第24話 奴隷たちだけでテイム、そして一気に3人女奴隷!!
【能力解放】を無事に終え、改めて【白】の構成員のテイムを開始することに。
「皆、【テイム補助】はちゃんと受けたな?」
4人が頷き返してくれるのを確認し、生成済みの【テイム鎖】を6個ずつ手渡した。
それぞれ【テイム鎖】を見て、やはり困惑した表情をする。
ルミアが全員の気持ちを代弁するように、おずおずと申し出た。
「あの、ご主人様? 私たちが今回テイムする、というお話でしたが。私たちは皆【奴隷魔法】を使えません。ですので【テイム鎖】も発動できませんが……」
ベルもシルヴィーも、そしてヴァニラも。
ルミアの言葉に無言で頷いている。
……まあそういう反応をされることは分かっていた。
「普通なら、な。……でも今、【テイム補助】受けただろう? 皆も成長してるように、俺もパワーアップしてるんだ。試しに1回、使ってみて欲しいんだが」
「……わかりました」
俺がそこまで言うなら、という感じだった。
ルミアが代表するように、困惑しながらも一歩前に進み出る。
納品用で掌サイズに縮められた【テイム鎖】を一つ、手に取った。
「っ! ――あっ!?」
そしてそれを掲げて、グッと魔力を込める。
するとルミアには本来存在しない、黒い魔力がジワっとしみ出し始めた。
【奴隷魔法】特有の、暗く陰鬱さを感じるような魔力である。
その黒い魔力が【テイム鎖】に触れると、束ねるための封がビリッと破れた。
「行けますっ、使えます! 【テイム鎖】!!」
ルミアにもようやく実感が湧いたらしい。
嬉しそうな笑みを浮かべて、鎖をテイムに適するサイズへと戻していた。
「おぉ~ルミアさん凄い!」
「ルミアちゃん、お見事です!」
「へぇ~どういう仕掛けなんだろう」
ルミアの成功で、3人もようやく納得ができたようだった。
パチパチと称賛の拍手を送り、自身に渡された【テイム鎖】を早速試し始める。
ルミアだけが特別、ということもなく。
ベルもシルヴィーも、そしてヴァニラも。
次々と【テイム鎖】の発動・使用に成功していた。
「からくりは簡単だ。【奴隷魔法】発動に必要な魔力の一部を。【テイム補助】を介して、俺から4人に少しずつ分け与えたんだ」
【被調教○】の所有者が4人に増えたことで、出来るようになった派生能力である。
要は従順な奴隷に俺の手足となってもらって、テイムを代行してもらうみたいなことだ。
また分け与える魔力は一部なので、もちろん俺もそのまま【奴隷魔法】を使うことが可能である。
ルミア達も【テイム鎖】を使うことができるようになることで、テイムの戦略バリエーションがより豊富になるのだ。
「――よし。じゃあ今回はルミア達に、実際のテイムを任せる。実践が何よりの良い経験だからな」
「はい、わかりました」
ルミアをリーダーとして、3人への指示役を任せる。
ルミアなら臨機応変に判断してくれるはずだ。
「一応後ろで待機はしてる。何かあったら無理せず撤退して大丈夫だからな?――よしっ。では、出発!」
◇ ◇ ◇ ◇
【テイム鎖】とは別に用意した、【闇眼】が早速4人の映像情報をもたらしてくれる。
【テイム輪】のように自律稼働してくれるようになったVer.3タイプだ。
『――【影狼】!!』
ベルが影の狼を出現させる。
それも自身を守護させるように、左右へ1体ずつだ。
さらに服の下に着ている【奴隷装帯】が怪しく光る。
影でできた狼のボディーを、一回り大きく成長させていた。
『ベル、お願いしますね』
『了解です、ルミアさん! ――行きますよ』
1体の背中に飛び乗ると、踵で腹付近を優しく蹴った。
そうして【影狼】を走らせる。
もう一体も追従して駆け出した。
ルミア達3人からはグングンと遠ざかっていく。
『ベルが一番機動力と頭数のバランスが取れますからね。まず捜索はベルに任せましょう』
『ですね。ベルちゃんは鼻も随分と利きますし』
『純粋に戦闘力もあるから、ベルなら安心して任せられるよ』
ベル以外の3人の会話が届く。
「なるほど……」
脚もあって、捜索能力もあるベルに、まずは動いてもらうらしい。
4人パーティーとはいえ、何も全員で一か所にまとまり行動する必要はない。
そういう合理的な判断を養うのも重要だ。
そこのところを、ちゃんとルミア達もわきまえているということだろう。
『ふむ~中々見当たりませんね』
ベルが乗る【影狼】は、颯爽と駆けていた。
