第23話 残党をテイムしに行こう!!
「目撃情報があったのはここか」
風化してボロボロになった、アーチ状の入口前に立つ。
かつて人が暮らしていた痕跡が微かに残る、くたびれた廃村が見えた。
寂しさとも虚しさともつかない気持ちを覚えつつ、冒険者ギルドで受注した依頼書を取り出した。
【四色構成員の残党狩り③ Cランク】
●最寄りの村在住の鳥人族男性が飛行中、3人組の女性を目撃。
それぞれ全身を白い衣服で包んでおり、不審に思いギルドに届け出たとのこと。
その他の情報を合わせ考え、逃走する【白】の構成員だと判断。
今のところ被害は出ていないが、早急に対処すべき案件と考え、依頼として発注した次第である。
●目撃地点
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●依頼人:奴隷テイマーギルド
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「人が住んでないから、絶好の隠れ場所ではありますね」
「それはベルの言う通りだと思います。でもその分、食料も多くないのでは? あまり長期間の潜伏には向かないと思いますよ」
ベルとルミアのやり取りを聞きつつも。
チラッとヴァニラの様子を窺う。
「…………」
出発時はそれほどでもなかった。
だが今は、複雑そうな心情が少し顔に出てしまっている。
ここへ近づくにつれ口数も減っていた。
自分が所属していた組織である。
しかもその構成員を敵にする内容の依頼だ。
心中穏やかでいろという方が難しいだろう。
「――ヴァニラちゃん、リラックスですよ」
その触れ辛い空気を打破してくれたのは、意外にもシルヴィーだった。
まるで悩める信徒を包み込むように慈愛溢れる表情で、ヴァニラの頭をそっと抱きしめる。
「ちょっ、シルヴィー!?」
ヴァニラはすぐ、顔が真っ赤になった。
シルヴィーの大きな胸に顔が埋まりそうになって、必死に息継ぎするように顔を上げる。
「大丈夫、ヴァニラちゃんなら大丈夫ですよ」
幼子をあやすような、とても癒される優しい声音。
絶対的な肯定感すら与える言葉は、シルヴィーの母性を感じさせた。
「う、うん……わかった、わかったから」
ヴァニラは羞恥に悶えながらも、シルヴィーの腕をポンポンと叩く。
シルヴィーに意図が伝わったのか、ヴァニラは至福ながらも息苦しい時間からようやく解放されていた。
もうさっきまでの硬さはなく。
ヴァニラの顔には柔らかさと笑顔が戻っている。
……何となく察してはいたが、ヴァニラはシルヴィーに弱いようだ。
「――わたしは大丈夫。……今回追ってるのは、末端の末端、超ド新人の子たちだと思う」
顔の赤みを若干残しつつも、ヴァニラはスイッチが切り替わったように話し始める。
「田舎から上京したての3人組が、確か参加してたはずなんだ。話したことはないけど」
「女の子が、3人で上京して、盗賊に……」
聴いていたシルヴィーの方が、より悲痛そうなリアクションをしていた。
キラキラした街や都会のイメージに憧れて、後先考えず村を旅立つ。
しかし現実はそう甘くなく、食うのも困ってやむなく盗賊に。
そういうことはいくらでも耳にする、ありふれた話だ。
「……うん。だから、むしろわたしの手で始末をつけてあげられるのは良かったと思う。ありがとう、ご主人」
それは、痛々しいまでの悲壮感が伝わってくる笑顔だった。
直接的な表現は避けているが、要するに『自分が、けじめをつけるためにも殺すから』と言っているようなものである。
本当は、そんな覚悟なんてできていないんだろう。
それでも。
“自分にはそうする以外に方法がわからない”というような、とても寂しさを感じる顔をしていた。
シルヴィーに抱きしめられた時、ヴァニラにどことなく幼さを感じたのはある意味正しかったようである。
ヴァニラは。
見た目がとてもセクシーで大人びた女性に見えるが、中身はまだまだ未成熟な少女なのだ。
……なら教え、導いてあげればいい。
「いやいや、始末する必要はないよ? 今回もテイムだテイム。――それに、そこまで言うなら、今日はヴァニラたちにテイムしてもらおうかな」
「へ?」
◇ ◇ ◇ ◇
「うっ、うぅ~っ」
盛大な勘違いで誤爆したというように。
ヴァニラは会って以来、一二を争うほど顔を赤くしていた。
【奴隷着】や【調教着】を着ている時くらい真っ赤なので、相当恥ずかしいらしい。
俺がこの依頼を見つけたのも偶然だ。
女子3人なら、テイムを狙うのもありだというのが主な受注動機である。
ヴァニラとの因縁を考えて受けたとか、そういうことは全くない。
だがヴァニラ的にはそういう風に映って、色々と難しい想像をしてしまったようだ。
「――そ、そっかテイム、そうだよね! うん、わたし頑張るから! 何でも言ってねご主人!」
勢いとテンションで、自身の恥ずかしい失態を誤魔化そうとしているのが明白だった。
こうやって仲間になってみると、改めて分かる。
