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第14話 1対3で模擬戦をしてみよう! 後半戦


『よかったっ! シルヴィーさん、合流できた!』


『ええ、ベルちゃんも、無事でよかったです』



 どうやら、二人は互いを見つけることができたらしい。



「随分と時間がかかったんだな……」



 話を聞いていると。

 やはりベルの脚にある【テイムチェーン】のかせが、かなり響いたようだ。

 

 どれだけ身体能力が高かろうと。

 その歩幅・走り幅が大きく制限されていては、ベルの良さも半減するだろう。



 追いかけていた3個の【テイムリング】を、二人の元へと急がせた。



『っ! 来ましたかっ――シルヴィーさんは逃げてくださいっ!』

 

  

 二人と【テイムリング】が、同じ視界内に入った。

 ベルがおとりになって、シルヴィーを先に行かせようとする。


 だがその選択をするのなら、やはり合流を目指さず。

 最初から3人ばらけて逃げた方がよかった。

 つまりそれだけ【テイムチェーン】の足枷による、合流妨害の時間稼ぎが効いたらしい。



『ベルちゃん、ご無事で――』 



 シルヴィーも苦渋の決断のように、先に走り出す。

 ……そっちに出口はないから、まだ時間はあるな。

 


『私が、ここで、食い止めるっ!!』



 ベルが覚悟を決めたように、その場へとどまった。

 

 3個の【テイムリング】が勢いよく宙を舞う。

 生成したばかりとあって魔力残量も豊富で、動きがかなり良い。


 ベルの隙を窺うようにしながら、一斉に飛びかかる。



『っ、速い! クッ――』



 脚の鎖がジャラリと鳴る。

 両脚の制限や、予想以上に俊敏に動きまわる【テイムリング】たち。


 それらが相まって回避は不可能と判断してか、ベルは迎え撃つように力を貯めた。



「やっぱり分散させず、1人に一極集中して正解だな」



【テイムリング】はやはり。

 複数個が同時に襲い掛かることで、その威力を発揮するようだ。

 新アイテムの実験もかねた模擬戦に、上々の感覚を得る。



『っ!?』



 1個が、ベルの脚を狙って飛行する。

 それを回避しようとして、ベルが高くジャンプした。

  

 いつもなら、もっと無駄のない最小限の跳躍を意識していただろう。

 だが鎖の足枷があって、用心深く高いジャンプをせざるを得なかったようだ。



「――そこが狙い目だな」 

 


 この時を待っていたとばかりに。

 残り2個の【テイムリング】が輪っかの直径を広げ、ベルへと襲い掛かった。

 


 未だ落下しきってないベルは回避ができず。

【テイムリング】が連なるようにして、その胴体へと強制的に装着された。



『あっ、くっ――』



 突如身体のバランスを失ったというように、ベルは地面へ転がるようにして着地。


 ベルが起き上がると、その小ぶりな胸の上下には【テイムリング】が装備されていた。

 

 

『うわっ、あっ、ヤバっ――』



 二つ装備されたということは、【テイムリング】のデバフ効果が二重にかかるということだ。

 そしてその重なった負担は、一定の精神的・疲労ダメージを受けたとみなされる。



 ――つまりベルは【奴隷スレイヴウェア】へと強制的に着替えさせられていた。


 


「【テイムチェーン】」



 そして【奴隷スレイヴウェア】は、一切の魔力・魔法を制限する効果のほかにも。


 どこにいても、どれだけ離れていても、どう備えようとも。

 俺の【テイムチェーン】を発動する的・マーキングポイントになってしまう効果があるのだ。



『やっ、だめっ――』

 


 ベルの胴体から。

 無数の鎖が生えてくる。

 瞬く間にベルの全身を縛ってしまった。 


 四肢は未だ【奴隷スレイヴウェア】化していないものの、それでも十分な拘束である。

  