【奴隷装帯】で一回り大きくなった身体は、歩幅もかなり大きい。
【闇眼】から流れてくる景色が、グングンと後ろに去っていく。
『別れましょう。――お前はあっちを。私たちはこっちを探します。良いですか? ……じゃあ、行って』
『GRRR!!』
自身が乗っていない【影狼】へ簡単に指示を出した。
そして、たったそれだけで全ての意思が通じたというように。
単体の【影狼】は廃村外へと走り出す。
【闇眼】の視界から、瞬く間に消えてしまう。
【群れの長】スキルが、早速生きているようだった。
意思疎通もしっかりとできているのはもちろんのこと。
ベルの能力が上昇することで、【影狼】たちの駆ける速さもグンと上がっているように映る。
これならそう広大でもない廃村内外の捜索も、本当にベル一人でカバーできてしまいそうだ。
そうして10分も経ってないだろうか。
『――GYAAAAOOOOO!!』
視界外から、遠吠えが聞こえて来た。
また【闇眼】を通さず、俺の耳にも直接届いてくる。
『……いましたか』
ベルがすぐに反応した。
単独行動する個体が、ベルへと発見の報告をしたらしい。
【闇眼】の映像情報からは、声の方角はまったく判別できなかった。
しかしベルにだけは、ちゃんと理解できたようである。
狼の耳をピクピクと動かし、視線をそちらに向ける。
そして跨る【影狼】を反転させ、来た道を戻り始めた。
どうやらルミア達と合流するようだ。
そしてすぐ【闇眼】の映像に、4人全員の姿が揃う。
『――ルミアさん、見つけました! 先導します、ついて来てください』
『わかりました! ありがとうございます、ベル!』
『ベルちゃん、ありがとう』
『流石だよ、ベル!』
ルミア達3人は、口々にベルのことを褒め称える。
一瞬だけ、ドヤ顔しそうになったベルが映った。
だがすぐに切り替え、【影狼】を走らせる。
3人が後を追いやすいよう、【影狼】の速度もかなり調整させていた。
言葉なく、しかも容易そうにやってのける辺りが、かなり格好良く見える。
「やるな、ベル。さて――」
テイム対象を見つけたここからが本番だ。
◇ ◇ ◇ ◇
『GARR,GARR!!』
一定間隔で、遠吠えが繰り返されていた。
まるで定期的に自分の現在地を教えようとするかのようである。
『……むっ! 3人がバラけたようです』
そしてベルも、ちゃんとそのメッセージを間違いなく受け取っていた。
ベルだけが【影狼】語を解せるかのように。
ルミア達へと随時、受け取った言葉を翻訳している。
『どういう風にですか?』
『真っすぐに一人、右に一人、左に一人です。一番遠いのは真っすぐの一人ですね』
ルミアの問いに、ベルが補足を踏まえて素早く答えた。
シルヴィーとヴァニラは、判断を求めるようにルミアを見る。
『――三手に分かれましょう』
ルミアの決断はとても早かった。
『ベルはこのまま真っすぐ追ってください。私は左へ向かいます。ヴァニラは右をお願いしますね。シルヴィーはヴァニラのサポートを』
指示も淀みなく、テキパキしていた。
ヴァニラは加入して日が浅いので、その点のケアとしてシルヴィーを補助に付けたのだろう。
『わかりましたルミアさん。ではまた後程――』
ベルが駆けだす。
『私も行きますね――』
ルミアも左方向へと向かって走り出す。
『ではヴァニラちゃん、よろしくお願いしますね』
『こちらこそ。シルヴィーがいてくれたなら百人力だよ』
二人も笑顔で頷き合い、右の方角へと駆けて行った。
◇ ◇ ◇ ◇
『いましたね――』
最初にテイム対象を見つけたのは、ベルだった。
一番距離があっても、やはり【影狼】という“脚”を持つのが大きいらしい。
『ひぃっ!?』
対象の姿が【闇眼】にも映った。
白いフードを被った盗賊風の少女。
チラッと見えた顔は素朴で垢ぬけてないが、中々に可愛らしい。
それが【影狼】の姿を目にし、恐怖で引き攣っていた。
『ふむ、逃げ足だけは中々にやりますね。……挟み撃ちにしましょう――』
『GRRAA!!』
ベルが手短に言うと、跨る【影狼】がこれまた短く吠えた。
『うわっ、やっ――』
それでまた盗賊風の少女がビビる。
だが今の行動は、威嚇するためのものではない。
『――GAAA!!』
捜索に出ていたもう1体が、逃走経路を塞ぐようにして出現した。
『えっ!? うわっ、嘘ッ!?』
少女が、慌ててその場に立ち止まる。
どこへ逃げるか、一瞬判断に迷ったような空白が生まれた。
『GARRR――』
