第10話 状態異常をかけて、3人目の女奴隷をゲットしよう!!
「【テイム鎖】!!」
試しに一度、直接テイムを試みてみる。
体力が一切削れていなくても、テイムが成功することはあるからだ。
鎖がシルヴィーの柔肌に絡みつく。
だが――
「こんな、ものっ――」
シルヴィーは簡単に、【テイム鎖】を破壊してしまう。
全く力を入れているように見えなかった。
「おうふ……期待はしていなかったが、こうもあっさりやられるとは」
【テイム鎖】は何も、物理的な抵抗だけが破壊する方法ではない。
【テイム鎖】は魔力で生成している。
なので男や獣人のように優れた筋力値を持っていなくても、高い魔力で壊すことも可能なのだ。
今、空間内にはシルヴィーのためだけの魔力が溢れている。
やはりこのままでは、何度試しても魔力で破壊されてしまうのがオチだ。
「っ! ――やぁっ!!」
ベルが果敢に、シルヴィーへと飛びかかる。
速さと気合いの乗った威力ある拳が、シルヴィーの身体を捉えたかに見えた。
「無駄、です!」
だが魔力でできた不可視の衝撃が、直前でベルを弾き飛ばす。
ベルはクルリと一回転して衝撃を緩和し、綺麗に着地していた。
ダメージはなさそうである。
「これは……困ったな」
俺の【テイム鎖】も望み薄。
ベルの近接も、障壁に阻まれてダメージを与えられない。
ルミアの【火魔法】は唯一ダメージを与えられたが、それも膨大な魔力でもって【ヒール】されてしまう。
シルヴィーは対魔法に関しては、魔力の防御的な扱いが未だ慣れていないようだった。
でもそこは結局、無限【ヒール】が待っているので、根本的な解決になっていない。
うーん、困った。
……ちょっとだけ譲歩してみるか。
「――取引しよう」
そうしてシルヴィーの目の前に。
【奴隷着】を生成した。
「取引? ……これは、何ですか?」
恐る恐る、シルヴィーは魔装具を拾い上げる。
黒くテカテカと光る長手袋やニーソックスを手に、不審そうな顔を向けて来た。
「装備した者の魔力を制限する、特殊な装備だ。それを自ら身に着けて投降してくれるなら、外にいる二人は奴隷化から解放して見逃そう」
これは嘘ではなく正真正銘、本心からの提案だった。
男二人分の売却代金は確かに惜しい。
だが元々の目的はシスターである“シルヴィー”だ。
彼女をテイムできるなら及第点と言える。
それにこちらが誠意を見せたという点は、テイムできた後にも影響するだろう。
良好な主従の関係を築くうえでも、意味のある妥協だと思えた。
しかし――
「どうせ、嘘なんでしょう!? ワタシが魔力を使えなくなったら約束を破って、捕まえるに違いありません!!」
シルヴィーは首を縦に振らなかった。
まあ、確かに。
彼女視点だとそう考えるのも無理はない。
「それにこんな、恥ずかしい服を! ワタシから、着ることは、絶対に、ありません!!」
自信に満ちた表情で、さらに汚らわしい物を振り払うように。
シルヴィーは【奴隷着】を地面に投げつけた。
あ~。
だから【奴隷着】は魔力を制限したりするのが主要な能力なんだって。
恥ずかしいデザインしてるのは俺のせいじゃなくて、単に副次的な機能だからね?
