ってくる。
柔らかいパンの食感と合わさって、とても食べ応えがあった。
ペロリと完食してしまう。
「んっ、美味かった!」
「そうですか! 主様のお口に合って良かったです」
シルヴィーはホッと胸を撫で下ろしていた。
思わずその大きな胸に目が吸い寄せられそうになる。
だが何とかグッと我慢して、パンをバスケットに詰める作業を手伝った。
3つ、軽食と飲み水が入った手籠が出来上がる。
「俺も持つの手伝うよ」
両手に一つずつ持ち、残りの一つはシルヴィーに任せることに。
「ありがとうございます」
シルヴィーは若干申し訳なさそうな顔をする。
だが並んで歩きだすと、今度は嬉しさが隠し切れないといった雰囲気を感じた。
「……っ~!」
チラッとこちらを窺うように見上げて来た。
視線が合いそうになると、パッと目を逸らす。
だがしばらくして。
また俺の意識が逸れたくらいに、そ~っと俺の横顔を盗み見てくるのだ。
「……えへへ」
そして蕩けたように一人、幸せそうに笑っているのである。
……う~ん、全部気づいてるんだけどな。
だが知らぬ振りをして、シルヴィーにやりたいようにさせてあげた。
コソコソと顔を見てくる、バレバレのシルヴィーさん可愛い。
◇ ◇ ◇ ◇
二人で、裏庭にやってくる。
そこでは既にずっと前から先客がいて、トレーニングに励んでいた。
「そう、もっと一歩目を早く! フユ、盗賊に必要なのはスピードだよ!」
「っ!! は、はいっ、ヴァニラ師匠!!」
ヴァニラとフユが、追いかけっこをしていた。
それもただの追いかけっこではない。
ヴァニラとフユ、それぞれのスカートのお尻部分に、長い帯が挟んである。
それを互いに抜き取られないよう、逃げたり追ったりを繰り返しているのだ。
「わっ、ヴァニラちゃん凄い。片手で地面を押して宙返りしてます!」
隣のシルヴィーは、二人の追いかけっこを夢中で見学していた。
俺も、結構楽しめている。
ヴァニラは手加減しているように見えるが、一向に捕まる気配がない。
逆に攻めに転じれば、フユがすぐ危ない状況になる。
フユもかなり素早い動きをしているものの、ヴァニラを相手にしては大きく力不足となるようだった。
フユが息切れしだしたところを見て、ヴァニラが一気に距離を詰める。
目にも止まらぬ速さでシュッと帯を抜き取ってしまった。
「はい、10セット目もわたしの勝ちぃ~」
……そして特殊な仕掛けでもしてあったのか。
帯を奪われたと同時に。
フユのミニスカートが、するりと地面に落ちたのだった。
……負けた方が受ける罰ゲームみたいなものだろう。
可愛らしい白の肌着が露わになる。
「あっ――っ~~!!」
フユが顔をかぁっと赤くする。
慌てて両手を股間にあてていた。
だがそれだけでは、隠せる面積は限られている。
むしろ手の横からはみ出るようにして、肌着が見えてしまっていた。
そっちの方がより色っぽさや、いやらしさを感じる。
う~ん、ごちそうさまでした。
「――はい、二人ともお疲れさん。シルヴィーが軽食を作ってくれたから、休憩にしたらどうだ?」
「わっ、やった! ――フユ、ごはんにしよ!」
「はい!」
二人は子供みたいに喜び、食事休憩に入ったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「ふぅ~。美味しかった! ありがとう、シルヴィー!」
「シルヴィーさん、ありがとう」
ヴァニラもフユも、俺みたいにペロッと平らげてしまう。
まだ若干物足りなそうではあったものの、満腹では鍛錬に支障が出ると割り切って我慢していた。
「さっきの、見学させてもらいましたが、二人とも凄かったですよ!」
シルヴィーが手放しに二人を褒め称える。
ヴァニラは照れ、フユは嬉しそうに頭を下げた。
「フユは飲み込みも早いし、センスあるよ!」