その隙を逃さず。
前方の【影狼】が少女へと飛びかかった。
『くっ!』
それをナイフで迎撃しようとする。
……だが【影狼】のボディーを傷つけるほどの威力は無かったようだ。
『うわっ!?』
【影狼】の爪による切り裂きをモロに受ける。
もちろん【テイム補助】があるため、少女はケガ一つ負っていない。
その代わり、影による拘束が生じた。
大きなダメージの分だけ、影の拘束時間も長引いているかのようである。
『あっ、うっ、動け、ない!?』
『行けッ――』
そしてベルは、自身が乗る個体へも追撃の指示を飛ばす。
【影狼】は、少女へ目掛けて猛スピードで突進した。
『あぁんっ!?』
やはり、ケガや外傷はない。
その代わり、また影の拘束が追加される。
しかも影による束縛は、受けるごとに積み重なっていく仕様となっていた。
動けないところを、さらに攻撃。
また身動きできない時間が延長され、無防備をさらす。
そこをクリーンヒットされ、影の拘束時間が付加……が繰り返された。
『このくらいで良いですかね――【テイム鎖】!!』
頃合いを見計らって、ベルがテイムを試みた。
実戦でも無事、【テイム鎖】は発動。
影を縫い付けられ全く身動きできなくなった少女を、さらに鎖が束縛する。
『うっ、あっ、いや――』
まったく抵抗することもできず、魔力の鎖は収縮を繰り返す。
そして少女の手の甲には、奴隷紋が浮かんでいたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
『追いつき、ましたよ! さぁ、観念してください!』
『うっ、うぅぅ~……』
ベルが、テイムに成功したのとほぼ同時くらい。
ルミアも、テイム対象の少女を発見した。
同じ白デザインの衣服を着ているが、ローブのようにダボっとしている。
魔術師のようで、手には木製の杖が握られていた。
『い、嫌だもん! ――【火球】!!』
魔術師の少女は、降伏しなかった。
不意打ちするように【火魔法】を放ってくる。
『そうですか――ふっ、はっ!』
ルミアは剣を抜き、襲い来る火を次々と切っていく。
【剣術】がLv.2へと成長して、簡単な魔法なら剣でも対処できるほどになったらしい。
また服の内にある【奴隷装帯】も怪しく光り、ルミアの能力を底上げしていた。
『えっ、えっ、えぇ~!?』
魔術師の少女は、ルミアの強さを見て泣きそうになる。
すぐにでも意思が挫けそうに見えた。
……だが、折れない。
『――2人と、絶対合流するんだもん! 2人だって、そう思ってくれてるはず! 私が諦めちゃ、ダメ!』
目尻に涙を浮かべながらも、魔術師の少女はルミアをキッと睨みつける。
実力差を感じながらも、戦意はまだまだあるようだ。
『――勝てないなら、近接戦に持ち込まれる前に、逃げるっ!!』
……と思ったら、踵を返して逃げ出した。
自分の実力を理解しての、ある意味正しい判断なのかもしれない。
だがルミアは。
残念ながら、ベルのような“近接戦のエキスパート”ではないのだ。
『……凄い。流石はご主人様です。この展開まで読まれて、私に【雷魔法】を授けて下さったんですね』
何やらよく分からない独り言をつぶやいた後。
ルミアは逃走する魔術師の少女へ、掌を向けた。
『――【雷撃】!』
その手に紫の電流が走ったかと思うと。
次の瞬間には、逃げる少女の背に、鋭い電流が突き刺さっていた。
『あっ、かはっ――』
少女は一体何が起こったのかわからないというように、ドサッと地面に崩れ落ちる。
【テイム補助】により、少女の背中に外傷は見当たらない。
だが全身に未だ電流の余波が残っているかのように。
細かな紫色がビリビリと弾けているのが視認できた。
『やっ、えっ、何が、起ほって……』
舌が回らないかのような声が聞こえる。
身体も何とか動かそうとしているようだが、全身が麻痺しているらしい。
ピクピクと微動するだけで、逃げるには全く足りない。
『【テイム鎖】』
ルミアは少女を見下ろすような位置まで移動して、テイムを試みた。
鎖はいとも容易く、身動きできない少女の全身を縛り上げてしまう。
『あっ、うわ、あぁ……』
舌足らずな声で抵抗の意思を示すも、鎖は無慈悲に収縮を繰り返した。
『ふぅ。無事、テイム成功、ですね』
魔術師の少女の手首付近にも。
奴隷紋がしっかりと浮かび上がっていたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