「交渉は決裂か……しょうがない」
正直やりたくなかったが、そうも言ってられなくなった。
――ちょっと強引になるが、テイムさせてもらおう。
◇ ◇ ◇ ◇
「――【闇眼】」
普段は使わないような規模の【闇魔法】を発動する。
礼拝堂だった室内のあちこちに。
不気味な“一つ眼”の魔道具が出現した。
真っ黒な瞳孔の周りを、紫とピンク色が混ざったような怪しい膜が覆う。
壁や天井、四隅など。
至る所に闇の単眼がある様は、とても薄気味悪く映った。
「ど、どんな邪悪な物を出そうと、ワタシは負けませんよ!」
流石に気味悪く感じたのか、シルヴィーがとても強い警戒心を露わにする。
その間にも【闇眼】は数を増やしていく。
今度はルミアとベルの装備にも、貼り付くように出現した。
円盾や、肘・膝当てなどに一つ眼デザインが。
大小サイズを変えて、シルヴィーを睨んでいる。
――そしてルミアが、機転を利かせたように大声で叫んだ。
「っ!! ――ご主人様っ、私とベルで時間を稼ぎます! その隙に【闇眼】で弱点を見つけてください! 魔法も、いつでもタイミングを合わせられるようにしておきますね!!」
あたかも。
【闇眼】には“敵の弱点を見つけられる機能が備わっている”と、うっかり口を滑らせてしまっているようだった。
そしてさらにルミアが【闇眼】のついた円盾を見せびらかすように構える。
まるで“【闇眼】を中継地点として、主人の魔法がいつでも発動できるようにしておきます”と教えるような、そんな仕草に見える。
「っ!! ――ふっ、ふふ。なるほど、できるものなら、やってみればいいですよ」
それらを見て、シルヴィーは自信を取り戻したように不敵に笑う。
正体のわからなかった魔道具のタネ・仕掛けが明かされて、対処できる能力だと確信したみたいだった。
不意の一撃だけは見逃さず避けようとするように。
視線を動かし続け、あちこちにある【闇眼】を忙しなく視界にとらえている。
――あ~あ正直者め、はまっちゃった。
すべての眼が情報収集の器官となって、視界に入れた情報を俺に共有してくれるなんていう能力もなければ。
まるで【空間属性】を備えているレア魔道具のように、俺の魔法を【闇眼】のある場所から遠隔発動できる能力だって備わっていないのだ。
【闇眼】に、そんな能力なんてないのである。
ルミアの言葉も、仕草も、すべて。
とても機転が利いた嘘だ。
もちろんルミアも、そしてベルも。
【闇眼】の本当の能力を知っている。
「ルミアっ、ベルっ、動き回ってくれ! 最適なタイミングを見計らって俺が魔法を放つ!」
だが当然、そんなことは一切顔には出さず。
ルミアの機転に乗っかるように、指示を飛ばした。
「はいっ!」
「任せてください!」
二人も俺の言葉に従い、シルヴィーの周りへと走り出した。
特に運動能力の高いベルが、かき乱そうとするように動き回る。
シルヴィーは二人の装備も、俺の魔法の経由ポイントだと思っているらしい。
油断なく二人を、その装備を、見続けていた。
――そして【闇眼】を視界に入れて、認識してしまっている。
それこそが、【闇眼】の発動条件だとも知らずに。
◇ ◇ ◇ ◇
狙い通り。
シルヴィーは至る所にある【闇眼】を、何度も何度も視認していた。
見る度に、俺だけにわかるゲージのようなものが貯まっていく。
1回1回は極々僅かな量でしかない。
でもそのための条件となる【闇眼】が。
どこを見ても、どこを向いても、視界の中に必ず存在する。
シルヴィーのゲージは瞬きする度、塵積でどんどん上昇していった。
「はっ、やっ!!」
「せぁっ!!」
それには。
シルヴィーを近くで牽制し動き続ける、ルミアとベルの果たしている役割が非常に大きかった。
時にフェイクで攻撃をしかけては、魔力の障壁で弾き返されている。
だが俺の意図を察して、二人はそれを止めない。
ルミアとベルが身に着ける装備を、間近で見させられた時。
シルヴィーの頭上にあるゲージは、他の場合よりも大きく上昇してくれるのだ。
そして遂に、ゲージがMaxになる。
「あっ――」
――シルヴィーの両眼が、光を失ったようにトロンとなった。
◇ ◇ ◇ ◇
かかった!!