 やはり“胴体”は急所だということだ。


 これでベルの無力化にも成功。



「ふふふっ。残るはシルヴィーただ一人」



 まるで悪役のそれみたいにニチャリと、粘着質ある笑みを浮かべたのだった。



◇ ◇ ◇ ◇



『はぁっ、はぁっ、出口は、脱出口はどこ、です!?』



 必死に走るシルヴィーの映像が流れ込んでくる。

 ベルとの戦闘の間に、かなり距離を稼がれたらしい。


 シルヴィーの頑張りは本物だった。

 ルミアとベルのことを思う気持ちが、限界に近づく彼女の脚を何とか動かしているかのようである。

  

 素直に嬉しかった。 


 仲間想いの一面が見られて。

 シルヴィーのことを誇らしく、愛おしく、可愛らしく思う。


 

「……まっ、だからと言って勝ちは譲らないけどな」



 本気でやるからこそ、模擬戦の意味があるのだ。

  

 ベルとの戦いで余った1個。

 そして時間経過で追加された援軍の3個。


 合計4個の【テイムリング】を、シルヴィーの元へと送り込む。



「……あっぶねぇ。今のところ右行かれてたら、ヤバかったかもな」 



闇目ダークアイ】の映像を見て、ホッと息を吐く。

 運もこちらに味方してくれているらしい。


 シルヴィーが進んだ先は、行き止まり。

 そこまで行って引き返すのでも、かなりのロスなはず。



「……よし、追いついた!」


『あっ、嘘ッ、もう!? ってことは、ベルちゃんは――っ!!』 

       


 シルヴィーが【テイムリング】に気づき、表情を歪める。


 自分のために、囮になってくれたはずのベルではなく。

【テイムリング】が追い付いてきたということで、色々と察したらしい。


 ……そうですね。


 ベルは今【奴隷スレイヴウェア】という、とても恥ずかしい格好になっています。

 さらに身動きできない状態で、クネクネしていますね、はい。

 


『やっ、この、こっちに、来ないでください!!』



 シルヴィーは虫を追い払うように、杖をがむしゃらに振り回す。  

 だがもちろん、それだけで迎撃されることはない。


 息が乱れた隙をつくように、1個の【テイムリング】が飛び込む。

 

 

『っ!! ――【マジックシールド】!!』



 だがシルヴィーが張った、魔力の障壁によって遮られてしまう。

 ぶつかった【テイムリング】は、頭を打ったようにフラフラとした動きになった。


 それに牽制されて、他の3個もしばし動きが止まってしまう。



『今の内に――』 

  

  

 シルヴィーが走る。

 ワンテンポ遅れて3個の【テイムリング】も追いかけだした。

 さらにそこから2秒ほど経って、【マジックシールド】にぶつかった1個も回復。


 

 そしてシルヴィーが行き止まりへと到達した。



『あっ、やっ、嘘っ!? こっちの道じゃなかった――やんっ!?』



 絶望が判断能力を奪ったというように。

 シルヴィーに一時、空白の隙が生まれる。


 それを、【テイムリング】たちは見逃さなかった。

 カチャカチャカチャ、と音が連続する。


 右腕に2個、そして左腕に1個が取り付いた。

 


『あっ、くっ……』



 気づいた時には、もう右腕は【奴隷スレイヴウェア】を強制的に装備させられていた。

 テカテカと怪しく光る長手袋。

 

 またそれに意識を奪われていたというように。

 シルヴィーは、後から飛来するもう1個の【テイムリング】に反応が遅れる。 

 自らが【マジックシールド】でダメージを与えていた、あの個体だ。



『あっ!? っ! 【マジックシールド】――えっ、魔法がっ!?』



 それを慌てて迎撃しようとしたのか、反射的に右手で。

 また【マジックシールド】を展開しようとする。


 ――だが右腕は、【奴隷スレイヴウェア】を着ていて魔法が使えない。



 カチャリと、音がした。

 4個目が左腕にくっついたのである。


 そして左腕も2個目ということで、【奴隷スレイヴウェア】へとお着換えの時間となった。



『くっ――今は、悔いている暇はありません、ワタシ! ルミアちゃんの、ベルちゃんのためにも走らないと! あるじ様っ、ワタシたちは負けません!!』


 

 両腕を黒の長手袋に変えられてしまい。

 羞恥心で顔を真っ赤にしながらも。

 

 シルヴィーは、闘志だけは消さなかった。


 その【奴隷スレイヴウェア】を身に着けた両腕で。

 自らを奮い立たせるように、ペチンと頬を叩く。

 

