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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。

"枸骨"

掲載日:2025/12/11

今年は僕が『選ばれて』しまった


確かに、僕は13歳の少年ではある

そしていま「13」という数字の表す結末が眼前に、『自分自身の躰』という形で、動かし難く存在して居た



月が綺麗だ


雪も止んだらしい

月光が雪原に跳ね返って、昼間よりも明るくさえ視える

僕は雪原に程近い針葉樹の林の中を、月光から隠れる様によろめき歩いて居た


背中が刺すように痛い

そうであるにも関わらず、痛みの場所は冷え続けてもいく

また新しく、過剰再生された骨が、肉を突き破ろうとしているみたいだった


既に僕の躰は、鋭く長い棘に覆われてしまって居る

幾つかの棘の先に、服だったものの切れ端が視える


寒い

そして、お腹が空いていた



林の木陰に、死にかけた兎が横たわっている


飢えのせいか、僕は半ば無くなりかけた意識のまま、兎に向けてよろめき歩いていく

兎が僕の棘に突き刺さり、真っ白な雪に赤い血の水溜りが広がる


僕は兎を掴み、肉を食もうとした

しかし棘の先に刺さった兎は、近付けば近付く程にゆらゆらと遠ざかる

こうして食べる事が出来なかった肉は、もう百から先は数え切れて居なかった



僕は叫び声を上げた


総てが限界だった

狂ってしまったこの躰は、もう簡単な事では死なないのかも知れない

しかし心が、生きる事を懸命に拒んで居た


僕は自分の喉を絞めようと手を伸ばした

しかし、それすらが棘に邪魔されて実行する事が出来ない

新しい痛みと共に、今度は右の眼球が破れ始めた


棘がまた増えたようだった



「そこに居たのか」


林の奥から、灯りが近付いてくる


君だ



僕は『来ないで』と声を張り上げようとしたが、代わりに咳と血が唇を濡らした

もう僕には、僅かな発声すら出来ないようだった



灯りが近付いて、眼の前で止まる


『   』と、僕の名を呼ぶ声がする


本当は、呼ばれたくなんか無かった

呼ばれれば、僕は痛みから逃れるために『君を求めてしまうから』


『嫌だ』と思う心とは裏腹に、痛みに耐え切れなくなった僕の躰が、一歩一歩と君に近付いていく


僕は助ける為に差し出された手を掴み、君を抱き締めようとした

しかし数多の棘が君を突き刺し、お互いが近付けば近付こうとする程に、肉は刺し貫かれていく



遂には、僕の指が君に触れる事は無かった


君は僕の眼前で何時迄も刺し貫かれ、冷たくなったままで月光に照らされて居た

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