“催眠”の状態異常が発動した証である。
そう。
【闇眼】は、対象を“催眠”状態に陥れるための【闇魔法】なのだ。
こうやって手間がかかるし、沢山“眼”を生成するのも疲れるから、やりたくないんだけどね。
「――シルヴィー。そこに落ちている【奴隷着】を、どれでもいいから身に着けてくれないか?」
「あぇ? ……はぃ。もちろん、良いですよぉ」
あまり呂律も回ってないような口元で。
シルヴィーは一瞬も迷う様子を見せず、俺のお願いに肯定してみせた。
まるで愛しい恋人相手にしか見せないような、蕩けきった笑顔。
それはシルヴィーの魅力的な容姿と相まって、とてもグッとくる顔に見えた。
あれほど嫌悪感を示していた【奴隷着】の長手袋を。
シルヴィーは、何の抵抗も見せることなく拾い上げた。
「んしょっ、んんっ――」
左腕を包む純白の長手袋を外し。
そこから覗いた素肌へと、シルヴィーは【奴隷着】の長手袋を装着していく。
「はい、できましたぁ」
まるで一人でお着替えしたことを褒めて欲しい子供みたいに。
シルヴィーは左腕を自慢げに見せてくれる。
黒くテカテカと光る、怪しい【奴隷着】。
一度身に着けると、俺の許可なく外せなくなる魔装具が。
長い腕の肘先まで、ピタリと装着されていたのだった。
「……えっ? わっ、ワタシは一体何を――きゃっ!? ど、どうしてワタシ、左腕にこんなものを!?」
そして“催眠”状態から、意識を取り戻した。
やはり1回だけではこの程度の時間が限界らしい。
シルヴィーは自分の左腕に【奴隷着】が装着されているのを見て、愕然としている。
自分で装備したことも覚えておらず、必死になって外そうとする。
「んっ、んんっ! やっ、何、これっ、外れ、ない!?」
右手の親指を、長手袋と肌の間に食い込ませようとしたり。
あるいは引っ張って生地自体を伸ばそうと試みる。
だが【奴隷着】が外れる様子は一切ない。
「っ!! 【ヒール】――えっ!?」
【奴隷着】をつけた左腕を掲げる。
だがそこから魔法は一切発動しなかった。
当然だ。
左腕はもう、俺の許可なしに魔力を扱えない。
シルヴィーの顔がサッと青ざめる。
教会内に魔力が満ちる前の、弱気な彼女が戻ってきたかのようだ。
明らかにその表情には、強い焦りと不安が現れていた。
◇ ◇ ◇ ◇
「か、構いません! 右腕があれば、まだ魔法は、魔力は使えるのですから!!」
それは確かにその通りではある。
だがもうシルヴィーの言葉に。
自信に裏打ちされた力強さは、一切感じられなかった。
「なら、使えなくなるまで削るのみ、です!! ――ベルっ!!」
「はい、ルミアさんっ!!」
二人が小芝居を続けるように、再び視線を誘導し始めた。
ルミアもベルも、俺の能力を理解して動いてくれている。
一方シルヴィーだけが、状況を把握できていない。
なにが起こったか未だにわかっておらず、続けて二人を視線で追ってしまう。
そしてそれは。
至近距離から【闇眼】を視認してしまうということだ。
1度、催眠状態にかかってハードルが下がったからか。
今度はゲージの貯まりがかなり速くなっている。
すぐに催眠ゲージが再びMaxになった。
「シルヴィー。【奴隷着】を着てくれ」
「あっ……はぁい、わかり、ましたぁ」
シルヴィーはまた力の抜けたような、トロンとした顔で応じる。
今度は怪しく光る黒のニーソックスを手に取った。
……やはり四肢の中でも、抵抗度には差があるらしい。
シルヴィーにとって一番重要な右腕が、両腕・両脚の中でも最後まで守られていた。
シルヴィーは左脚、右脚と【奴隷着】を身に着けていく。
長い両脚の太ももまでが。
怪しく光る黒の【奴隷着】に覆われてしまう。