 再び来た道を戻るため、足を動かし始めた。



「…………」



 頑張る姿は見ていて応援したくなるほどだった。

“努力は、諦めない姿勢は、最後にちゃんと報われるんだ”と、言ってあげたくなる。


  

「――でも残念ながら、もう詰みなんだよねぇ……」 



 2度の時間経過で、既に6個の【テイムリング】が援軍に向かい始めていた。


 

 そしてタイミング的に。

 シルヴィーが分かれ道へと戻って来る辺りで、バッタリと鉢合わせることになる。


 その読みは、やはり間違っていなかった。 



『あっ、やっ、そんな……』 

     


 6個の【テイムリング】に出くわして。

 シルヴィーは言葉を失ったように呆然とする。


 だが次の瞬間にはハッとして、その群れに突っ込むように走り出した。

 絶望の中にも、希望の光を見出そうとするように。



『きゃっ、いや、ダメッ――』



 ――だが無機質な【テイムリング】が、それでひるんでくれるようなことはなかった。 

     


 背を向けたシルヴィーに無慈悲にも、後ろから取り付いていく。


 まずは右の太ももにカチャリ。

 次に右の足首へカチャリ。


 右脚が。

 太もも丈をしたニーハイブーツ風の【奴隷スレイヴウェア】へと変わる。


 

『くっ、もう少し、もう少し――』



 左の太ももにカチャリ。

 また足首にもカチャリ。



 左脚も。

 テカテカと怪しく光る【奴隷スレイヴウェア】に変わってしまった。



『魔法が、魔力が、使えなくても! 走るだけなら、できます!!――』 



 出口までもう少しというところで。

 胸の上側を通るようにカチャリ。

 最後に胸の下側を通すようにカチャリ。


 シルヴィーの豊かな胸を上下から挟みこむようにして。

【テイムリング】が装備されてしまった。


 そしてピタリと身体に張り付くような【奴隷スレイヴウェア】へと着替えさせられる。


 その胸の大きさも、形も。

 細く引き締まった腰のラインさえも。

 

 すべてがハイレグ衣装の上から露わになっていた。



 これで全身の【奴隷スレイヴウェア】化が完成したことになる。



『あっ、出口、ですっ!!』   

 


 体中が恥ずかしい格好へと強制的に着替えさせられても。

 シルヴィーは、走ることだけはやめなかった。

 

 その努力に世界が報いて、一筋の希望の光を映し出すかのように。   

 その両目の視界に、転移のための黒いゲートが入った。

  

 もう疲労でパンパンだろう脚に、最後の鞭を入れて走る。

 ゴールは、脱出口はもう目と鼻の先――

 

  

「――よくやった。この頑張りは、必ず次回以降に生きる。……でも今回は俺の勝ちだな」



【テイムチェーン】を発動した。


 四肢・胴体が【奴隷スレイヴウェア】のシルヴィーは、全身がマーキングポイント・的となっているようなものである。

 目をつむっていても、どこにいても、いくらでも当てられた。


 もうこうなっては、【テイムチェーン】から逃れる術はない。

    


『あっ、やっ、嘘ッ!? もう、目の前、なのに――』



 シルヴィーが何かを悟ったような、悔しそうな声が漏れた。

 全身から生えたような鎖が、その魅力的な身体を縛り上げてしまう。

 

 シルヴィーは本当にあともう少しのところで、全身の身動きが出来なくなってしまったのだった。


 美しい銀髪のシスターが。

 まるで闇に飲まれたように、恥ずかしい衣装を着せられ。

 その上、全身を緊縛されて、全く抵抗できない姿になっている。



『うぅ~降参ですあるじ様。ごめんなさいルミアちゃん、ベルちゃん……』



 結構惜しいところまで行ったからなぁ~。

 フォローの意味も込めて、努力賞の臨時お小遣いくらいはあげてもいいかもしれない。 

 

 【テイムリング】も、実戦で使える実感をかなり得た。

 ますますテイム技術・成功率の向上が見込める。


 そうして本当に充実した模擬戦を終え、3人の回収へと向かうのだった。

 


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