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第17話 次のハントに備えよう!


「お~っすリュート」


 

 ギルドの作戦会議室。

 その入口付近で、ガノーが親し気に声をかけて来た。


 軽薄そうな顔はいつも通りだが、今日はちょっぴり緊張気味に見える。

 トレードマークの顎ひげも、気合いを入れたように短めだ。

 


「っす。……凄い人数だな」



 中の様子をチラッと見て、若干うんざりしながら口にした。


 100人は楽に入れる大部屋の一つ。

 その席の半分以上が、既に埋まっていた。

 全部、奴隷テイマーとその従者たちなんだろう。

 


「まあな。今回の“犯罪者狩ハント”は、ギルドも力を入れたいらしいから。……やっぱり人が多いの苦手か? そういえば冒険者の時も、お前誰とも組もうとしなかったもんな」


  

 いや、冒険者時代に誰とも組まなかったのは、主義・信条とかじゃないから。

 単に組んでくれる人が見つからなくて、仕方なくソロやってただけね。


 地味に気にしてるんだから。

 俺の古傷をエグらないで。 

   

     

 適当に駄弁だべっていると、通路奥から見知った顔が歩いてくる。

 暑苦しい男が多い【奴隷テイマーギルド】で、美しい女性の姿は特に目立っていた。



「――あっ! 先輩っ、リュート先輩!!」



 流れるような金髪を揺らして、美少女はわき目も振らずに駆けてくる。

 まるで舞踏会にでも出るようなドレスにハイヒールで、良く走れるなと感心するばかりだ。

  


「おっ! “ステラ”ちゃんじゃん! よっす!」


 

 ガノーがとても気安く声をかけた。

 いつもながら、そのコミュ力には驚かされる。



「…………」



 一瞬、ステラがチラッとガノーを見る。

 だが無視して俺へと向き直った。

    

        

「――リュート先輩、お久しぶりですね! あなたの愛しい愛しい後輩、ステラです!」 


「ちょっ、えっ、ステラちゃん無視っ!? 俺、今声かけたよね!? 聞こえてないのかな!?」



 まるでガノーの存在など無いかのようなその徹底ぶり。

 流石ドSだ。


 

「……あ~ステラ、久しぶり。“Aランク冒険者”が何で【奴隷テイマーギルド(ここ)】いんの?」  


 

 すると意外にもガノーがキョトンとした顔で、その答えを教えてくれた。

 


「えっ? あれっ、お前知らなかったっけ? ステラちゃん、冒険者辞めて【奴隷テイマー】になったんだぞ?」 



 何それ知らない。

 初耳なんだけど。


 驚いた顔でステラを見る。

 ステラはまるでイタズラが成功した子供のように、クスクスと微笑んでいた。



「ふふっ。また一つ、リュート先輩の素敵な表情を拝めちゃいましたね」


 

 非常に整った容姿でウィンクなんてされたら、それだけで並みの男はクラっと来るだろう。

 

 没落したとはいえ、元貴族令嬢なだけはある。

 その顔は素直に美しい。

 だがそれが【奴隷テイマー】になるとは、とても場違いな気がした。

  

【奴隷テイマー】は、荒事を生業なりわいとする。

 だから“女の奴隷”は比較的多いが、“女の【奴隷テイマー】”は寡聞かぶんにして知らない。

 

 争い事なんて一つも知らなそうな細長い手足。

 派手さは抑えながらもしっかりと豪華さを感じる肩出しのドレス。

 傷や汚れ一つない、高そうなハイヒール。

 

 どれをとってもこの場には不釣り合いで、違和感ばかりである。

 貴族の晩餐ばんさん会にでもいた方がもっと自然に輝くだろうに。


 

「せっかくAランクになったのに、もったいない」


 

 せめてもの抵抗にと、口にしてはみたものの。


 ステラが。

“高ランク冒険者”という地位に、一切の未練を感じてないのはすぐにわかった。



「だって先輩のいない世界に興味なんてないですもの。――ねえ、“フウリ”」  



 ステラが、従者の名を呼んだ。

 後ろに控えて、会話を邪魔することなく控えていた女性が、うやうやしく頷く。

     