シルヴィーに褒められたのが余程照れ臭かったのか。
それを隠すように、ヴァニラはフユへと話題を移す。
「師匠にそう言ってもらえると、凄く嬉しいです!」
「何回も言ってるけど、“師匠”はよしてよ。わたし、そこまで大層な人間じゃないのに」
キラキラとした目を向けられ、今度は困ったように頬をかいていた。
二人の良好な関係を目にして、シルヴィーと一緒に微笑み合う。
ヴァニラとフユのように。
新加入した3人を、それぞれ一人ずつ、先輩奴隷の元につけていた。
そうして日常生活のことや、鍛錬、実戦のことについて学ぶ機会を設けたのである。
フユは盗賊らしいので、【怪盗】のヴァニラに面倒見を頼んでいた。
その思惑がある程度は成功しているようなので、一安心だとホッとする。
「――ですがヴァニラちゃんばっかり勝ってると、不公平です!」
そうして一歩引いた視点で見守っていると、シルヴィーが突如として主張しだす。
「本当にヴァニラちゃんも負けた時、同じように下着姿になるのか、わからないじゃないですか」
「えっ、わたしズルはしてないよ!?」
ヴァニラは当然、無罪を訴える。
これは本当に嘘はついてない感じのリアクションだった。
だがシルヴィーに押されると弱いのか、ヴァニラは途端に勢いを失くす。
弱ったようにフユを、そして俺を順に見た。
「……うっ、うぅ~わかったよ」
シルヴィーに押し切られてしまったようだ。
俺にそっとお尻を向ける。
球体をした、兎のフワフワ尻尾とは別に。
スカートに挟まった、長い帯が垂れていた。
「……あの、ご主人。帯、引っ張ってもらえる? ごめんね、こんなこと頼んで」
ヴァニラはとても恥ずかしそうにしていた。
フリフリとお尻を小さく動かし、帯を揺らす。
まるで異性を誘惑するかのようで、とても卑猥な動きに見えた。
「……ん、わかった――」
不正をしていない証明への協力というなら、やぶさかではない。
親指と人差し指で、帯の先をギュッとつまむ。
そして勢いよく、一気に手前に引っ張った。
帯は抵抗感なく、スルッとヴァニラのスカートから抜ける。
そしてほぼ同時に。
ヴァニラの短いスカートも、ファサッと地面に落ちたのだった。
「うぅ~っ!」
ヴァニラもまた、フユのように両手で股間部分を覆い隠そうとする。
少しでも下着が露出する面積を減らそうと、羞恥心に悶えながらも必死だった。
前にはシルヴィーとフユの二人。
後ろには俺一人。
より多くの視線から守ろうと、前を隠す選択も致し方ないと言える。
……だがそのせいで、後ろが全くお留守になっていた。
セクシーな黒のレース下着が丸見えである。
またプリっとしたお尻、引き締まった裏の太ももは目にとても眩しい。
「……ほらっ。わたしもちゃんと、守ってたでしょ? これでいい、シルヴィー?」
「え、ええ。……うわぁ~ヴァニラちゃん、大胆」
ヴァニラは、シルヴィーの言葉を“黒いレース下着を身に着けていること”だと解釈したらしい。
だが今のシルヴィーのニュアンス的に“俺にお尻を向けて、しかも全く下着を隠そうとしないこと”を指しているようだった。
「大胆って、そんな、これくらいはルミアだって……へっ? フユもシルヴィーも一体どこを見て――あっ、うわぁっ!?」
二人の視線を追いかけ、振り向き。
俺の存在を思い出してくれたらしい。
自分が下着姿をさらすきっかけとなった、帯を引っ張るのを頼んだ相手なのに。
その下着が見えてしまった羞恥心で、一瞬のうちに頭が一杯一杯になってしまったようだ。
急いでまたスカートを持ちあげ、モジモジしながら身に着けている。
……フユにはカッコいい先輩姿を見せてるのに。
俺の前では、抜けてるようにいやらしい姿を見せちゃうヴァニラさん、可愛い。
……あと何気に、ルミアさんの下着情報もポロッと聞こえたので、脳内情報を更新しておこう。