ヴァニラは本来、とても表情豊かな女の子なのだ。
組織のナンバー3という肩書があったので、もう少しお硬い性格なのかと誤解していた。
だが、そうではないらしい。
「ああ。じゃあお言葉に甘えて【能力解放】してもらおうかな」
すると途端に、さっきまでの勢いが嘘のように萎んでいく。
また別の恥ずかしさを思い出したというように、ヴァニラはモジモジとしだした。
だが自分があそこまで言ってしまった手前、もう後には引き下がれないといった様子である。
[奴隷:ルミア 能力解放 画面]
“スキル 雷魔法”
雷魔法が使えるようになります。
●保有経験点
力:251
技:318
魔:342
調教:277
●必要経験点
力:0
技:150
魔:300
調教:100
●条件
1:風魔法を習得している ○
2:属性魔法の合計値がLv.5以上である ○
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【調教次元】を開設してからというもの、4人はさらに熱を入れて頑張ってくれていた。
自主的・個人的に【調教】を受けてくれたので、模擬戦を1回組む以上に経験点も貯まっている。
ルミアは、本当に才能の塊だったらしい。
ルミアにもテイムを行ってもらいたいので、さらに役立ちそうな【雷魔法】を習得することに。
[奴隷:ベル 能力解放 画面]
“スキル 群れの長”
狼を使役する際、狼の数に応じて連携・能力値が上昇します。
●保有経験点
力:472
技:112
魔:137
調教:225
●必要経験点
力:300
技:100
魔:50
調教:75
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ベルも、ただ肉弾戦に強いだけではない育ち方をしてくれている。
【影狼】がLv.2になり、影の狼を2体召喚できるようになっていた。
なので、より相乗効果が期待できそうな特殊なスキル【群れの長】を選ぶ。
[奴隷:シルヴィー 能力解放 画面]
“スキル 光封貼”
相手にデバフをかける光のシールを出現させます
●保有経験点
力:171
技:223
魔:198
調教:211
●必要経験点
力:50
技:100
魔:100
調教:75
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シルヴィーとはよく話し合い、完全にサポート路線で行くことに。
味方の能力を上げるような向上スキルも選択肢にはあったのだが、ルミア達3人の成長具合が著しい。
そこで今回はデバフとなるスキルを得ることに決まった。
[奴隷:ヴァニラ 能力解放 画面]
“スキル 手品”
自身の手元の装備と、対象の手元の装備を入れ替えます。
自身が認識されていなければいないほど、成功率が上がります。
“スキル 被調教○”
主人から強力な【奴隷魔法】の支援・付与能力が受けられるようになります。
●保有経験点
力:120
技:403
魔:171
調教:303
●必要経験点
力:50+0=50
技:300+0=300
魔:150+0=150
調教:50+200=250
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そしてヴァニラには、トリッキーな動きを期待したい。
そこでさらに【怪盗】だからこそ習得できる【手品】を覚えてもらうことになった。
ルミア達がすでに持っている【被調教○】も、習得可能な“調教”経験点が貯まっている。
……それだけあのいやらしい【調教着】を何度も着てくれたということだろう。
「よしっ、じゃあ行くぞ――」
念のため付近にテイム対象がいないことを確認して、【能力解放】を始めた。
「はぁ、はぁ……」
「お、終わり、ましたか?」
「そ、そうみたい、ですね」
「お、終わった……」
4人は皆、心地よい倦怠感に包まれていた。
そしてどこか上の空みたいに表情をトロンとさせながらも。
とても艶やかで、色気ある魅力的な顔をしていたのだった。
[ステータス:ルミア]
●スキル
【剣術Lv.2】
【筋力上昇Lv.2】
【火魔法Lv.3】
【風魔法Lv.2】
【水魔法Lv.2】
【土魔法Lv.1】
【雷魔法Lv.1】New!!
[ステータス:ベル]
●スキル
【視野Lv.2】
【身体強化Lv.4】
【影狼Lv.2】
【群れの長Lv.1】New!!
[ステータス:シルヴィー]
●スキル
【ヒールLv.4】
【魔法障壁Lv.2】
【光魔法Lv.2】
【光封貼Lv.1】New!!
[ステータス:ヴァニラ]
●スキル
【透明化Lv.5】
【身体強化Lv.3】
【軽業Lv.2】
【怪盗術Lv.3】
■【忍び足Lv.2】
【解錠Lv.3】
【敏捷上昇Lv.4】
【手品Lv.1】New!!
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