「はい。そのとおりでございます、お嬢様」



 執事服を着たボーイッシュな美人。

 フウリさんの手首には“奴隷紋”があった。


 ステラが冒険者の時から仕えている。

 とても優秀で、ステラの右腕として忠実な女性だ。



 その忠誠高い奴隷から賛同を得られて、ステラが『ほらっ』と言いた気な顔をする。

  


 ……いやいや。

 この人“ステラ大好き美女”だから。

 ステラの喜ぶことしか言わない人だからね?


 

 むしろ俺のいない、親愛なるお嬢様と二人きりになれる世界を一番に望んでる人といっても過言では――



「――っ!!」



 ひぇっ、殺気!?

 フウリさんから何かを察したかのように、鋭い殺意が飛んできた。


 ……このやり取りも懐かしい。

 


「――お~い。そろそろ始まるってよ。中に入ろうぜ」



 ガノーがタイミングよく声をかけてくれた。

 だが返事は待たず、自分の奴隷と先に室内へ行ってしまう。


 ……ガノーも、俺とフウリさんの独特な雰囲気には触れたくないらしい。

  

  

「……じゃあ俺も、そろそろ中に――」



 ガノーに追従するように、その場から離れようとする。

 だがステラが、またイタズラな笑みを浮かべた。

 

 小悪魔な微笑はすべての異性を魅了するかのようで、それだけでドキりとする。


 いつの間にか接近し、背伸びするように耳元へ顔を近づけて来た。

 甘く誘惑的な匂いがフワりと香る。


 そして逢瀬おうせの密談をするように、甘くとろけるような声でささやいた。     



「――私、先輩になら、今からでもテイムされて良いんですよ? ギッチギチに鎖や縄で縛って、拘束されて、身動きできなくされて。そうやって、先輩の奴隷メスにして欲しいです」



 コイツっ――。

 


 だがステラはすぐに身体を離し、何もなかったかのように優雅に笑った。

 


「フフッ。さっ、行きましょうフウリ」


「はい、お嬢様。……っ!!」



 そうして俺だけ残し、先に会議室へと入っていった。

 ……もちろんフウリさんからは去り際、人を殺せそうな視線をいただいたけどね。 


 いや、今のは君のご主人様が悪いんじゃん。

 俺関係ないって……。 



◇ ◇ ◇ ◇



「資料は全員に回ったな? ――今回の“犯罪者狩ハント”の獲物たちだ」


 

 教壇に立った男が、会議室内を見回すようにして告げる。

 


「うわっ、マジか。【四色ししき】のメンバーじゃん!」



 近くの奴隷テイマーが、資料を見て思わずうめき声を上げる。

 同じように、会議室内がざわめきに包まれた。



 壇上の男、今回のハントのリーダーは動じない。

 あらかじめこうなることを想定していたように、せき払い一つで済ませる。  



「ごほんッ――そうだ。今、帝国内でちまたを騒がせてる盗賊団の一つ【四色ししき】の構成員が、今回のターゲットとなる」



 リーダーの言葉を受けて、改めてざわざわした声が強くなる。

 余程凄いことらしい。

 

 チラリと斜め前のガノーを見る。

 普段はおちゃらけた奴だが、周りの奴隷テイマーのように表情が硬い。

 ……さてはコイツ、事前に知ってたな?



「…………」


「…………」

  

  

 隣のステラは特に表情変わらずだった。

 これはこれで頼もしいが……あっ、ちょっ、親し気に手振ってくるな。


 フウリさん、違います!

 俺は悪くない、ステラの奴が悪いんです!


