第2話 焦らず育てていざ実戦!
初めての奴隷を手に入れた日から、すでに数日が経過していた。
「……あの、ご主人様。日課の素振り、終わりました」
長期で借り始めた一軒家の一室。
木刀を掲げたルミアが戻ってきた。
汗で、前髪が額に張り付いている。
全身から、汗と女のフェロモンが混じった、とても良い匂いがしていた。
息も上がっていて、声もどこか色っぽく聞こえる。
胸の上下運動も、本能的に異性を誘う動きに見えて仕方ない。
ルミアはやはり、極上の女だった。
「お疲れさん。汗かいたろう? 風呂行ってこい」
「はい。ありがとうございます」
ルミアは初日と変わらず不思議そうな表情をしていた。
だがそれ以上は何も聞いて来ず。
木刀を置き、着替えなどを持って部屋を出て行った。
流石に何度も同じやり取りを繰り返している。
風呂で体を清めて来いと指示しても、“この後、抱かれるのでは?”という早とちりも無くなっていた。
「……いや、もちろんエロいことしたいんだけどね」
枯れた人生を送ってきたとはいえ未だ22歳。
若い欲望もちゃんとある。
だが今、ルミア育成のために結構なお金を使っていた。
人一人の生活費が増えただけでも、単純に出費が倍なのである。
いくら『奴隷は“物”』という言葉がまかり通っていても、その現実は避けて通れない。
[奴隷:ルミア 能力解放 画面]
“スキル 剣術”
剣術が使えるようになります。
●保有経験点
力:43
技:42
魔:12
調教:30
●必要経験点
力:40
技:40
魔:0
調教:10
― ― ― ― ―
「ようやく【剣術】スキルがゲットできるな」
【奴隷魔法】を覚え、ルミアをテイムで奴隷にして以降。
ルミアのステータスが、画面に映る情報として視認できるようになった。
そしてルミアの成長方針も、この【能力解放】を通して自由に決められる。
HPやMP、筋力などの基礎能力値はもちろん。
スキルだって、必要な経験点を持っていれば、それを消費して習得可能なのだ。
……こんなことはオッサンの講習では言ってなかったと思う。
でもまあ当たり前すぎて、言わなくても問題ないようなことだったんだろう。
これから【奴隷テイマー】としてやっていくためには、奴隷の用心棒が絶対に必要になる。
ルミアには【剣術】をマスターできる素養があった。
そのため、習得に必要な経験点を貯めさせるべく素振りさせていたのである。
◇ ◇ ◇ ◇
「ご主人様、上がりました。……あの、いつもお風呂、ありがとうございます」
しばらくして、ルミアが再び戻ってくる。
湯上りのルミアは、さっき以上に髪がしっとりと濡れていた。
温まったからか、頬も赤くなっていて色っぽい。
とてもラフな格好で、二の腕や太ももも大きく出ている。
目のやり場に困るほど、ルミアは女としての魅力を溢れさせていた。
……エロ過ぎかよ。
「そうだ。今日も【能力解放】、やるから」
「あっ……はい」
何かを察したというように、ルミアは小さく答えた。
恥じらい、落ち着かないというようにソワソワする。
指先を遊ばせたり、無意識に服の裾を引っ張ったりとしていた。
身体は、もう異性を十分誘惑できるほど育っているのに。
こういう精神的な部分では、まだあどけなさが残っているように感じた。
【能力解放】でルミアの保有経験点を消費。
【剣術】の取得を確定させる。
「あっ――」
――すると、ルミアの体から無数の鎖が出現した。
テイムの時のように、ルミアの体を一瞬にして縛り付ける。
「んんっ、あぁ、あぁん……」
全身を緊縛され、抵抗できなくされている。
そんな、ルミアの被虐心を刺激しただけでなく。
鎖が柔肌に食い込んだことで、ルミアは一瞬にして甘い声を上げた。
……だがこの魅惑的な光景は、すぐに終わりを告げる。
ルミアの臍より若干下あたりに。
魔力でできた鍵穴と、それに対応する鍵が出現した。
鍵は独りで穴にささると、カチャリと音を立てて回る。
「んっ、あっ、んんっ」
ルミアが、何かから解き放たれたような声を上げる。
そしてルミアを縛り付けていた制限が解放されるように。
全身を拘束していた鎖は、瞬く間に崩壊していったのだった。
[ステータス]
●基礎情報
名前:ルミア
種族:人族
性別:女
年齢:16歳
●スキル
【剣術Lv.1】New!!
◇ ◇ ◇ ◇
「はっ、やぁ!!」
町を出た草原にて。
ルミアはグラスラビットと対峙していた。
黄緑色の体毛ですばしっこい。
繁殖力も旺盛で、冒険者ギルドに退治の依頼が絶えないモンスターだ。
「ふんっ、せあっ!!」
俺が買い与えた軽い片手剣を使い、ルミアはグラスラビットを的確に追い詰める。
素人のはずなのに、剣の振りがやや鋭く、無駄も少ない。
明らかに【剣術Lv.1】のスキルが影響している。
「りゃぁ!!」
そうして依頼分の10匹目討伐に成功したのだった。
「お疲れさん。余裕だったじゃないか」
「はぁ、はぁ……は、はい! 凄く楽に剣が振れました! これもご主人様のおかげです!」
労う言葉をかける。
ルミアは少し息を乱していたが、その声は嬉しそうに弾んでいた。
純粋に喜ぶ姿はとても可愛らしい。
「まあ事前準備をちゃんとしたからな……これで銀貨1枚だな」
荒事に慣れさせるため、冒険者ギルドの初心者用依頼を受けさせてみた。
無事、ルミアはそれをこなし、報酬のお金もゲットである。
……まあ銀貨1枚あれば、二人合わせて2~3日の食費にはなるか。
●保有経験点
力:3→13
技:2→12
魔:12→22
調教:20→30
ルミアの保有経験点も増えていた。
グラスラビット1体につき各経験点+1の計算である。
木刀の素振りではこうもいかない。
やはりずっとコツコツ修行させるよりも。
基礎が固まった後は、実戦を積ませた方が圧倒的に成長が早いということだな。
冒険者ギルドに寄って、依頼完了の報告をする。
報酬の銀貨を受け取り、ギルドを後にした。
「ルミア、これ。今日頑張ったご褒美分だ」
持ち合わせから銅貨2枚をルミアに持たせる。
今日の成果の1/5だが、それでもルミアは顔を綻ばせた。
「わぁっ! あ、ありがとうございますご主人様! こ、こんなにもいただいて、本当によろしいのですか?」
「ああ。それで好きなもんでも買ったらいい」
ルミアの食事代や装備代などの諸経費は、ちゃんと残った分から出す。
またそれ以外の収入も一応はあるので気にするなと伝えた。
「はい! ――ど、どうしようかな……。屋台のお肉って半銅貨1枚だったっけ!? でもフルーツジュースも飲みたいし……」
ルミアはすぐに、使い道へと思いを馳せ始める。
その表情はキラキラとしていて、年相応の少女のようだ。
これはこれでとても可愛らしい。
テイムの時にあった暗さや諦観のような感情は、今は見えなかった。