回数を重ねるにつれ、催眠にかかっている時間も徐々に増えていた。
「……えっ!? なっ、ワタシ、なんで!?」
そしてまた正気に戻ったシルヴィーが、靴下の変化に気づき焦燥感を募らせる。
【奴隷着】のニーソックスと太ももの間に指を入れようとしたり、必死にずり下ろそうと苦心していた。
だが当然、1mmたりとも【奴隷着】は外れてくれない。
二度も催眠状態になったとあって。
【闇眼】のゲージがもう一度貯まるのはとても速かった。
ほぼ間を置かずに、またシルヴィーは催眠にかかってしまう。
「さっ、シルヴィー。後は右腕と、胴体部分だ。【奴隷着】を」
「……はぁい」
主に魔法を発動していた利き腕へ、とうとう手が伸びる。
【奴隷着】を既に身に着けた、黒光りする左手で。
肘上から覆っている長手袋を、そっと外した。
そして床に落ちていた右腕部分の長手袋を拾い上げ、何の抵抗もなく右腕へと装着する。
これで四肢はすべて。
恥ずかしい見た目をした【奴隷着】へと変わってしまった。
「んしょっ、んんっ――」
――シルヴィーはその後、何の疑問も感じることなく最後の砦へと手をかける。
シスター服を脱ぐと、その下に隠されていた魅力的な姿が露わになった。
こぼれんばかりの胸が、苦しそうに肌着に押し込められている。
細く引き締まった身体は白く、シミ一つ見当たらない。
まるでその穢れ無さを体現しているかのようだった。
「んんっ、あんっ――」
そしてハイレグの【奴隷着】をつけていく。
脚を通した先、股間から、生地が肌にピタリと貼り付いていく。
シルヴィーが甘い声を上げる。
だがそれでも、衣装を着ていく手は止まらない。
「――えっ!? なんで、ワタシ、どうして、こんな恥ずかしい格好に……んっ!!」
意識が戻ったシルヴィーは、自分の全身が【奴隷着】になっていることに気づく。
すぐに羞恥心で、顔を真っ赤にした。
『恥ずかしい服』だと。
自分がそう称した格好に、自らなっているのだ。
少しでも自身の身体を隠そうとするように。
左腕で胸元を抱くようにして覆い、右手は股間へと被せるようにして蓋をする。
「っ!! こ、こんな、ことをしても、ワタシは、決して、屈しません!!」
羞恥で一杯になりながら、なおも心は折れていない。
そう宣言するように、シルヴィーはキッと視線鋭く睨みつけてくる。
「――あれっ、あれっ!? ど、どうして!? 魔法が、魔力が……」
そしていよいよ。
【奴隷着】の、本来の効果が本格的に実感できたらしい。
魔力は完全に制限された。
これでもう【ヒール】も使えなければ、教会内に溢れている魔力だって無意味と化す。
「これで終わりだな――【テイム鎖】」
シルヴィーが身に着けている【奴隷着】。
その全身から次々と、数えきれないほどの魔法陣が出現する。
そしてそこから魔力の鎖が無数に飛び出し、シルヴィーの身体を瞬く間に拘束してしまった。
「あんっ、やっ、ダメッ――」
両腕も縛り上げられ。
再び全身が露わになってしまった。
身をくねらせ、何とか拘束から脱出しようと試みる。
だが今度はもう、魔力の助けが一切得られない。
色っぽい声。
女性的な身体のラインが丸わかりとなってしまう【奴隷着】。
くねくねと身をよじらせる動き。
すべてが。
まるで色っぽく異性を誘うダンスでも踊っているかのようだった。
「んンっ、あっ、やっ――」
鎖は、何度目かの収縮を終える。
シルヴィーの身体へと溶け沈み、自然と消えていった。
「あっ、あぁぁ、うぅぅ……」
そしてその【奴隷着】を着た手首には。
生地を透かし通して、ハッキリと見える奴隷紋が浮かんでいた。
銀髪の美少女シスター。
シルヴィーのテイムに、何とか成功したのだった。