 ……ダメだ。

 奴隷への命令とか関係なく、“お嬢様(ステラ)が絶対的に正しい”と脳内に刷り込まれてる人だもんね。



 溜息をつき、資料へと視線を落とす。

 ペラリペラリとめくっていくと、詳細が書かれていた。



[資料]


 ●【四色ししき

 その名の通り、四つの色を元にした盗賊団。

 赤・青・黄・白の四色からなり、それぞれ独立した組織として動いている。

 それぞれの色には7人の幹部が存在し、数字が若いほど地位は高い。


 赤1・青1・黄1・白1がそれぞれの色のリーダーに当たる。


 

 ●今回のターゲット

 各色の末端構成員 合計50人~100人

 

 幹部

 赤6

 青5

 黄2

 白3      

 

― ― ― ― ―



「――いいか、今回はギルドの“裏取り組”が相当頑張って情報を仕入れてくれた。俺たちはこれに報いなければならん」

 

  

 リーダーの声が聞こえ、そっと顔を上げた。

 集まった奴隷テイマーたちを鼓舞すように、拳を強く握って訴えかける。 

  


「一人でも多く、犯罪者どもを捕獲テイムしろ! 俺たち奴隷テイマーの価値は、テイムできるかどうかだけで示される!」



 周りが大声で応える。


 うわっ、耳痛い。

 ガノーも乗せられていて、同じように拳を突き上げていた。


 ……暑苦しい。



「今回は時間がない。作戦は3日後になる。各々、解散した後から死ぬ気で準備しろ。いいな?」



 また耳を塞ぎたくなるような大声が、室内に響き渡る。


 あ~帰りたい。

 ルミアに膝枕で、耳を優しくいたわって欲しい。

 ベルを肩車して、その柔らかい太ももの感触を左右から味わいたい。

 シルヴィーの豊かな胸に顔を埋めて、ただただ深呼吸したい。

 

 ……いや、最後のは窒息死するな。



 俺のささやかな願望が通じたからか、会議は以上となる。 

 解散かと思って部屋を出ようとしたら、リーダーに呼び止められてしまった。

   


「リュートと、あとステラ・フローレンス。お前らはちょっと来い」


 

 えぇ~。

 居残りぃ~?

 

 嫌だなぁ、帰りたいなぁ。


 そんな表情丸出しで教壇へと向かう。

 


「フフッ。先輩と二人でお呼ばれしちゃいましたね」



 だがステラはまったく苦にした様子はなく。

 むしろ今から愛しい人とデートでもするかのように、魅力的な笑顔を浮かべていた。

 


「おう、悪いな。集まった奴の中で“一番に【奴隷魔法】を習得した奴”はお前たち二人だけだからな。今度のハントでは頼りにさせてもらう」 



 リーダーは意外にも、凄く気さくに話しかけてくれた。

 やはりさっきの暑苦しい演説は、集団の前での演出らしい。

 


「流石は先輩です。私でも2時間かかりましたが、先輩は【奴隷魔法】を5分とかけず習得したとお聞きしましたよ?」


「本当かよ。2時間も相当ヤバいが、5分はバケモノの領域だぜ? 優秀で若手のエース格だって話は聞いてたが……エグいな」



 うわっ、ちょっ、リーダーが若干引いちゃってんじゃん。


 ……あんなの話をちゃんと聞いてたら、誰だってできるんだって。

 皆が不真面目に講習を受けてただけなのに、なんでそういうことになるのか。



「――まあ、それはいい。呼び止めたのは何も激励のためだけじゃねえ。……追加で、二人には別の資料を渡すようにって“上”に言われてんだ」



 そうしてリーダーは、会議では配布されなかった分厚めな別資料をくれた。

 


「今回現れる【四色ししき】の幹部。その4人について、さらに詳しい情報が書かれてる。紙媒体の遺留物も添付してあるから、参考にしてくれ。――1人でもいい。幹部の奴隷化テイム、期待してるぜ」



 優しく肩を叩かれ、少し嬉しい気分になる。

 流し読む感じで適当にページを開くと、すぐにその情報が目に入った。



[【四色ししき】幹部 詳細]


●性別

 赤6:男 

 青5:男 

 黄2:男 

 白3:女       

    

― ― ― ― ―    



 ――“女”の奴隷化テイム候補が、一人いた。




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