『――【光封貼】!!』
シルヴィーとヴァニラも、目標の姿を捕捉したようだ。
すかさずシルヴィーが仕掛けている。
光の魔力でできた、護符のようなシールが出現。
シルヴィーの【奴隷装帯】が怪しく光る。
シールが、一回り大きくなった。
そして【光矢】と変わらない、目にも止まらない速さで飛んでいく。
『うわっ、くっ、このっ!!』
相手は、戦士風の少女だった。
白いウェアとブーツを身に着けている。
片手剣を構え、襲い掛かる光のシールに対処しようとした。
『あっ、クソッ――』
だが【光封貼】はとても素早く、剣の切り・突きが全く当たらない。
そして隙をつくように、ペタリと脚のふくらはぎへと貼り付いた。
『うわっ、何だこれ、力が、抜けて……!』
【光封貼】が付着した箇所に、まるで重りでも負荷されたように。
戦士風の少女はふくらはぎに触れ、辛そうな表情になる。
【光封貼】には、【テイム輪】のようなデバフ効果があるのだ。
『くっ、このっ!!』
だが少女は果敢にも、シルヴィーへと攻撃を仕掛けようとする。
デバフの元である術師を倒せば、【光封貼】も消滅するという思考なのだろう。
その発想は正しい。
……だがシルヴィーはサポート兼囮なのだ。
『おっと――』
【透明化】で隙を窺っていたヴァニラが動く。
主人である俺にだけしか、その姿は見えていない。
……つまり戦士風の少女は、ヴァニラの存在を全く認識できていなかった。
『――【手品】!』
服の上からまとう【奴隷装帯】が光った。
瞬間、少女の手から“片手剣”が消え去る。
ほぼ同時に、その武器はヴァニラの右手へと移っていた。
反対に、ヴァニラの手には最初から何もなく。
なので少女の手には何も移らず、両手が空の状態になってしまう。
『えっ、はっ!? えっ、何が……』
少女は自身に起きた現象を全く捉えられてなかった。
剣が消失した右手を、マジマジと見返す。
また、握っていなかった左手も反射的に凝視するが、もちろんそこにも剣はない。
『【光封貼】!!』
その隙を、親切に見逃すわけもなく。
『あっ、しまった――』
シルヴィーのスキルで、再び少女にデバフがかかる。
今度は反対の脚の太ももにシールが貼られた。
剣の分は軽くなったはずだが、それ以上に両脚を重そうにしている。
『さて、仕上げと行こうか――』
ヴァニラはどこから取り出したのか、いつの間にか手枷を持っていた。
――そしてそれを自分の手に、かちゃりとはめたのである。
……もちろん、ヴァニラに自縛の癖があるわけではないだろう。
ヴァニラは自分の手では拘束が解けないことを確認。
また【透明化】で、不可視の一方的な立場から仕掛けた。
『【手品】!』
ヴァニラの両手首から、一瞬にして“手枷”が消えた。
『……え?』
そしてその“手枷”が。
いつの間にか、戦士風の少女へとはめられていたのである。
さっきは武器を取り上げ。
今度は拘束を押し付けたのだ。
『えっ!? なに、これ!? クっ、外れ、ない!?』
3秒ほど、理解が追い付かなかったらしい。
少女はかなり遅れて、自身に装備された手枷を認識する。
焦って困惑したように解除を試みるが、自力では破壊できない。
『【光封貼】!!』
そして認識できず、対処が後手後手になる間にも。
シルヴィーによるデバフのシールは積み重なっていく。
右腕にペタペタ。
左腕にもペタペタと。
さらに追い打ちで両脚にも。
何枚ものシールが貼られていった。
『あぁっ、うぅぅ……』
まるで少女の力を吸い取っているかのように。
光のシールは脈動するみたく、薄っすらと点滅を繰り返す。
そして全身にシールが貼られ、少しも力が出ないというように。
少女はとうとうその場で膝をついた。
枷がはめられた両腕も、力なく地面に落ちる。
『そろそろかな。――【テイム鎖】!!』
透明なまま、ヴァニラがテイムを行った。
シルヴィーはサポートという立ち位置なため、テイムを譲ったようだ。
デバフが積み重なった戦士風の少女へ、鎖が絡みついていく。
『うっ、クぅ……!』
何とか少女はそれを破壊しようと試みる。
だが全身に貼られたシールのせいで、全く本来の力が出せないらしい。
息を止めて精一杯に力むような仕草を見せるも、鎖はビクともしていなかった。
『あ、あぁぁ……』
そして鎖は、収縮を終える。
少女の手袋越しに、奴隷紋が浮かんでいた。
ルミア達は目標の3人、全員のテイムに成功したのだった。




